80 ロンの気付き
さて戦況はどうなるのでしょう?
状況は一変した。
ミナとパイリラスが参戦したからだ。
彼女らは自らの得物を手に奔放に戦った。戦場を駆け跳ね回り躍動する彼女達を魔物共は誰も止める事が出来ない。パイリラスが駆け抜けた後には累々と屍が積み重なり、ミナが跳ね回った後には無惨にも撃ち砕かれた死骸が山積した。
彼女達の戦う姿。その姿はまさにしなやかで美しい獣の様であった。
フィッツ率いるパーティにはパイリラスが、グリエロ率いるパーティにはミナが加わり反撃を開始した。
しかして無類の強さを誇るミナにパイリラスだが、それぞれのパーティに加わるだけでここまで劇的に状況が改善するものなのだろうか。
グリエロの采配したパーティにロンは加えられたのだが、その折に一緒に加えられた破格の戦士ミナルディエ・ドラクリアを眺めながらふとそんな事を考える。
ミナの戦鎚グリダヴォルの一撃はすさまじいものだった。もう五百年もの昔に引退したとはいえ殭屍王ヴラディスラウス・ドラクリアと、その不死の王率いるアンデッドの軍勢数万を相手取り一花月もの間戦い抜いた破格の戦士である。
ミナの振るう戦鎚に触れた側からオークハイ達は身体を撃ち砕かれ頓死していった。一振りで五体、六体と纏めて命を散らせて逝くオークハイにオーク共。
みるみる死骸の山が築かれていくが、ミナの顔は晴れなかった。
「やっぱり鈍っちゃってるわね身体。グリダヴォルがこんなに重く感じるなんて...... 彼に振り回される日が来るなんて思いも寄らなかったわ。」
そう言いつつ戦鎚グリダヴォルで地面を穿つと衝撃波で周りにいるオークハイ達は粉微塵に吹き飛ぶ。
今の一撃で周りにいた十体近くのオークハイは物言わぬ骸と化していたが、ミナはやっぱり納得のいく顔をしていない。
「やっぱり駄目だ〜。ごめんねみんな、私あんまり戦力にならないかも。」
そう言ってミナは申し訳なさそうに振り返り、眉尻を下げて気後れした表情を見せる。
一体のオークハイを倒すのに2人がかりのロンとフェンは顔をこわばらせて小さく首を振る。
「いや、ミナ凄いよ。エルザから例の小説の中身は聞いてはいたけれど、実際に目にすると全く違うな。流石、上級上位の伝説の戦士だ。」
そう言って感心するロンとは裏腹にフェンは何とも理解し難いものを見ているといった顔をしている。
「いや、凄いんだけどな。ミナっつったら受付の女の子って印象しかねえからな。頼りになるんだが、夢でも見てる気分だぜ。全く俺たちより数段強いなんて夢にも思わなかったからな。」
そう言いつつロンとフェンは一体一体確実にオークハイを倒していく。先程の様にロンとフェンの二人はオークハイ達に取り囲まれることもなくなった。ミナの参戦も大きいのだが、グリエロの立ち回りも大きな要因になっている。
グリエロはフィッツとルドガーとお互い目配せし全体の戦況を把握しながら、自身のパーティの戦況に合わせた立ち回りをしている。
ミナとロン達の間に立ち、ミナの背後に忍び寄るオークハイを足止めしロンとフェンを取り囲もうとするオークハイ達を牽制しつつ自身に襲い掛かるオークハイをも始末している。
グリエロの魔物の撃破数はミナの猛烈な勢いで魔物を撃ち倒す数には及ばないが、ミナが自身の背後を憂う事なく目の前の敵に集中出来るのもグリエロのこの様な支援のお陰である。
もちろんロンとフェンが順調に魔物の撃破が出来ているのもグリエロの戦況を見る目と立ち回りが的確だからである。
グリエロは自身の周りの群がるオークハイ達の攻撃を躱し、隙を見つけては斬りつけていく。致命傷を与える斬撃もあれば、腕を斬りつけ戦闘能力を奪うこともあり、さらには脚を斬りつけ行動不能に陥らせたりもしている。
