表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/93

64 ランスの悩み

今回はコボルトのランスのお話し

コボルト達の朝は早い。


コボルトは基本的に森の中に住んで花や草木の世話をし育み、その恵みを森と分かち合い生活している。浅く短い眠りを日中何度も取るのは外敵から身を守るというだけで無く、朝に夕に咲く花の世話や月明かりの下でしか身をつけぬ果実の収穫の為でもある。


いつまた魔族の襲撃があるやも知れぬというのでウンドの街に身を寄せる事になったコボルト達は街に住む人々に合わせ、夜眠り日中に活動する様になってはきたが、勤勉なコボルト達は夜遅くまで働き、朝はまだ辺りの薄暗いうちから起き出して働き始める。足りない睡眠は日中お昼寝をする事によって補っている様だ。昼日なか街路樹の根元や建物の軒下で丸くなって眠るコボルトはウンドの街の新たな名物となっている。


最初は街の子供達が面白がって一緒にお昼寝を始めたが、お昼寝をする子しない子では、学院に通う子の学業成績がお昼寝をする子の方が伸びが良いであるとか、情緒が安定して穏やかになる等と違いが出てきたらしく、最近では“お昼寝健康法”なるものを提唱する者まで現れ、コボルト式お昼寝法と言うものがちょっとした流行になっている。


その流行の火付け役と言うか、きっかけになったのは何を隠そうランスである。

コボルトの一族の中でも一際大きな体格と立派な毛並みで目立つ彼は、お昼寝をしていても良く目立つ。さらに丸まって寝る彼を枕に眠る子供達も鷹揚に受け入れた。


眠るランスをいち早く枕にしたのは今年で十歳になる少年ウイン・コパインであった。ランスと眠るウイン少年を見て驚き叫声をあげたのは彼の父親のマスキ・コパインである。叫声と言っても感動の叫びである。風景画家であるマスキは最近思い通りの絵が描けず悩んでいた。描く風景はどれもありきたりで心が動かないのだ。しかしコボルトと眠る我が子を見て感激に打ち震えた。今まで見たことも無い景色だったからである。


彼の新作「コボルトと寝るウイン」は芸術サロンで発表されるや話題となり、辛口の美術評論家ドウニ・デイドロも絶賛し大評判となった。

その頃には「ふかふかで気持ち良い」とウインの薦めで街の子供達の間にはコボルトお昼寝は知られていたが、ウンドの街に周知されるようになったのは「コボルトと寝るウイン」の評判によるところが大きかった。


そんなこんなでウンドの街の有名人になってしまったコボルトのランスであったが、彼には最近悩みがあった。


恋の悩みである。


先代の氏族の長が病に倒れ引退してしまった事により、若くして長になったランスは一族に認めて貰うため、何より一族をしっかりと導くため、身を粉にして働いた。朝から晩まで十数年休むこと無く、一族の繁栄の為に我と我が身を捧げてきた。


元来、勤勉な種族であるコボルトではあるが、ランスはそれに輪をかけ真面目で律義な性格をしており、自身の事は横に置いて、一族の事を第一に考えてきた。


しかしここに来て状況が一変した。住んでいた森を追われ、人間の庇護を受け一族皆ウンドの街に身を寄せる様になったのだ。

ここからコボルト達の生活の様式が大きく変わった。仕事をする様になったのだ。


これまで働くという事は生活するという事であった。草木や花々の世話、果実や野草の収穫に水汲みとコボルトの労働は生きる為の過程であった。


労働には対価がある。森での労働の対価は森の恵みである収穫物であったが、ウンドの街でコボルト達が労働たる仕事をすると対価として金銭を貰えた。

最初こそ首を傾げていたコボルト達であったがランペルの指導もあり、もともと順応性の高い種族であるコボルト達はすぐに貨幣経済のあり方を理解した。


人間の言葉を覚えるのも早かったランスは、いち早くウンドの街にある様々な仕事を体験してみた。ランスは一族を取り纏めるだけあって賢く機転も効き、どの仕事もそつなくこなしそれぞれの商売の店主に、棟梁に、親方に大変重宝された。


