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あなたの夢はなんですか  作者: 楓馬知
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プロローグ

 いつからだろうか。


 将来の夢というものを、あまり世間で聞かなくなってしまったのは。


 小学生のときは、将来の夢はありますか。

 中学生のときは、将来どんな仕事をしたいですか。

 つい先日、高校生活初の夏休みを終えたときに尋ねられた、志望校はどこですか。


 年齢を重ねるにつれて、ふわふわとしていた質問が徐々に現実を帯びたものへと変わっていく。僕たち自身の心もそれに伴って成長をしていた。


 子ども頃はどこまでも行けると思えるほどの道が蜘蛛の巣のように伸びていた。しかし高校生になってしばらくたった今、将来の展望は徐々に定まりつつある。

 プロ野球選手になりたい、宇宙飛行士になりたい。高校生にもなると、そんな大それた夢を口にする人はほとんど現れなくなる。


 誰もが夢を諦めるわけではない。


 しかし現代日本は、できることの選択肢が多すぎる上、ライバルもバカみたいに多い。

 ただ生活するだけなら適当な高校に行って適当な大学に行く。そして、極端な売り手市場の気に入った企業に就職する。それだけの事で当面の人生は困らない。


 周囲にいるクラスメイトや同級生、高校の先輩たちも、将来の夢を考えている人があまりいない思う。

 ただ今という刹那の時間を生き、今が楽しければそれでよし。

 人生という大海原の波に揺られながら、行き着く先も知らぬまま漂っていく。 

 先生たちも高校生相手にストレートに夢を聞くことなどほとんどない。無論、友だち同士で将来の夢を語り合うなんてことはもっとない。


 そして、僕自身も。


 中学まではあれほど強く請い願っていた夢は途絶え、過去を使って浪費する日々。

 このまま僕も周りの夢のない人たちの一緒だ。いつの間に背景の一色に溶け込んでいく。

 高校一年生の二学期が始まってしばらくたつ今までも、そう思っていた。


 だけど……。


「あなたの夢はなんですか?」


 僕の悩みなんてつゆ知らず、問いかけてくる少女。

 初秋の風が舞う茜色に染まる空の下に佇む異彩の存在。


 華やかでそれでいて晴れやかな笑みを浮かべるその姿に、僕は確かに心を動かされた。


 少女にとって深い意味はない問い。

 ただ、自分自身にも問いかけている何気ない問い。


 向けられた問いと、気持ちと、将来の夢。

 ほとんどの人にとって大した理由も、深い意味も存在しない問い。


 だけどその一言の問いをきっかけに、僕の止まっていた夢と未来は、確実に――


 再び動き出した。

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