グリエロはその時に出来る最小の力で最大の効果をあげている。戦闘能力を奪われた敵は後退し戦線から離脱せざるを得ず、行動不能になった敵はミナやロン達にいずれとどめを刺される事になる。
グリエロ自身も敵を倒してはいるが、より広い範囲を見渡し、ミナやロン達に振った方が倒すために効率が良いと思う敵は深追いせずに、手傷を負わせ倒すのは任せている。もちろんミナやりロン達の死角から迫る敵は迅速に倒してはいる。
この最低限の力での立ち回りはグリエロの今置かれている状況によるものが大きい。
グリエロは五年前のジリヤの街がオークキング率いるオークの軍勢に襲撃され壊滅した際に、肘と膝に大怪我を負い冒険者を引退している。
ロンの施術により随分と回復はしてきてはいるが、まだ長時間戦闘に参加者する事は出来ない。
剣を振るう腕も、戦場を駆ける脚も万全ではない。その様な中で出来るだけ長く戦場で戦うには最小限の立ち回りで最大限のちからを発揮せねばならないのだ。
グリエロは元上級中位の戦士である。戦士武芸十七般を修め武器術に精通するこの男は、一時期は身を持ち崩していたが、ロンによって再び戦いの渦中に引っ張り出されたことで昔の勘を取り戻しただけで無く、かねてより滅びたジリヤの街から救い出した孤児達に五年に渡り冒険者としての立ち回りを教授するに、広くさらには細かく微に入り周りの状況を見渡す目を養った。
グリエロが年端のいかない子供達にものを教えるのは大変な事であった。読み書きを教えるだけでは無い。冒険者になるための知識、すなわち野山を駆け谷川を渡り自然の摂理を学び、さらには獣や魔物と渡り合う術を身に付けさせなばならない。
孤独な身の上の子供達である。広い世界を相手に独りで立ち向かわなくてはならない日も来るだろう。そう考えたグリエロは子供達に冒険者としてだけでなく一人の人間として生きる術を教えようとした。そうやって慣れない子供相手に頭を捻りながら試行錯誤の上に、子供達を教え導き、自分もまた成長する子供達に教えられていったのである。
そう一言で言ってしまうと簡単だが、実際的にはそれはグリエロの想像を絶するものであった。大人にモノを教えるのとは全く違い、子供相手の教授はそれは大変な事であった。子供たちも様々で聡く真面目に言う事を聞く者もいたが、基本的にはいう事を聞かない。ひとっ所にじっとしていない。泣く、喚く、噛み付く、居なくなる。喧嘩していると思えば共謀していたずらを仕掛けて来る。それらが同時多発的にあらゆる場所で起こるのだ。
これにはさすがのグリエロも閉口したが、なだめすかし、褒め、時には叱り、一身に子供達の面倒を見てきた。
今ではグリエロは一瞥するだけでそこいら中に散らばる子供達の動向をつぶさに見極め、真面目に学ぶ者、悪戯をたくらむ者、脱走しようとする者を瞬時に見抜き的確に指導を出来る様になっていた。
その中で子供達の適性を見極め何を教えるべきなのか、どの様にすれば伝わるのかを自身が学んでいった。
その「見る目」がこの戦場で活かされている。
グリエロも驚いているのだが、戦況が手に取る様に見て取れるのだ。冒険者達の動向が細かく目につくようになっているのだ。順調に戦えている者、苦戦している者。さらには攻撃の折や間などの機微を鋭く洞察し感知出来るようになっていた。もちろん上級職の戦士として鋭い洞察力を持ち今までも出来ていたのだが、それがより高い水準で理解出来るようになったのだ。
