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78 オークハイの攻勢

いよいよオークハイ達も参戦してきます

フィッツのパーティとロン達の即席混成パーティは、まずはグリエロとルドガーが先陣を切る事で押し寄せるオーク共を押し留める。そこから一歩引いた後ろにフィッツが立ち、広域を見渡し自身もオークと戦いながらパーティ全体の動きを指示する。


「グリエロとルドガーさんはもう少し離れて間を空けて戦ってくれ、間を抜けて来たオーク共は俺とフェンとロンが始末する。」


フィッツがそう言うと「よっしゃ!」とグリエロが吠え、ルドガーと目配せをする。


すると二人とも戦いながらも絶妙に間を作っていく。フィッツは二人を一瞥しロン達に振り返る。


「フェン、ロン! お前達はもう一歩下がって、グリエロとルドガーの間を抜けて、さらに俺をも抜けて来る豚共を必ず仕留めろ! モルガーナ達に回すな。」


そう言うや、フィッツは背後から襲い来るオークを振り向き様に叩き斬る。


「モルガーナ! お前達は白魔法で回復と結界による防御、黒魔法で広域火炎魔法の上位詠唱を。」


ラネズは「わかった」と短く返事をするが、ファータは一瞬怪訝な顔をする。


「私なら上位魔法でも簡易詠唱出来るし、中位簡易詠唱でもオークは灰に出来るわよ?」


ファータはフィッツの指示の意図が掴めずに意見すると、フィッツは「フム」と独言てファータに向き直る。


「いや、今から魔力を練って威力を高めておけ。これからオークハイ共が多数紛れてくる。しかも魔鋼製の防具を纏っている。魔鋼は硬く切れない上に魔法も通し難い。」


フィッツがそう言うやファータは少し青い顔をみせた後に、小さく息を吐いて厳かに呪文の詠唱を始める。


フィッツは再びオーク共が群がる前方に向き直り舌打ちする。


「思ったよりオークハイの数が多いな。しかも魔鋼の武器や防具持ちか。こいつは骨が折れそうだ...... 」


そう言ってフィッツはオークベインを強く握りしめる。


オークハイはまだこちらに流れて来ない。前方の守りを固めているのはグリエロとルドガーであるからだ。


襲い来るオークハイをグリエロとルドガーが斬り伏せる。彼ら二人は先程からオークハイしか相手にしていない。

オークは素通りさせている。グリエロとルドガーの間をぬって襲いかかってくるオークはフィッツ、フェン、ロンで始末していく。


周りの冒険者達も似たような戦法を取っている。

中級上位以上の者達が前面に立ちオークハイを相手にし、その後ろに控える中級中位の戦闘職の者達がオークを相手にしている。


この様な陣形を取り連携して、城壁の割れ目を囲む様に冒険者達が陣取ってオークを押し留めている。


いまだオーク共の侵入口が、この破られた城壁の狭い割れ目からだけであるから成り立つ戦法である。


本来ならばこの様に城壁の割れ目に冒険者達が張り付いて戦うのは悪手である。攻撃の要をこの様に一ヶ所に集中させると他が手薄になる。

そうなると城壁の各所に梯子がかけられ、次々と敵の侵入を許してしまうだろう。


しかしウンドの街はブランシェトの堅牢な結界で護られている。不測の事態で一部が綻んで城壁が破壊された部分もあるが、他はまだ護りの力は顕在している。


こうして今はオークの侵入は狭い一ヶ所に止められている。

この状態でなるだけ長く敵を押し留めておかなければならない。何故なら圧倒的に冒険者の数が足りないからである。近隣の街にも応援を募ったがオークの一個大隊が迫ると聞いて冒険者達は二の足を踏んだのだ。


それもそうだ。数年前にオークキングの襲来で一つの街が滅んでいるのである。身構えるのも当然と言えよう。それ故に応援に駆けつけた冒険者達はわずかである。


しかし、来なかったのは正解かもわからない。


今、目の前には魔鋼の鎧に身を包んだオークハイが迫る。オークの襲来よりも状況として悪い。


オークハイはオークの上位種であるが、オークとの違いは体格に優れているだけでは無い。決定的に違うのは知性である。オークは勿論ずる賢い知恵を持ってはいるが、ことオークハイに至っては武具の運用から陣を作っての連携など戦闘における強さと敵としての厄介さはオークとは一線を画す知能を持っているのだ。