それら販売、接客、運搬、建築と色々な仕事で功をなし、続けて働いて欲しいと引き止められたが、ランスは自身は引き受けず、代わりにその度に北の氏族だけでなく他の氏族のコボルト2、3人を紹介した。


ランスは自分の氏族だけでなく他の氏族の性格や気質も知り尽くしており、適材適所にコボルト達と店主達とを繋げた。


このランスのコボルト斡旋業はコボルトと人間双方に大変な評判を呼びウンドの発展に少なからず貢献しただけでなく、ウンドの街の住人がコボルトを受け入れるのにも一役買った。


これまでのコボルトは森の中に住み、幾ばくか排他的な面もあったのだが、ランスは人間と関わる様になったコボルトの氏族の今後も考えて、自身と氏族に人との関わりを求めた。


これが功を奏したのであるが、それは多分にランスが人間の言葉を覚えたからである。

ランスはランペルが以前に教えていたという事もあったが、それ以上に聡く人語の習得も早く好奇心旺盛で人間やエルフの文化にも興味を示した。


その中でランスはより広い世界を知りこれからのコボルトの種族のあり方について考えたのだ。

人語を学ぶことによって自らの世界が開けた。今ならより広大な世界へ憧憬を持ち冒険の旅に出たランペル・スティルツキンの気持ちもわかる。


そこでランスは考えた。もちろんこれからも森の守り手として自然と共にあるだろう。しかしさらに広い視野を持ち世界とも繋がりを持ち生きていくべきなのだ。その為には学ぶべき物は多く、人間だけで無くエルフや他の様々な種族からも学び、もっと多くの事を知っていかなければならない。


そしてランスは学び、学ぶランスを見て続くコボルト達も学んでいった。


そうしてランスによりコボルト達は種族としてある種の成熟をし、個々が独り立ちした存在になっていった。


そういった経緯で、相変わらずランスは長として忙しい日々を送ってはいるのだが森の中で暮している時よりも一個人として自分の時間を作れる様になった。


一族だけで無く、自身にそして外の世界に目を向ける事が出来る様になった。

そうなると他者との関わり方も変わる。今までは自身と一族であったが、個人と個人の付き合いが多くなった。


例えば、ロン・チェイニーとは氏族の長としてでは無くランス個人としての付き合いをする様になり、先日のゴブリン討伐では息の合った戦いぶりを見せる事が出来る様になった。


他者との関わり方が変わると、その他者への見方も変わる。

今まで他者との関わりで、その人個人に好意を抱く事は無かった。何故ならこれまではコボルト達との関わりは、長として一族の皆を見つめるものであり一人一人の心にまで触れる事が無かったからだ。


そんな新たな他者との関わり合いの中で、ひときわ大きくランスの心を揺さぶった者がいる。

北の氏族の長という立場からランスという個人を立脚させた人物である。


その名もエルザ・サリヴァーン・ランチェスター、ウンド冒険者ギルドの黒魔導師エルザその人である。


最初は人語を教えてくれる親切な女性という程度の認識しかなかったが、ギルドの中で暮し始めて数日経つと、ギルドに出入りする冒険者達に奇異の目で見られている事に気がつき、やはり自分達コボルトは人間と言う種族とは隔たりがあるのだなと思い至るにつけ、始めて会った時から自然と接してくれていたエルザにとても親近感が湧くとともに感謝の念を抱いた。


