事件 2
外に出ると、建物が所々倒れていた。
この後も家が壊れてないといいなと思いながら避難所へ向かう。
避難所は近所の学校で、少し古めだが崩れる可能性は低いそうだ。
そんな事を考えていると、何か人の声の様なものが聞こえた気がした。
辺りを見回すが、誰もいない。
この辺りは災害があった時の道具とか準備してる人多いから、早めに向かったのかもしれない。
とりあえず俺は、声の方へ向かった。
「ここか。」
声は、すでに半分ほど崩れた家の中から聞こえた。
通報しようと思ったが、これで下敷きになっているなら待っているだけでお陀仏だ。
俺は中に入ることにした。
すると声が近づいてきて、はっきりと「助けて」と言っていることがわかった。
少し急いだ方が良い。
それから1分ほど探して声の主を探し出した。
と言っても姿は見えないのだが。
声の主は俺と同じくタンスの下に居るようだ。
低身長のよしみで助けてやろう。いや高身長でも助けるけど。
「大丈夫ですか?今たすけます!」
そう声をかけて、俺はタンスに手をかけた。
...つもりだったが、ご存知の通り、左手首は骨折している。
片手で踏ん張ってもそんなんで持ち上がりそうにない。
...どうしよう。
もう諦めて両手でやってしまおうか。
でも悪化するよな。
他の方法を探してみるか。
そう思った瞬間タンスの中から、マジでヤバそうな声が聞こえた。
「た...すけて...くる...し...」
そうだ。
この人を助ける為にここにいるんじゃん。
折れてるのは手首だ。
手首より手前側は折れてない。
じゃあそこで持ち上げたら問題ない! (問題大有りなので真似しないでください。by作者)
俺ってば天才! (ではないです。やるのは空想内だけでお願いします。by作者)
俺は迷わずタンスに両手をかけた。
「うおりゃぁぁぁぁ!!!!」
タンスは両手でやっと少し持ち上がった。
左手は死ぬほど痛い。が、ここで落とすと下のひとにトドメを刺すことになる。
歯を食いしばってこの状態をキープする。
どうかこの間に逃げてくれ!
下から動いている人の気配がする。
怪我をしているのか、そのペースはゆっくりだが、逃げてくれている様だ。
しばらくして、痛みの感覚も麻痺してきたころに、
「もう...大丈夫です...。」
と人の声が聞こえた。
俺は力が抜けて、タンスを落とした。
そして後ろをふりかえる。
道理で背が低いわけだ。
小学生くらいの、女の子じゃないか。
最後に見たのはそれだけ。
それからは安堵と、ぶり返してきた痛みのコンボで、俺の意識はなくなった。
...