トムや、ミナに、パイリラスなどの一騎当千の強者達ももちろん必要なのであるが、戦況を見渡し的確に人員を配置できるグリエロのような者がいると一人一人の負担が大きく減る。この事は戦場にいる者達の命を繋ぐ強固な生命線になってくる。
実際に苦戦を強いられていた状況に、ミナとパイリラスが参戦しただけで状況が一変した。
だがこの二人だけの力では無い。ここに来てパーティの編成をしなおしたグリエロの采配が大きい事は間違いない。
パイリラスとフィリッピーネをパーティ加えたフィッツと目配せしながら、お互いに付かず離れずの距離を取り、徐々にオークハイ達を押し返していく。
一体一体に集中して戦えるようになったロン達の攻撃の勢いも徐々に高まっていた。
フェンとの連携した立ち回りの中でロンは様々な攻撃を試す。相対する相手への色々な方向からの踏み込みや、そこから生じさせる事のできる考え得る限りの角度からの攻撃を経て、ロンは効果的な攻撃の打ち込み方を見い出しつつあった。
「ただ闇雲に急所に攻撃を打ち込んでも駄目だな。こいつらみたいに分厚い鎧に身を包んでいると打撃が通らない。」
そう呟きながらロンはオークハイの手斧による上段攻撃を斜め前に一歩踏み込む事により紙一重で躱し、死角に入り込む。
そこから腰を落とし脇腹のやや背中側に位置するキョウモンの急所に突きを打ちつける。
死角からの攻撃にオークハイは体勢を崩し、大きく二、三歩つんのめる様によろめく。
「ハァッ!」
そこにフェンが裂帛の気合いを込めた剣撃を大上段から撃ち下ろし、オークハイの脳天を魔鋼の兜ごと薪を縦に切り裂く様に割り裂く。
「おお! 魔鋼の兜ごと叩き割ったな。やるなぁ!」
「いや、まだ隙が大き過ぎる。ロンが豚共の体勢を崩してくれなきゃこの撃ち込みは使えねえ。つうかコリャ剣にも相当悪いな。何回も使える剣戟じゃねぇ。このまま使ってると剣がイカれちまう。」
ロンの感嘆をよそに、フェンは渋い顔をする。
「そうなのか。でも剣ならそこら中に転がってるじゃないか。」
そう言ってロンは戦場を指さす。果たしてそこには確かに剣と言わず様々な武器が散乱している。オークやオークハイの死骸と共に。
それを聞いて顔を顰める。
「あのな、剣なら何でも良いってんじゃねえんだよ。この濶剣だって俺の身体に合わせて手に馴染む様に作ってんだ。なんせこいつに命を預けんだからな。」
「なるほどな。そりゃ済まなかった。僕が魔術師やってた時は魔術杖なんて何にもこだわり無かったからな。ずっとそこらで売ってる安物を使い潰してたもんな。」
「お前、そりゃ三流の白魔術師どまりな訳だぜ。」
呆れた顔を見せるフェンにロンは少し顔をしかめて見せる。
「悪かったね、三流で。」
「悪りぃ、悪りぃ。そう拗ねんなよ。もう白魔術師じゃねえだろ、お前の拳法家は大したもんだ。そこは認めてんだぜ、背中を預けるに値するってな。」
「お、おう、ありがとう。いきなり言われるとむず痒いな。ていうか、そんな早々に認められるとは意外だったよ。」
「ああ、まあな。俺は切り替えが早いんだよ。認める所は認める。」
そう言ってフェンはニヤリと笑うと、鋭くロンに目配せする。
ロンはフェンの目線の意味を素早く察して振り向きざまに背後に迫って来ていたオークハイに向かって身体の回転する力を利用して鋭く伸びる突きをスイゲツに叩きつける。
ガンと鈍い音をたててオークハイの胴が打ち抜かれる。もちろんオークハイは魔鋼の鎧に身を包んでいる為に攻撃は通らない……
筈なのだが、オークハイは上体を反らし体勢を崩して二、三歩後退した挙句に片膝を突く。