そして片言でポツリポツリと人語を話せる様になり、エルザに色々と身の上を話している時に名前を聞かれた。


そして発声出来る名前は無いと告げると何と名前を考えてくれた。


さらに驚いた事にその名前には意味があった。自分の毛並みの色から、エルザの兄の持つ銀の槍の名前をつけてくれたのだ。


ランスに名前をつけ楽しげに微笑むエルザを見て、ランスはすっかり心を奪われてしまった。


草や木は物を言わぬが、心を込めて丁寧に育てるとそれに応える様に花を咲かせる。エルザの笑顔もそれに似た素朴な美しさがあった。


今まで一族の為と身を粉にし一心に働いてきて硬直していたランスの心をエルザは溶かしてしまったのだ。


それ以来、ランスはエルザの人語講座を補助し彼女との時間を多く作った。

そうしてエルザと接するにつけて彼女の何でも真面目に一生懸命に取り組む人柄や純粋な心を知った。そしてランスはますますエルザのことが好きになっていってしまった。


純粋なエルザに惹かれるのはランス自身もまた純粋であるし、今まで自身の事を脇に置いて一心不乱に働いてきた為に異性に対し免疫が無かったせいでもある。


そうして毎日エルザに人語を学び、彼女の仕事を助けているうちにランスは恋に落ちてしまったという訳である。


だがそれと共にエルザの心は自分では無くロン・チェイニーに向いているのだなという事にも気がついてしまった。

ロンについて語っている彼女の顔はほがらかな太陽の様に輝いている。


鈍いランスであってもエルザがロンに恋しているのは手に取るより明らかで、対するロンを見ても、いつもエルザの事を気にかけている。


ランスから見ればエルザとロンはお似合いのつがいだ。お互いを高め合う仲で、何より人間通しである。

自分はコボルトであるし、エルザとロン程に年齢も近い訳ではなく、何十年と森の中で生きてきた異質な存在である。


ほんの数花月前までは魔物と呼ばれ下手をすると討伐対象にもなりかねない存在であった。


何よりランス自身は北の氏族の長であるので、それこそコボルトの嫁を貰い子孫を残さねばならない。なんなら十人くらい。


百に一つの可能性も無いが、万が一エルザを娶り妻としても果たして子供は出来るんだろうか?とランスはぼんやりと考える。


一族にも反対する者も多かろうなと思う。

何より容姿の問題もある。エルザは人間なのでコボルトと違い平たい顔だ。鼻先も尖っておらずヒゲも無ければ牙も無い。コボルトの基準からするとそんなに器量の良い顔立ちでは無い。


エルザに限らず人間は総じて平たい顔をしておりコボルトの美の基準からすると、やや美しいという範疇からズレる。


コボルトのランスから見た美しい異種族といえばエルフぐらいであろうか。エルフは人間とは似て非なる存在で、やはりコボルトと違いヒゲも牙も無いのであるが人間とは顔立ちが違う。平たい顔の人間と違いエルフは目鼻立ちがはっきりとしている。

例えばブランシェトなどコボルトのランスでも見惚れるくらい美しい。


しかしエルザは見た目では無く人として美しいとランスは思っている。エルザの実態はロンも手を焼く程のとっ散らかった残念な黒魔導師なのであるが、恋は盲目とはよく言ったものである。


エルザの事は好きではあるが、ロンともまた良き友であると思うランスは、二人が仲睦まじくありエルザが幸せであれば良いではないかと、自分は一歩引き陰ながらエルザを応援しようと勝手に心に決めるのであった。


取り止めもなく、そんな事を考えながらランスは地面に生えている薬草を引っこ抜く。


先だってロン達と共に鉱石採掘の依頼を受けたもののいつの間にやらゴブリン討伐をしていたランスであるが、あれ以来採取や採掘依頼があればロンやエルザと共に依頼をこなしているのだ。


ある程度、依頼の薬草を摘む事が出来たランスは立ち上がり、薬草を入れた籠を背負うと、何か気が付いたといったいった顔をして一本の木の下に行きロンを手招きする。


「コノ木ガ、樹洞トナッテイル場合ハ、洞ニ茸ガ生エテイマス。」


そう言ってランスは木のうろに手を突っ込み何やら探っている素振りを見せると「コレデス」と言ってキノコを掴み出す。


「これってトリコロマの茸じゃないか!?すごい高級食材じゃないか。え!?ちょっと待てピヌースの木にトリコロマの茸ってはえるの?」


トリコロマの茸を手に取るや、ロンは驚いてランスを見る。


「ソウデス」と返ってきた返答は素っ気ないほど簡単な肯定だった。


「いやいや、この茸ってトレントにたまにしか生えていない珍しい茸じゃないのか?」


トレントとは老木に命が宿り動き出したとされる魔物だが、そもそも個体数が少なく滅多に見られない魔物である。そのトレントにたまにしか生えていないトリコロマの茸は大変希少な食材なのだが。


「コノ樹木ガ年老イテ、トレントニナルト、コノ茸ノ生エル、トレントニナリマス。」


それを聞いてロンは目を丸くする。


「え!?と言う事はトレントって種類があるのか?

