第53話 ハーレムとかいう負け犬女どもが邪魔しにきた
「こんばんは、チカ。それと桃郷凛夏さん。こんな素敵な夜に、そんなに怪しい格好をして病院だなんて、楽しそうなデートだね?」
やや肌寒い気温になってきて、空が透き通って星が綺麗に煌めくこの素敵な夜。
ウチと旦那さまが永遠に2人っきりで睦み合えるようになるための大切な儀式の日。
ちかちゃんの男の子を終わらせて、新しく生まれ変わらせてあげる大事なこの日。
そんな素敵な夜に聞こえてきたのは、不快なメス猫の鳴き声。
最近ウチらの周りを嗅ぎ回ってるとは思ってたけど、ここまで突き止めてたとはね。
さっさと黒服呼んでレイプしてもらお。
............あれ、通信が通じない?
「どうしたの、挨拶もできないの? そういうの、人としてどうかと思うよ?」
......うざ。
しかも旦那さまが俯いたフードの影からちらっとこっちを見ながら『どうしよう』みたいな目で見てきてるじゃないか。
とりあえずアイコンタクトで、『一言でも喋ったら1週間エッチ禁止だから』って伝えたら、しっかり俯いて黙ってくれたからよかった。
ウチの大切な旦那さまにこんな不安そうな眼をさせるなんて、度し難いな。
ハーレムとかいうくだらない集まりを作ってウチの旦那さまを汚してた負け犬女どもの分際で、随分イキったことしてくれるじゃないか。
外の連中と連絡が取れないのは......こいつらの妨害かな。あじな真似してくれるじゃないか。
旦那さまを返してもらったときの意趣返しのつもりかな?
だとしたら、この娘たちは本当に器がちっちゃいね。
こんなのがウチのちかちゃんの近くにいたなんて、まったくもって許されざる行いだよ。
臭いメス臭が移っちゃったら困るし、極力喋りたくないんだけど。
でもこのまま無視を決め込んでたら旦那さまと会話しようとしてくるだろうし............しょうがないか。
「こんばんは、模久藍朱。素敵な夜なんだから、こんなところにいないで素敵なお友達と一緒に楽しく過ごしてきたらいいんじゃないかい?」
「あはは。藍朱はもうそういう挑発にはかからないんだ。業腹だけど、これもみんながいてくれたおかげだね」
「......チッ」
小賢しいな。
それにしてもコイツラ、まさかとは思うけど女同士で仲良しゴッコしてるんじゃないだろうね。
前まではお互いに罵り合って挑発し合って、それに簡単に乗っかって自滅するだけのブザマな集団だったくせに、何いっちょ前に冷静ぶっこいてるんだよ。
「チカ............とっても久しぶりだね。本当に会いたかったよ......。藍朱たちが迎えに来たよ。もうちょっとだけ待っててね。すぐに、助け出してあげるからね」
「何勝手なことを言ってるんだい。ウチがキミたちなんかに大切な旦那さまを渡したりするわけないだろう? 世迷い言もほどほどにしてくれないと、ウチまで夢の中にいるのかと錯覚してしまうじゃないか」
「はぁ......。いつまでもキャンキャンって人を挑発することしかできないなんて、憐れな女だね、桃郷凛夏。もう詰んでるの。大人しくチカを藍朱たちに返しなさい」
憐れな女......? ウチが詰んでる......? 旦那さまを、返せ......だって?
しかも、『桃郷凛夏』だって?
あーやばい、むかつきすぎて頭の血管キレそう。
けどダメだよ、凛夏。ここは落ち着いて対処しなさい。
この子がここにいるってことは、他の3人も近くにいるはず。
ここで一網打尽にして、闇に葬ってあげれば、これから本当に心配することもなんにもなく2人っきりで過ごせるようになるじゃないか。
うん、これは逆にウチにとって好機と捉えるべきだ。
冷静に、着実に対処するんだ。
「もろもろ訂正してもらいたいものだね。ウチはもう『桃郷』の人間じゃないんだ。ちゃんと本名の『御霊凛夏』と呼んでくれないか? そうでないと、旦那さまが嫉妬してしまう」
ブチッ。
ふっ、ちょろいちょろい。
この程度の挑発でキレてくれるんだったら楽勝だね。
........................なんで暴れ出さない?
冷静ささえ失わせれば簡単に制圧できるはずなのに。
「確かにムカついたけどね、さっきも言ったでしょ。そういうのはもう効かないって」
なるほど、確かに厄介なやつになってるわけだ。
「はぁ......。めんどくさいな。簡単に消えてくれればいいものを」
「わかってたことだけど、桃郷凛夏と話してもムダだよね」
......こいつ、やっぱり旦那さまに話しかけようとしてきてるな?
そういうの、ほんとに辞めてほしいんだよな。
けど、ムダなことさ。
旦那さまはウチのもの。ウチだけのものなんだ。
逆に絶望して地に伏せてたら良いよ。
「チカ、チカ! こっちに来て! 藍朱がソイツから必ず護ってみせるから。だから安心して藍朱の方に来て!」
「え、えっと......。あなたは............誰ですか......。凛夏さまが言ってた......僕の......ストーカーの人......ですか......。だったら......その......帰ってください!」