すかさずフェンに追撃され剣を突きつけられるが、オークハイは何とか体勢を立て直し手に持つ盾で攻撃を防ぐ。
その後フェンに一撃、二撃と追撃されるも何とかその攻撃を受け止めるが、そこに決定的に隙を生じさせる。その隙をロンが見逃す筈もなく、オークハイは背後に回り込んだロンに頭に組み付かれ頸椎を捻り折られる。
兜の隙間から剣を刺し込まれたオークハイは即座に絶命する。
剣を引き抜いたフェンは首をあらぬ方向に捻り事切れるオークハイを睥睨した後、ロンに向き直る。
「おい、ロン。お前どんどん攻撃の威力が上がってないか?今の攻撃はある程度は鎧を貫通してたろ。」
「いや、まだ駄目だ。身体に損傷を与えた訳じゃ無い。とどめを刺したのはフェンじゃないか。」
「だが、とうとうオークハイは片膝を突いたぜ。さっきまでは全く攻撃が効いていなかったろ? どう言うこった、何かカラクリがあんのか?」
「うん、そうなんだ。カラクリって言うかチョット気がついた事があってね。身体の芯を打ち抜くには、軸に向かって攻撃を打ち込まなきゃいけないんだ。」
「軸? なんだいそりゃ。」
「中心軸だよ。身体の中心軸に向かって攻撃を打ち込むんだ。そうすれば芯を打ち抜ける。」
「そんだけで攻撃が通る様になるのか?」
「いや、後は重さなんだと思う。」
そう言うやロンはフェンに向かって攻撃を喰らわさんと迫るオークハイに向かって、素早く踏み込み、さらに地面を蹴り、腰を、肩を回転させ拳に速度を乗せて突きを放つ。
脇腹のやや前面、肋骨の下部にあるゲツエイの急所から中心軸に向かって放たれた突きはオークハイの身体の芯を打ち抜く。
強烈な速度の乗った突きを受けてオークハイは後方につんのめり尻餅をつく。
後ろに仰け反り顎を上げたが最後、フェンにすかさず首を掻き切られる。
オークハイはそのまま後ろに倒れ伏し物言わぬ骸と化す。
ロンとフェンはお互い顔を見合わせる。滞りなくにオークハイを屠ったが腑に落ちないとばかりになんとも言えぬ渋面を作るフェンだが、口を開いたのはロンであった。
「出来得る限りの速い速度で突きを放ってみるんだけれど、攻撃は重くならないんだ。」
「さっきも重さがどうのとか言ってたな。」
「そうなんだ。鎧を身につけてるオークハイに攻撃を通すには重い攻撃が必要だと思うんだよ。さっきフェンが槌で攻撃された時に吹っ飛んでたろ。剣も手斧も槍も盾で受け止めてたフェンが吹き飛ばされてたんだよ。それで打撃を通すのは重さなんだなと思ったんだ。」
「それで重さか。」
「そうなんだ。剣の様な鋭い突きを放っても、斧の様に拳を固く握っても攻撃の重さに繋がらなくてさ。槌のように拳を重くする事ってどうするんだろ?」
そう言ってロンは握りしめた自分の拳を見る。それを聞いているフェンは眉根を寄せて決まりの悪そうに口角を下げる。
「お前、つくづく変わった奴だな…… いや重要な事か。この戦いに勝って生き抜く為には今この場でも強くならなきゃな。そうか、成る程それで重力魔法がどうしたとか言ってたんだな。」
そう言うフェンに、拳を握ったり開いたりしながらロンは「そうなんだよ」と頷いてみせる。
激戦のさなか悠長に会話を交わすロンとフェンの耳に「キャア!」と悲鳴のような小鳥の鳴き声のような嬌声が聞こえてきた。
振り向くと今まさに振り抜かれんとするオークハイの鉄槌がフィリッピーネを打ち砕かんと迫っていた。
それを目の当たりにしたロンは一瞬のうちに血の気が引くが、フィリッピーネは嬌声をあげながらも下から上へと打ち上げられんとする鉄槌に器用に足を掛け乗り上げ、膝の屈伸でその勢いを殺しつつも、撃ち抜かれる鉄槌の勢いを利用して全身を伸びやかに翻し大きく高く跳躍し見事に無傷でオークハイの猛攻から逃れる。