ピヌースの木が年老いるとピヌースのトレントになるし、ブルーンカメリアが年老いるとブルーンカメリアのトレントになるって事?」


「ソウデス。トレントニナル事ハ珍シイ事デスガ、老樹ニ精霊ガ宿ルト、トレントニナリマス。シタガッテ、トレントノ種類ハ樹木ノ数ダケアリマス。」


「ええ!?それって大発見なのでは!?」


ロンが驚いていると少し離れた所で別の薬草を探していたエルザが採取した薬草を入れた籠を抱えて戻って来る。


「どうしたんですか?大騒ぎして。」


「ああ、エルザか。見てくれこの茸。」


「わあ!トリコロマの茸!すごい!珍しい茸を見つけたんですね。」


「そうなんだよ。ランスが教えてくれたんだけれどトリコロマの茸ってピヌースの木に生えるんだってさ。これもランスが見つけたんだよ。」


「ええ!ランスさんすごい!流石コボルトね、森の木々の事に詳しいんだね!」


エルザが称賛するとランスも満更ではない表情で笑みを浮かべる。


「オ役ニ立テタノナラ嬉シイデス。森ノ事、樹木ノ事、花々ノ事、何デモ聞イテ下サイ。」


その言葉を聞いてさらに嬉しそうに笑うエルザ。

その傍らではロンがふむふむと感心した様に頷いている。


改めてランスは、この場に三人でいる事ができて幸せを感じる。そして目の前にいる年若い二人を守らねばと固く心に誓う。


エルザに恋をしてしまった挙句に早々にその恋に敗れてしまったランス。そして悩んだ挙句、一周回って二人を守る事にしたのだ。


純粋と言うか純朴なランスはロンとエルザと共にあり一緒に冒険者として冒険したいと思う反面、北の氏族の長としてコボルト達を導いて行かねばならぬという思いにも駆られる。


この二つの面に思いを引き裂かれて悩むのであるが、答えは出ない。


ランスは恋の悩みから一族の悩みまで幅広く悩みを持つコボルトになってしまった。



そうこうしてランスがグルグルと思い巡らしているうちに依頼された薬草の採取が終わりウンドに帰る事になる。


ギルドの受付で報酬をキレイに三等分してこの日は解散となった。ロンとエルザが各々の家路につくのを見届けて、ランスは受付前に一人残る。


ランスはくるりと振り返ると受付の向こうにはミナが鎮座している。


「あら、ランスさんどうしたの?何かご用かしら?」


ランスと目が合ったミナが身を乗り出す。

ランスは一拍考えると「ウウム」と唸りながら喋り出した。


「ミナ様、私モ冒険者トナレルノデショウカ?」


ミナは一瞬キョトンとするが、すぐに気を取り直し、受付の後ろの棚から分厚い本を引っ張り出して受付の上に広げパラパラと頁をめくる。


「ええと、冒険者ギルドの規定に冒険者となる者の種族の制限はない筈だから、コボルトでも冒険者になれると思うけれど。でもコボルトの冒険者なんて寡聞にして聞かないわね。ランスさんが冒険者になったら史上初のコボルトの冒険者になるかもしれないですね。」


