冒険者になろう
ここはギルド会館。大きいなあ~! ずっと田舎に住んでいたから都会って感じだ。街にも沢山の人がいる。今日は、冒険者の登録をする為にやって来た。受付のお姉さん綺麗だ。僕はドキドキしながら、
「あのー冒険者の登録をしたいのですが、……」
そこまで言った所で、大きな人が割り込んできた。
「どけ! 小僧」
「……」
簡単に退かされてしまった。
「今日の依頼済ませたぜ。なあ、この後、俺と一緒に呑みに行こうや。勿論! 俺が呑み代を出す!大きなドラゴンを倒したんだ報奨金たんまり入るだろう?」
「申し訳ありませんがそこの方が先にいらしていたので、依頼についてはその後に確認させて頂きます」
そう言って僕を見る。
「あの、僕は後でもいいので……その……その人から先に聞いて下さい」
「あなたが先なのだからいいのよ気にしなくても。冒険者登録をするのでしょう? ここに必要事項を記入して終わったら持って来て下さい」
受付のお姉さんに渡された。
「はい、えーっと」
大きな人の顔が怖い‥‥‥? 何か外がざわざわしている。そこで、誰かが入って来た。綺麗な人だな‥‥‥僕が見とれていたら
「私は最後ね、ここで待つから」
その人の周りにいた人達は何故か怯えて席を譲る。
僕は書き終わり受付に持って行く。
「はい、これで登録が終わりました。ミュラーくん、依頼はそこの壁に貼ってあるので見て下さい。分からない事があったら聞いて下さいね」
次にあの大きな人だけど、あれ? 居ないや
「あの人なら帰って行ったわ。次私でいいのよね」
「これは、エリカ様、今日は外にあるミノタウロスでいいのですか?」
今、ミノタウロスって言った?
「そうよ。頼むわ」
凄いや初めて見たよ、ミノタウロス。大きいなあ、これってあの人が?
僕があまりに身を乗り出して見ているので
「君は、見るのは初めてかな?」
と、エリカ様と言われる人から声をかけられた。
「はい! 初めてです!」
「そう、まだ息があるから余り近寄らないでね」
はーい! っと反射的に後ろに下がった。これは? この人が乗って来たグリフォンだよね。可愛いな、と頭を撫でた。綺麗な羽だ。確かグリフォンってここ羽の付け根をマッサージすると喜ぶんだ。
エリカ様と言う人が出て来て
「あら、随分と扱いに慣れているのね」
「君は怖くはないの?」
「僕、グリフォンと良く遊んでたので」
「あなたも冒険者?」
「はい、初心者です」
ずっと撫でていたので
「一緒に来る?初心者でも安全なルートを知っているから案内するわ」
「いいんですか! お願いします!」
と、グリフォンに乗せてくれた。空は気持ちいいな
空を飛ぶっていいなあ、1つ山を越えたら降ろしてくれた。
「この先は安全よ。モンスターのレベルもあまり高くないから、少しづつ慣れていけばいい」
「ありがとうございます。エリカ様」
「エリカでいいわ、それじゃあ」
僕は頑張って小さいモンスターからやっつける、はず、だったのだが……何故か懐かれてしまい主従関係を結んで一緒にいる。今夜はこの辺で寝るかな。と、寝袋を出しモンスター達と寝た。
ぱちぱちと言う音で目が覚めた。山が燃えている! これでは、森の動物達も危ない。今日捕まえたモンスター達に指示を出す。
「森に居る動物達に避難する様に伝えて!」
火はどうする? 僕は魔法が使えない。他の冒険者に助けを……ダメだ山を越えないと行けない。キューンと言う鳴き声が聞こえる、グリフォンの鳴き声だ! 空を見る、あのグリフォンはあの人のだ。こちらに降りて来る。
「やっぱり居た。ここは危険だからあなたも避難して。私が山を越えて町に行く」
そう言って飛び去った。エリカが冒険者を、魔法使いを呼んで来てくれる。でも、それまで、何とか出来ないかな。まだ森には沢山の動物達が残されている。‥‥‥僕は姿を変えた。白い馬に大きな翼のペガサスになった。その姿でまだ森に残る生き物達を背に乗せて安全な場所へ、何度も往復した。身体中傷だらけになった。
キューンと鳴き声、グリフォンだ、エリカがきてくれた。
魔法使い達が水の魔法を使って火を消してくれている。火は消えた。
グリフォンが倒れた僕に寄って来る。冒険者達も集まってきた。
「何で、こんな所にペガサスが居るんだ」
「傷だらけじゃない」
エリカの声だ。
「誰か治癒魔法をかけてあげて」
身体が温かい‥‥‥凄いな魔法使いって、冒険者って凄いなあ。僕は‥‥‥
身体の傷は治った。けれど人間の姿には、なれないみたいだ。エリカのグリフォンがすり寄ってくる。
「傷を治してくれてありがとう」
「! その声!」
「そう、僕、ミュラーだよ。凄いね。冒険者って強いし、魔法も使えるなんて」
「どうして、ペガサスのあなたが」
「なりたかったんだ。冒険者に。でも、もう人間の姿にはなれないみたい」
「……それでも僕、やっぱり冒険者になりたいな。いつか、また人間の姿になれたら……
来てもいい?」
「いいわよ! ミュラー、待っててあげる!」
エリカは、またね!そう言った。
僕は空を飛んだ。