その様なただでさえ厄介なオークの上位種が、武器も魔法も通さないと言われている魔鋼の鎧と切れ味鋭い魔鋼で作られた武器を持っているのだ。


実際は魔鋼は魔力を帯びた鉄鉱石なので、それを精錬し鎧や武器を作ったとしても強靭にはなるが壊れない訳では無い。ただ勿論魔力を帯びていない鋼の装備と比べると雲泥の差はある。


ひとえに厄介な装備ではあるのだ。厄介な相手に厄介な装備。


グリエロが顔をしかめるのも無理からぬ事である。


「ッチ! 魔鋼の鎧は斬れやしねえ! 下手にぶった斬ったら剣が欠けちまうぜ。」


そう言いながらグリエロはオークハイの攻撃を自らの剣で柔らかく受け流し、返す刃を相手の首筋に突き立てる。


絶命するオークハイを尻目に、さらに迫り来る別のオークハイに向き直る。

眼前迫るオークハイが手に持つ槌を大きく振りかぶるやグリエロは剣をオークハイの脇に突き刺す。

オークハイが余りの苦痛に武器を取り落とし声も出ず苦悶の表情を見せうずくまるや、鎧の隙間である首元に剣を刺し込まれる。


グリエロはオークハイの身につけている鎧の隙間を狙い攻撃している。


鎧の隙間とは主に関節である。首元、脇、肘の裏、膝の裏などで、これはオークに限らず身体の急所であり、動作を行うために鎧われていない甲冑の弱点でもある。


この鎧の間隙をぬってグリエロはオークハイを攻撃しているが、これは簡単に出来るものでは無い。武器に精通し、武器の扱いに長けた戦士であるグリエロならではの戦い方である。


周りで戦闘をしている冒険者達は二人や三人がかりで連携をとりオークハイと相対しているが、オークハイもまた上手く連携をとり冒険者を相手取っている。


したがって冒険者達は魔法や槍などの間合いの広い攻撃手段でオークハイを牽制し孤立させる様に仕向け、なるだけ各個撃破を出来るように立ち回っている。が、しかし相手はオークハイであるどのパーティも苦戦を強いられている様だ。


周りの状況を見てグリエロは再び舌打ちをする。


「ッチ! どこも苦戦してやがるな。やはり数に差があり過ぎるな、どっかのパーティが崩れたらそっから突破されかねんぜ。」


そう言ってルドガーを見ると、今まさに仕込み杖の刃をオークハイの胸に深々と突き立てている所であった。


ルドガーはそこから目にもとまらぬ素早さで刃を翻すと鎧ごとオークハイを真っ二つに両断する。


さらに四方から襲いかかるオークハイの攻撃を紙一重で身を捻りかわし、その捻った身体から勢いをつけて身を翻し猛烈な速度で回転すると、ルドガーを取り囲んでいたオークハイ達は腹から真一文字に一刀両断されその場に崩れ落ち、物言わぬ骸と化す。


それを見たグリエロは小さくため息を吐く。


「爺さん相変わらずすげえな。こりゃ魔鋼の鎧もへったくれもねえな。」


そう言ってグリエロは苦笑いしてオークハイの槍の一突きをすり抜け背後に回り込み両膝を一刀のもとに切り裂き、その場に崩れ落ちたオークハイの首元に剣を滑り込ませる。


一方、ルドガーは身を捻り、そこから生み出される恐ろしい迄の素早い回転に刃を乗せ、まさに竜巻の様に身を翻しオークハイを一刀のもとに両断していく。もうそこには魔鋼の鎧も何もまったく意味をなさず、ルドガーに向かってくる者共は腕、腹、脚といわず瞬く間に両断されている。


これはかつて死の道と恐れられた暗殺者ルドガーの剣技によるところと、もう一つ言えば彼の持つ日緋合金の剣である。


ルドガーの持つ杖は盲目の彼の歩行などを助けるものであるが、その杖は中に細く長い片刃の直刀が入っている。仕込み杖と言われ、暗器と呼ばれる暗殺用の武器である。


ルドガーは別にこれで日頃から人を斬っているわけでは無い。暗殺者を引退してからロンにオーク討伐に引っ張り出される迄の三十年程は仕込み杖の刃を抜いた事は無かった。さらに言うとあの場でも本当は仕込み杖を抜くつもりも無かったのだ。