「ランペル殿ハ、冒険者デハ無イノデスカ?」


「ランペルさんは冒険家ティット・トットと一緒に冒険してたから冒険者じゃ無くて冒険家ね。」


「ホウ。似テイルガ違ウノデスネ。」


「う〜ん、そうなのよ。話すと長い理由があってね... て言うかランスさん冒険者になりたいの?」


「ソウナノデス。私モ冒険者トナッテ、今ヨリ強クナラネバナラナイノデス。」


「あら、ロンさんみたいな事を言うのね。」


「ソウナノデスカ。私ハ、アノ二人ヲ守ロウト思ウノデス。ソノタメニハ、冒険者トナリ色々ナ仕事ヲ受ケ、今ヨリ強クナラネバ。」


ミナは少し困った顔をしながら笑みをこぼす。


「なるほどね。わかったわランスさんの冒険者登録をしますね。でもこれは他の冒険者の人達にもそうなんだけれど、私が危ないと思った依頼は受け付けませんからね。」


「ウム。強クナリ、ミナ様ノオ眼鏡ニ敵ウ様ニナリマス。」


「うふふ。そうね、頑張ってね。そうだ職種は何にしようかしら?」


そう言ってミナは登録台帳をランスに向け、冒険者の職種についての説明をする。


「フム。私ハ、コボルト流デスガ、剣ノ心得ガ多少ナリトモアリマス。デスノデ剣士トシテ冒険者ノ登録ヲシタイト思イマス。」


「わかったわ。じゃあランスさんを剣士として登録するわね。立派は... コボルト流... って言うか我流かしらね。」


そう言いながらミナは諸々の手続きを済ませ、ランスを剣士として冒険者登録をした。


「はい、これでウンド冒険者ギルド、剣士ランスさんの誕生です。頑張ってね。」


「アリガトウゴザイマス。頑張リマス。」


ランスがそう言ってミナに感謝の言葉を述べるや、頭上に暗い影が落ちる。


ランスを覗き込む様に立っている黒い影は、魔女のヴァリアンテであった。


「なんだい、あんた冒険者になったのかい?」


ヴァリアンテはその薄く形の良い美しい唇をへの字に曲げランスに問い質す。


「ハイ、冒険者ニナリマシタ。」


「何でまたコボルトなんかが冒険者になるんだい?」


ヴァリアンテがしゃがれたガラガラ声でなおも問い質すとランスはこれまでの経緯を話して聞かせた。


終いまで聞いていたヴァリアンテはランスが話し終えると、暫く目を瞑って黙っていたが、やおら目を開けため息を吐く。


「心配していた事が起きたねえ。人語を学んだら聡い奴がこんな事言い出すんじゃないかと思ってたんだ。」


ヴァリアンテは再びフウとため息を吐き、バキバキと骨を鳴らしながらしゃがんでランスと目線を合わす。


「森の守り手である、あんたらコボルトは優しく情の深い種族だ。ランスが無垢なあのお嬢ちゃんに惚れるのも無理からぬこった。」


そう言ってヴァリアンテは目を細めランスの目を見つめると、毛むくじゃらのコボルトであるランスであるが側で見てわかるくらいに真っ赤に赤面した。


「ナ、ナ、ナ!何ヲ、オ、オ、仰イマス!」


「あん?そんなもん見りゃすぐ分かんだよ。...でも、よりによって人間に惚れるなんてね。ランス、あんたが思っているほど人間ってのは良いもんじゃ無いよ。年がら年中どこかで戦争して殺し合ってる様な連中だ。それに輪をかけて冒険者なんざ殺伐とした商売だよ、コボルトなんざ直ぐに食いもんにされちまうよ。」


「ソレデシタラ、ナオノコト私ガ、アノ二人ヲ守ラネバ。」


ランスが真面目な顔で答えるとヴァリアンテはその妖しくも美しい相貌を優しく綻ばせる。


「そうかい。やっぱりコボルトは律儀で優しいね。あんたは男だが人間の男なんかよりオドを豊かに持ってるね。暇がありゃ私の所においで、魔女術を授けてやるよ。」


そう言ってヴァリアンテはバキバキと音をたて立ち上がり去って行った。


「あらま。あんなに優しく微笑むヴァリアンテさん初めて見たわ。あの人、人間には厳しいけれどコボルトには優しいのね。でも良かったわね。ヴァリアンテさんから魔女術を教えて貰えるなんて滅多に無い事なのよ。」


ミナはそう言ってランスを見ると、ランスは未だ真っ赤になって硬直している。



コボルトにとっては人間界は刺激の強い所である様だ。

悩み多きコボルトのランス、どうなるんでしょうね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