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二船駅の肆番線  作者: 仁羽 孝彦
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3

 宗一は混乱しながら、何度もアゲハのことを確認した。


 けれども由美は「そんな子、うちには居ないでしょ?」と怪訝(けげん)な顔をするだけだった。


 遅れて起きてきた父の雅臣(まさおみ)に慌ててアゲハのことを尋ねる。ところが雅臣も寝ぼけた声を出しながら「子供はおまえ一人だけだろ、寝ぼけてるのか?」と言うだけだった。


 なぜそんなことを言うのか分からない。


 もしかしてアゲハと一緒に協力して自分をからかっているのだろうか?


 そう思い、宗一はアゲハの写真をスマホから探して見せようとした。


 ところがスマホに残されている写真を探しても探しても、アゲハの写真はなかった。アゲハと何度もツーショット写真を撮ったはずなのに、それが無かった。


 いや、厳密には違う。


 アゲハと一緒にツーショットで取ったはずの写真には、アゲハの姿が消されていて、宗一の姿しかなかったのだ。まるで、自撮りをしているのかのように。


「は? なんで?」


 パニックになりながら、スマホをいじる。


 何度も何度もアゲハ宛てにメールを送る。


『おい、今どこにいるんだ?』


『エラー:このアドレスは間違っています』


『お父さんもお母さんもアゲハのこと、知らないって言っているぞ?』


『エラー:このアドレスは間違っています』


『昨日、二船駅に行ったんだよな? 行って何があったか教えてくれよ』


『エラー:このアドレスは間違っています』


 じわじわと恐怖が宗一の心を支配した。頭の中で、気持ちの悪い結論がよぎる。


 アゲハがこの世界から消されてしまったんじゃないかと。


 奇妙な思いを抱いている両親の視線を尻目に、宗一はアゲハの部屋へと向かった。


 朝からまだ開かない扉の向こうに、アゲハが居たと言う証拠を見つけ、両親に示すために。


 ガチャリ。


 やまない心臓の鼓動が腕を震わせながら扉を開けると……。


「…………」


 目の前にある風景に言葉を失っていた。


「どうした宗一?」


 怪訝な表情を浮かべたままの雅臣が身を乗り出してアゲハの部屋の中を(のぞ)き込んだ。


「なんだ? 倉庫に何か探しものでもあるのか?」


 昨日までアゲハが暮らしていたはずの部屋は、彼女の痕跡(こんせき)を一切消して、たった一晩で人気のないがらくた置き場に変わっていた。

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