本来ならルドガーは引退して細々と生きていこうと思っていたのだし、仕込み杖を日々使っていたのも程よい重さの手に馴染んだ杖だからである。


もちろん自戒の意味を込めたお守りとしての意味もあったのだが、ロンに再び表舞台に(と言っても裏家業であったが)引っ張り出されてからは、ロンやその周りにいる愉快で優しい人々を守るためにこそ自身の刃を振おうと心に決めたのだ。


だがルドガー齢七十を超える老体である。健康であるためにと日々の鍛錬を欠かすことも無かったが、流石に剣筋は鈍ったかなとルドガー自身も思っている。


それを助けているのが日緋合金の剣である。

この日緋合金は軽くしなやかで折れない金属であり、今は失われつつあるエルフの秘宝なのである。


その刃は冷たく美しい輝きを放ち、金剛石よりも硬く黄金よりも軽い、永久不変の合金であるとされる。

これを精錬出来るの技術を持つエルフの鍛治士は滅多におらず、もはや失われた技術であるともされる。


何故ルドガーがこの様な秘宝を持つかはさて置いて、日緋合金の刃にルドガーの暗殺術が加わればオークハイどころか、その身に纏う魔鋼の鎧など恐るるに足りない物となる。


この様にグリエロとルドガーがオークハイを押し留めているために、フィッツを始めロンとフェンのもとにはオーク共しか襲って来ない。


フィッツがオークを脳天から一刀両断する傍らではフェンとロンの連携攻撃でオーク共が次々と倒されていく。


ロンに足を払われ体勢を崩し地面に膝を突いたオークは、そのすきを突かれフェンに袈裟がけに斬り捨てられる。


「っへ! この調子でいけばさっさとオーク共を片付けられるんじゃないか!?」


フェンがそう言って余裕を見せた事を言った矢先に、近くの冒険者のパーティから苦悶の叫び声が聞こえる。


「トゥッリのとこのジョブがやられた!」


「戦線が途切れた、陣形が崩れるぞ! 」


近くの冒険者から声が上がると、真っ先に反応したのはグリエロである。


グリエロはトゥッリのパーティを一瞥する。

ジョブの右腕がひしゃげ、吐血している。おそらく槌の様な武器で殴打されたのだろう。腕を粉砕されただけで無く胸も強打した様だ、おそらく肋骨が折れて肺に刺さっている。吐血はその為だ。

これは中の中の白魔術師の回復魔法では追いつくまい。即座の戦線復帰は難しい。そう瞬時に判断したグリエロはルドガーとフィッツに向き直る。


「爺さん、フィッツ、すまんが此処は頼んだ! 」


そう言ってトゥッリのもとへ駆け出す。


フィッツは即座に前に進みルドガーと並ぶとモルガーナ姉妹に指示を飛ばす。


「ラネズはジョブの回復を手伝ってやれ! ファータは魔力を練れてるか!? 広域火炎魔法でトゥッリの戦線にいる豚共を薙ぎ払え!」


そう言われるやモルガーナ姉妹は駆け出す。


ラネズはジョブのもとに駆けつけトゥッリのパーティの白魔術師と一緒にジョブを抱えて後方に下がり回復魔法を唱え始める。


ファータは魔力が練られているだけでなく呪文の詠唱も終わり術式が完成しており、後は魔力を解放するだけとなっていた。


ファータはグリエロとともにトゥッリのもとへ駆けつけるや並み居るオークハイ達に向かい中級上位の高域魔法を放つ。


「スキタイの娘達よ、樹木の災い、家々の太陽、聖火の炉に火を焚べよ、ヘスティア!」


ファータは呪文を紡ぎ呪術杖を地面に突き立てると、トゥッリのパーティと戦っていたオークハイ達の足元から火柱が上がる。数十のオークハイ達を巻き込み轟音をたて白く輝く猛火は、オークハイの身に着けている魔鋼の鎧の耐火温度を遥かに超える。

魔法耐性の高い魔鋼の鎧であるが、ファータの放った広域魔法ヘスティアの炎は通常の炎の魔法の優に五倍を超える燃焼温度を誇っている。赤く燃える通常の炎と違い、白く輝く炎の色こそがその燃焼温度の高さを物語っている。


