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おふろの妖精

作者: 百合花

このお話を作ったのは小学生の時でした。

私には兄しかいないので赤ちゃんが生まれるところを見たことがなかったのですが、小さい時すごく赤ちゃんが欲しくてよく両親にせがんだ思い出があります。

夏休みに入るとお風呂掃除をよくしていたので、このお話もちょっと自分の思い出と重なるところがあります。

奏ちゃんは今年で3年生。もうすぐお母さんのお腹の中にいる赤ちゃんのお姉ちゃんになる。

どんな赤ちゃんが生まれてくるのか楽しみだけど、お姉ちゃんになるってどんなことをするのかなってずっと考えていた。

そこで思いついたのが、お母さんのお手伝いをすること。

お母さんのお腹は風船みたいに大きくてしゃがむのがとてもしんどそうだから、奏ちゃんは学校から帰るとお風呂洗いをすることに決めた。

毎日暑くて汗でびしょびしょになるから、シャワーの水がとても気持ちよくて奏ちゃんはお風呂洗いが大好きになった。


ある日、いつものようにお風呂洗いをしていたら、お風呂の栓の中がキラリと光った。

何だろう?と思って奏ちゃんが中をのぞいてみると、そこにはキラキラとした砂浜が広がっていた。

お風呂の中に砂浜?!うそみたい!奏ちゃんは何度ものぞいてみたけれどやっぱりそこにはハッキリと砂浜が見える。

不思議だなぁと思いながら見ていると、背中に小さな羽根の生えた女の子が歩いてきた。奏ちゃんはびっくりして思わず声をあげそうになったけれど女の子を驚かさないように慌てて口を手で抑えた。

その時、

「かなでー!ちょっと手伝ってちょうだいー。」

お母さんの声が聞こえて、奏ちゃんは女の子が気になったけれどお母さんのところへかけて行った。

あの女の子は誰なんだろう?


次の日、奏ちゃんはお風呂にいた女の子の事を誰かに話したくてワクワクしながら学校へ行った。

お友達のさらちゃんに話してみると、始めは笑っていたけれど段々気になってきて奏ちゃんの家に行くことになった。

早速お風呂場に行き、じぃっと栓の中をのぞいてみた。

すると、やっぱり昨日見た砂浜が2人の目にしっかり見えた。

「ほんとだ!!奏ちゃんのお風呂ってすごいね!」

さらちゃんは目をキラキラさせて大喜び。

奏ちゃんはさらちゃんにも砂浜が見えたことが嬉しくてこのことは2人の秘密にすることにした。

それからは奏ちゃんはお風呂洗いがもっと好きになって毎日ピカピカに磨いた。


今日もお風呂を磨いた後のぞいてみると、またあの女の子の姿があった。奏ちゃんはどうしても女の子とおしゃべりしたくなって思い切って話しかけてみることにした。

「ねぇー!そこで何してるの?」

すると砂浜にいた女の子が奏ちゃんを見て

「わぁ!びっくりした。あなたは誰?あなたも妖精なの?」

と女の子は尋ねてきた。

「ようせい?私は妖精じゃないよ、名前はかなで。羽根はないけれどあなたと同じ女の子だよ。」

「かなでちゃん、素敵な名前!私は妖精のリリー。この砂浜の近くにお家があるのよ。いつも空から流れてくるシャボン玉のお水を集めているの。上の世界はどんな所なのかいつも考えてわくわくしていたの!奏ちゃんに会えてとっても嬉しいわ。」

とリリーは奏ちゃんを見てにっこり笑った。

「かなではね、もうすぐお姉ちゃんになるからお母さんのお手伝いをしてこのお風呂を洗っているんだよ。」

「奏ちゃんは優しい子だね。きっといいお姉ちゃんになれるよ。」

それからリリーと奏ちゃんは沢山お話をしてすっかり仲良しになった。


夏も終わりに近づく頃、いよいよ赤ちゃんが生まれそうになってきたのでお母さんは病院に入院することになった。

お父さんは部屋をうろうろしたり落ち着かない様子で夜ご飯もほとんど食べなかった。

奏ちゃんもお母さんが心配になりそわそわしていたので、リリーにお話しようとお風呂場に向かった。

ところが、リリーの姿はどこにもいない。

「リリー、どこにいるの?もうすぐ赤ちゃんが生まれるんだよ!!」

何度呼んでもリリーは出てこなかった。仕方なく奏ちゃんはお布団に入ってお母さんからの電話を待つことにした。


夜中の3時、突然家の電話が鳴り響いた。お父さんは急いで出掛ける準備をして寝ぼけている奏ちゃんを抱きかかえてタクシーに乗りこんだ。

お父さんの心臓の音が大きくなる。

奏ちゃんの心臓の音も大きくなる。

お母さん大丈夫かな…赤ちゃん元気かな…

奏ちゃんは車の中でずっとお祈りをした。


病院に着くと看護師さんがすぐにお母さんのいる部屋に案内してくれた。そっと扉を開けると、汗びっしょりのお母さんの横には小さなお布団があってもぞもぞ動いている。

赤ちゃんだ!!

奏ちゃんは思わず笑顔になった。

「かなで、毎日よく頑張ってくれたね。ありがとう、お姉ちゃん。」

お母さんが温かい手でそっと頭をなでてくれた。

赤ちゃんの顔をのぞいてみたらとっても赤くて、まるでおさるさんみたいだった。

「お母さんやったね!赤ちゃん可愛い。かなで、お姉ちゃんだね。」

お父さんも後ろで涙ぐみながらうなずいている。

今日は病院に泊まることになり、奏ちゃんはほっとしたのとあったかい気持ちでいっぱいになった。


お母さんが安心して寝た後、奏ちゃんは赤ちゃんをさわりたくてもう一度ベットをのぞきこんだ。すると横に何か落ちているのに気がついた。ふわふわした1枚の羽根。奏ちゃんはじっとその羽根を見てはっと思い出した。

「もしかして、赤ちゃんはようせいだったのかな?」

奏ちゃんはその羽根を大事に大事にポケットの中に入れて眠った。

お話を読んでくださりありがとうございました。小さな時童話作家になりたくて友達としょっちゅういろんな話を作っていました。その中でもお気に入りのお話をずっとノートに書いたまま置いていたので、誰かに読んでいただける日がくるとは思ってもみませんでした。童話としては話が長いのと小さい子には難しいのかなと思いますがここでいろんな方に見ていただけたら嬉しいです。

素人ながら、とても思いの詰まった作品です。赤ちゃんが生まれてくるお母さんや、お子様に見てもらえたらなぁと思っています。

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