懐かしさ
「ぐぁ!?」
いきなり腹への衝撃。あまりの強さに起き上った。はずだった。自分の腹には一人の男が。
「お、目覚めたんだ。柊斗、どこにいるのかを教えろ」
その人がそう言った瞬間に保健室の扉が開いた。
「なんで来たの。殺されるのわかってるくせに」
「宣戦布告のためだけど。まあ内容はいたって簡単だぜ?この世界を我々反魔術師が支配する、以上。どう、簡単だろ?」
「簡単すぎて涙が出るね」
「それはよかった。じゃあ俺は帰るから」
「帰らせるわけないでしょう」
まるで自分がいないかのようにとんとん拍子で進んでいく会話に困惑する優羅は手をゆっくり挙げた。
「あのー、重いんですけど」
「あ、ごめんごめん。わざとじゃねえよ」
男は優羅の腹から飛び降りた。その途端、保健室にいろんな人が入ってきた。
「お、愉香里、久しぶりだな」
「クソみたいな再会だな」
「そうだな、それじゃ、俺はお暇させてもらうよ」
「待って、涼雅。ほんとに戻らないの?」
「戻るわけがないだろ、柊斗」
「なら殺すしかないね」
そう神速が言った瞬間涼雅が突風を起こした。
「またいつか来るからな」
そう言い残して。
「柊斗」
「大丈夫。僕はあの時のように軟じゃないよ。もうあいつのことは見捨てた。戻るつもりがないのであれば規則に則って惨殺する」
あまりの物騒さに優羅は圧倒されて固まった。神速が惨殺、という言葉を放った瞬間、この場が冷たくなったような気がした。その様子を神速は見てすぐに笑顔になった。
「優羅、怖がらせちゃってごめんね。けがはしてない?」
「大丈夫です。さっきの人は?」
「無階堂 涼雅。反魔術師だ」