この炎に巻かれては流石の鎧も歯が立たない。


魔鋼の鎧は溶け落ち、オークハイは灰塵と化す。


先程からファータが練っていた魔力はこの一撃を放つ為であった。


この魔法の炎を見て歓声を上げたのはグリエロであった。


「よっしゃ! 良くやった! オラ、トゥッリ! お前さんボーッとしてんじゃねえよ。この機に体勢を立て直すぞ!」


突然火柱を上げて燃え落ちたオークハイに唖然としていたトゥッリであるが、グリエロの言葉に我に帰る。振り返り、後方に杖をつき肩で息をするファータを見て状況を理解する。


トゥッリは疲弊した顔を隠せないまでも、片手をあげ「すまない。助かった!」と声をかける。


ファータはニコリともせず手を挙げそれに応える。


「ファータは一旦、ラネズの所まで下がれ。出来るならお前さんも体力を回復して貰え。」


グリエロはファータにそう言うとトゥッリのパーティを一瞥する。


オークハイの群勢に苦戦していた様でトゥッリもかなり疲弊している様だ。


傷だらけのトゥッリに、戦線離脱したジョブ、その他の人員は白魔術師のイルマと黒魔導師のミステルだ


イルマはジョブの治療のためにラネズと後方に下がっている。

ミステルが魔鋼の鎧を貫通出来る程の中級上位の魔法を練るための時間を稼ぐには、ジョブの抜けた今、トゥッリ一人には厳しいだろう。そのためにグリエロが駆けつけたのだが、そうするとフィッツのパーティが心配だ。


グリエロは舌打ち一つしてオークハイを迎え討つため構えなおす。



一方ジョブの回復の為に後方に下がったラネズとイルマのもとにファータが駆けつける。


「ジョブの具合はどう? 戦線に戻れそう?」


ファータはそう言いながらもジョブの様子を一瞥して返って来る応えが明るいものでない事を悟る。


「駄目ね。一命は取り留めたけど、折れた骨が内臓を傷つけてる。戦線復帰なんて到底無理。」


そう言ってラネズは首を横に振る。


「二人がかりでなんとか命を繋ぎ留めたって感じね。この傷をこの場で治せるのはブランシェト様くらいね。」


そう言うのはイルマである。


「じゃあ、ラネズはイルマとジョブを抱えてギルドまで下がれる?ギルドの救護所まで運んであげなよ。」


それを聞いて首を振るのはイルマである。


「大丈夫。一人でもジョブを抱えて退がれるわ。戦場からモルガーナ姉妹が居なくなるのは良くないわ。あなた達は戦線に戻って。」


それを聞いて目を丸くするのはファータである。


「何言ってるの!? ジョブみたいなゴツイ男を一人で抱えて行ける訳無いじゃない!」


「でも、あなた達が居なくなったら戦力が下がっちゃうわ......」


そう言って押し問答が始まらんとする所に駆けつけた者達がいる。


「怪我人ノ搬送は我々ガ担イマス。」


そう言いながら進み出て来たのはコボルト達である。


先程ファータ達に声をかけたコボルトがこの場のコボルト達の統率者のようで、そのコボルトが素早く指示を出すと五人のコボルトが前に進み出て来てジョブを抱えた途端に走り出した。


