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二船駅の肆番線  作者: 仁羽 孝彦
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9/20

9

 身体をゆすられる感覚に亜紀がハッと我にかえると、いつの間にか一番線のホームのベンチに座っていた。周囲を見れば、兄の友則の姿があった。


「帰りが遅いから心配したぞ」


 辺りはほんの少しだけ明るさを増していた。時計を見ると、もうすぐ四時になろうとしていた。


「さっさと帰るぞ。駅員に見つかると大目玉だ」


 友則は亜紀を引きずるように手を引いた。


 亜紀は混乱する中、友則に尋ねる。


「ねえ、兄さん。アゲハちゃん見なかった?」


 亜紀の言葉に友則は立ち止まる。


 ゆっくりと振り返った友則の顔は……。


 まるでハトが豆鉄砲を食らったかのようなものだった。


「アゲハちゃんって誰だ?」


「ほら。一緒に来た同級生の女の子だよ」


 混乱しながら亜紀がそういうと、「一緒に来たって?」と本当に分からないとでも言うように怪訝(けげん)な顔をする。


「この子だよ!」とでも言うように、スマホの写真を探そうとする。


 けれども、探しても探してもアゲハの写真は見当たらなかった。


「あれ? あれ?」


 亜紀は困惑顔を浮かべた。


「いいから帰るぞ」


 友則はしびれを切らし、そのまま亜紀を連れて車へと向かう。


 亜紀の混乱はとけず、一生懸命アゲハの写真を入念に探していた。それでも見つけることはできなかった。


 家に辿り着くと、亜紀は真っ先にアゲハの痕跡を探そうとした。写真、プレゼント、クラス名簿。


 けれども、そのどれも消失していた。クラス名簿に書かれていたはずの『如月(きさらぎ)アゲハ』という名前はどこにもなかった。


 スマホを取り出し、電話帳を開く。そこには『如月アゲハ』という名前とそのアドレスが書かれてあった。


 亜紀は安堵し、すぐさまメールを送る。


『アゲハちゃん、今どこ?』


 すぐさま着信音が鳴った。急いでメールを見ると……。


『エラー:このアドレスは間違っています』


 亜紀の世界は真っ暗になった。

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