第七十一話「霊を斬る剣」
ゴブリンの坑道を出た俺たちは、そのまま自宅に戻らず、先にゴブリンが湧き出る砦ダンジョンに向かった。
サンダーが暴れたい気分だというからだ。
砦ダンジョンに行くと、マシュマロが出迎えてくれた。
『ピー(ご主人様、よく来てくださったっす!)』
マシュマロが俺に対して敬礼をする。
視線が少しゴーヤの方を向いているが、何も問わない。
俺から言い出すのを待っているのだろう。
「マシュマロ、こいつはゴブリンの使い魔で名前をゴーヤという。お前がゴブリンを倒してくれたから使い魔になれた。これからゴーヤはお前の配下としてこのダンジョンを盛り上げてもらおうとおもうが、大丈夫か?」
『ピキ!(もちろんっす!)』
マシュマロはスライムなのに硬い表情で敬礼をしている――と思う。手がないので見た目ではわからないが。
『ガガゴ(宜しくお願いするであります、上官殿!)』
『ピー(うむ、頑張るっすよ、新入り)』
うん、いいコンビのようだ。
「それで、まずはこのダンジョンを三階層まで拡張しようと思う。いいか?」
俺がそう尋ねたところ、マシュマロもゴブリンの手ごたえの無さに辟易していたようで、歓迎された。
確かにゴブリンしか出ないからな。
ということで、一気に三階層まで追加する。
すると、砦が少し大きくなった。ただし、二階ができただけに見える。三階層まで追加したはずなんだが。
マップを確認すると、中は確かに三階まであった。
どうやら、迷宮の外観と実際の中の広さは一致しないようだ。
亜空間なのだろうか?
さらにマップを確認すると、二階層にはホブゴブリンとコボルトが、三階層にはリザードマンとホブゴブリンとゴブリナが生息していることがわかった。どの魔物も複数いるので、レアモンスターはいないのだろう。
ついでに余っているポイントで宝箱を設置しておく。
宝箱は一階層につき一個しか置くことができないが、これを設置することで魔物の出現頻度が上がる。
「よし、階層の追加は終わった。マシュマロ、ゴーヤ。これからサンダーと一緒に砦の三階層まで攻略を頼む。サンダーも好きに暴れてくれ」
「おう、やっと出番だな。任せておけ」
サンダーはそう言うと、マシュマロ、ゴーヤを引き連れてダンジョンの奥に入っていった。
うーん、忠犬っぽい発言のマシュマロ、猿みたいな外見のゴーヤ、あと鳥の魔物がいたら桃太郎だな。サンダー個人だと、桃太郎より鬼っぽい外見だけど。
「じゃあ帰るか」
「はい、ご主人様」
フロンは魔力を大分使って疲れているので、後のことはあいつらに任せて俺たちは自宅に戻ることにした。
「それにしてもゴーストか。どうやったら倒せるのかな」
「妖狐の上位職である仙狐なら幽霊を浄化できるスキルを覚えることもできると思うのですが。破邪の魔法となると、光魔術でしょうか」
「光か。懐中電灯で倒せたら楽なんだがなぁ」
俺はそうため息をついた。
その時だ――自宅のある方角から黒い煙が上がっていることにフロンが気付いた。焚火から出る煙にしては多すぎる。
まさか!?
嫌な予感がした俺は、駆け足で自宅に向かった。
煙が出ていたのはダンジョンからではなかったし、ダンジョン周囲のコテージからでもなかった。
広場でもなく、広場から少し離れた場所にあったのだ。
「なんだこれ?」
そこにあったのは、石の山だった。石の山の上には筒が突き刺さっていて、そこから煙が出ている。
この石の山を作ったのはガモンらしく、近くで昼間だというのに酒を飲んでいた。
そのガモンは呆れたように俺に尋ねた。
「なんじゃ、領主殿は炭焼き窯も知らんのか?」
「炭焼き窯? 木炭を作るあれですか?」
「そうじゃ。この周囲の木は炭づくりに適しているからな。鍛冶にも必要だから作っておる。消えない松明は確かに素晴らしいものじゃが、あれだと火力が足りんからな」
なんと、この島に来て半日も経っていないのにこんな窯を作るとは。
俺より遥かにサバイバル向きの爺さんだ。
そうだ――ガモンにも聞いてみるか。
「ガモンさん。幽霊の魔物を退治するための武器とかってありますか?」
「うむ、そういう剣ならないことはない。聖光石という鉱石から作った武器なら霊を斬ることができる。いわゆる聖剣じゃな」
聖剣! なんかいい響きだ。
聖光石か――もしかしたら魔石と交換できるんじゃないか?
そう思いリストを確認した。
そうしたらあった。
聖光石――10万MP。
よし、他の方法を考えるとしよう。
俺は素直に諦めた。