周りを見渡すとコボルト達が怪我人を抱えて後方に運んで行く姿がちらほらと見える。


「怪我人ヤ、物資ノ搬送ハ、我々ニオ任セ下サイ。皆様ハ戦イニ集中サレマス様。」


そう言ってコボルト達は颯爽と戦場を駆け抜けて行く。


一瞬モルガーナ姉妹はポカンとしていたが、ファータはすぐに気を取り直し踵を返して前線に駆け出す。


「イルマはジョブに付いて行って。この感じじゃ救護所の人手が足りないかも。」


ラネズはイルマにそう言ってファータの後を追う様に駆けて行く。


イルマはイルマで無言で頷くと駆けて行くラネズを尻目に踵を返してコボルト達を追う。



その頃、フィッツのパーティは苦戦を強いられていた。ルドガーはもとよりオークベインを持つフィッツにはオークハイもまた敵ではないのだが、いかんせん数が多い。


ジリジリと押されつつある。


「流石にグリエロの代わりは務まらないな。スマン! フェン! ロン! 二人前に出てきてくれ! ルドガーさんもご無理なさらず!」


フィッツがそう言うやフェンが飛び出して来る。


「よっしゃ! そうこなくっちゃな! オークは歯応えが無くて飽きてきてたトコだったぜ!」


「無茶はするなよ。今まで通りロンと連携を組んで動け!」


「わーかってるよ! ロン、ボサッとしてんなよ!」


フェンががなると不安げな顔をしたロンが前に出て来る。


「わかってるよ。急かすなよ。とうとうオークハイを相手取る事になったか......」


二人で随分と温度差がある。


「お二人が上がって来ましたね。ではフィッツさんのお言葉に甘えて、ちょいと楽させて貰いましょうかね。ロンさん任せましたよ。」


ルドガーはそう言いながらも襲い掛かるオークハイを一刀両断にする。


それを見たロンはため息を一つ吐く。


「相変わらずな事を言うけれど、先生ひとりで何とかなるんじゃないの?」


ロンがポツリと呟くとフェンが憤る。


「何言ってんだ、ロン! 年寄りは労われよ! て言うか師匠なんだろ!? 手を煩わせんな!」


「う、まあ確かに...... フェンは真っ直ぐだなっと!」


ロンはぼやきながらも迫るオークハイに向かい一歩踏み込んで鋭く蹴りを放つ。


スイゲツに蹴り込むがそこは硬い魔鋼の鎧である。ガンと鈍い音を立てて攻撃は阻まれる。


「痛! やっぱり鎧の上からは攻撃は通らないよな。」


オークハイを蹴り飛ばした足をさするロンだが、体勢を崩す事なく立っている。

反対に相手のオークハイは胴に蹴りを受け大きく体勢を崩している。


ロンよりも体格が大きく重量もあるオークハイの方が、鎧で攻撃を防いだにもかかわらず大きく体制を崩しているということはロンの攻撃が鋭く強いだけで無く、攻撃したロン自身の体の軸がブレていないという事であり、さらにはオークハイは身体の芯を打ち抜かれたという事に他ならない。


身体の軸がブレない攻撃を放てる様になったのはフィリッピーネの教えの賜物であるし、相手の芯を捉え正確に急所を突く事が出来るのはルドガーのお陰である。


だがオークハイの身体に損傷を与えた訳では無い。体勢を崩し大きくのけぞっているだけである。


しかし、そこにすかさずバックラーで体当たりを食らわせたのはフェン・ズワートであった。

そのままオークハイを引き倒し、倒れたところに顔面に体重を乗せた剣撃を叩き込む。


「おお、流石フェン。」


ロンが素直に称賛すると、フェンは得も言われぬ複雑な顔をする。


「いや、お前も十分すごいんだがな。今の攻撃も鎧さえ無きゃな。ロンは武器で戦う事は出来ないのかよ?」


「いや、無理。武器を握って戦った事が無い。ちょっと戦い方を変えるか...... フェンとどめを頼むよ。」


「はぁ!?」


フェンの困惑など気にする素振りも見せずロンは次なるオークハイの前に踊り出る。


ロンは滑り込む様にしてオークハイの懐に飛び込むと正面から肩口を拳を捻り込む様にして殴りつける。


すると殴られたオークハイは腕をダラリと下げて武器を地面に落とす。


何が起こったか理解出来ていないオークハイは、すかさず現れたフェンに首筋を斬られ絶命する。


「よし。やっぱりオークハイも人間と同じだ。」


そう独言るロンにフェンが駆け寄る。


「おい、何だ今の技は!?」


「ああ、正面よりやや内側から外にかけて力をかけると肩の骨って簡単に外れるんだよ。僕の攻撃は通らないけれど、オークハイを無力化は出来るみたいだ。とどめはフェンにお願いするよ。」


しれっと答えるロンにフェンは呆れた顔を見せる。


「ロン、お前もつくづく変わった奴だな。だが、心強いぜ! お前とパーティを組めて嬉しいぜ。」


フェンはそう言うと、ロンと顔を見合わせてニヤリと頷くのであった。

いつもお読みいただきありがとうございます。

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