それを見たロンはホッと胸を撫で下ろすが、すぐに顔色を青ざめさせる。
思いのほかフィリッピーネが高く跳躍したのだ。オークハイの鉄槌の勢いを利用して上手く攻撃を回避したのであるが、フィリッピーネの身長のゆうに五倍は高く飛び上がっている。
側から見てもこのまま落下するのは危険だ。パイリラスも即座に事態に気がついた様だが、フィリッピーネが大きく弧を描きロンの方に飛んで行っているのを認めると、何を思ったか安心した様な表情を浮かべ「頼んだぞ」と言わんばかりに片手を挙げる。
慌てたのはロンである。いきなり飛んでくるフィリッピーネを受け止めるという任務を仰つかったのである。フィリッピーネに毛ほどの傷をつけようものなら後でパイリラスにどんな恨み言を延々聞かされるか分かったものでは無い。
ロンは大慌てで今まさに落下しているフィリッピーネの下に駆け寄り、正に間一髪と言った体で受け止める。
というかフィリッピーネの下敷きになる。
「うげっ!」
思わず奇声を発したロンであるが、しっかりと抱きとめた。落っこちてきたフィリッピーネは幸い無傷である。
ロンの上から軽やかに地面に降り立ったフィリッピーネは満面の笑みでロンを見つめる。
「まあ! ありがとうロンさん! 受け止めてくれたのね。さすがムキムキに鍛えてるだけはあるわね!」
そう言ってニコニコと微笑むフィリッピーネとまたもや彼女に潰されたロンのもとにフェンが駆けつける。
「おい、大丈夫かロン。て言うかやるじゃねか!身を挺して仲間を守るなんて大した野郎だな!」
そう言ってフェンはロンの手を掴み引き上げる。起き上がったロンであるが自分の手とフィリッピーネを交互に見つめ、何か感心したように目を輝かせる。
「いつもはあんなに軽いフィリッピーネが、上から落ちてくるとあんなに重いんだな。」
「あらやだ、ロンさん重いだなんて! 高い所から落ちてきたんだものしょうがないじゃない。」
「落ちると重くなるのか…… 」
そうポツリと独言るロンにフィリッピーネはふむふむとうなずく。
「そうよ。跳躍した後の着地ってすごく重要なのよ。膝を柔らかく屈伸して着地の衝撃を逃さなきゃ膝や腰を壊しちゃうのよ。着地の衝撃って凄いんだから。着地の失敗で怪我して舞踏家を引退する人って結構いるのよ。それにね…… 」
フィリッピーネがとうとうと語り出そうとしたところにフェンが割って入る。
「待て、待て、待て。今は悠長に踊りの講義を聞いてる暇はねえ。ロン、お前もボサッとしてないで…… 」
「そうだ! 攻撃に重さを加えるのは落下だ! 」
ロンは目を輝かせて拳を握る。
「ありがとうフィリッピーネ。これでオークハイにも攻撃を通せるようになるかもしれない。」
「まあ! どういたしまして! 」
フィリッピーネも何の事であるかよく分かっていないが朗らかに微笑む。
ロンはフェンに向き直り拳を突き出す。
「よし、さっそくオークハイ退治といこうじゃないか。」
そう言ってロンは笑う。
その時不意に城壁の裂け目が再び爆発する。
猛烈な勢いの爆風にロンは吹き飛ばされる。
地面を転がり全身を打ちつけられ、苦痛に顔を歪めるロンであるが、何事が起きたのか理解が追いつかない。周りを見渡すも巻き上げられた砂塵で当たり一面の視界が真っ白に染まっており、全く状況が掴めない。
一瞬の出来事で混乱する戦場の砂塵舞う真っ白な只中で響き渡るのは、けたたましくも禍々しい笑い声だけだった。
突然の事態どうなるのでしょう?
いつもお読みいただきありがとうございます。




