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さまざまな短編集

土壌・作物調査官は戦争の一端を垣間見る。

作者: にゃのです☆

 戦争は最前線が絶対な主役ではない。国内の力、活気も必要だ。

 散発的に行われている戦争に決着がつけばよいと思っている今日この頃。

 ただ、実質的にこういうことを意見できる立場ではない。私のここでの立場は内政の中でも作物・土壌管理に該当する調査と報告だ。

 次の仕事も次の戦争の戦地となる予定の作物・土壌検査の調査を命じられている。


「それでは、ラゼト地区の調査に行ってきます」

「わかった。時間が掛かってもいいぞ。あとは上司である僕が何とかするから」

「ありがとうございます。テマト上司」

「まぁ、リノ君一人だからな。僕もサボれるし」

「ははは」


 上司のテマトさんはいつも隙を見てサボる癖がある。

 こうして調査に自分が出ているときは特にすることもないからいつも部屋で何かしらの本と酒を片手に居座っているとのことだ。

 調査中の自分にとってはどんな上司でもいい。キッチリしていればその分の仕事をする。今の上司では曖昧なためその分の結果しかないが叱られたりはしない。

 どういう感じでのらりくらりと上の報告をかわしているのかしているのかはわからないが、下の自分に返ってくることはない。

 だから今回も時間が掛かってもいい。ということなのだろう。


「まぁ、いいか。ちょこっと長ーくなっても」


 そういう考えで調査する地区へ向かった。

 道中、道の脇には雑草が生えていて特に変わった様子はない。種類についてもおおむね一般的なものしか生えていない。特定の地区植物というのも無いので著変なしっと。

 国内の動植物、土の色はサンプルして繰り返し見比べて見ている。土壌に関しては過去の調査員が調べていたため極めて正確だが、植物に関しては苦労した。資料がほとんどない上に定期的な戦争によって焼かれてしまうからだ。

 戦争があればあるほど調査のやり直しをして、事前調査も入り、戦争の前後で比べ、その後の経過を見ることも大事とされている。まぁ、戦争は恨むが仕事には困らないということでもある。


「だが、植物、土壌は戦争で破壊される」


 今回の調査地区だが、麦の生産数が多い地域でほとんどが田畑で広大な平野である。今の時期は麦が青々と茂り一面の緑のじゅうたんが広がっている景色が見れる。

 はずだった。

 到着してみた光景は半数の田畑が土丸出しの状態だった。

 どういうことなのか状況を聞くため、責任者のもとを訪ねた。


「リノ調査官様、お待ちしておりました!」

「ど、どうしたのですか!?」

「現状は見ての通りなのですが、私たちでは原因がわからず。理の調査官様の到着をお待ちしていたのです」

「わかりました。とりあえず急いでやりましょう」


 そう言って数人現地で独自調査していた人と協力して畑を回る。

 植物に関しては特に変わったものは生えていない。土壌に関しても以前のサンプル、過去のサンプル共に変わりはない様子だった。


「リノさん。これは一体……」

「ああ、何が起こっているのか。全くわからない」


 原因はこれまで独自調査してきた人の結果と一緒だ。原因がわからない。

 水源が原因として調査をしても、その地区に住む人に健康被害がないことと、同一水源の水を使用していればすべての麦は育っていない。だが、麦は青々と育っている所と育っていない所が虫食いの様にあるだけなので原因の水源説は否定される。

 

「水でなければなんだ?」


 そう思いもう一度、土剥き出しの畑へ。

 土壌自体は何の変化もなかった。今度は茂っている麦畑へ。

 すると、土壌は湿って泥のような状態になっていた。麦の育て方としてはあまりにも水分が多いと思う量だった。


「なぜ、こんなに湿っているんだ? 麦が育たなかったところに異常はなかったが」

「これは……誰か知っているか?」


 みんなに聞き取りをしても何も知らないということだった。

 匂いも若干だが付いている気がする。べたつきは無いし何よりも水分量の保有が多い。

 育たなかった原因は水分の多いことによる種の腐食と考えられた。


 このことはすぐにテマト上司の元に戻って報告した。

 これを踏まえてかわからないが、定期の戦争がはじまり、我が軍が大敗したということを聞いた。

 全軍を覆うような大火災によって軍が全滅したとのことだった。

 この報告で確信した。

 土壌に巻かれていた水分保有量の多い謎の水。

 火を付けてみると、激しく燃えた。

 どういう原理なのかは全く分からない。

 調査項目が増えたことに加え、国は存亡の危機に陥ることとなった。


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