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3 装備を整えよう。

ぶん殴り屋になるために、一から装備を整えていきます。


まだまだ、手探り状態です。


ぶん殴り屋ってどんな格好なんだろう。

その日は朝日が昇るほんの少し前にベットから抜け出した。今日から心機一転『ぶん殴り屋』を始めるのだ、色々と用意しなければならない。


先ずはローブをなんとかしないといけない。白魔術師のローブというのは足首まで隠れるような前開きのガウンを腰帯で締めて着るものなのだが、すこぶる動きにくい。何でこんなに着心地の悪いものを着ているのかと思っても、これが白魔術師の一般的な習わしなのだから仕様がない。


ひとまずローブを羽織って帯を締めてみる。足元に絡みつく裾が邪魔なのだ。

なので腰帯から下、脚の付け根のあたりを水平に一文字に切り取ってしまう。これで動きやすくなったが、このまま素脚がむき出しでは見た目がすこぶる悪いので、黒いゆったりめの革パンツを履く事にした。皮なので、そこそこの防御力があるだろう。


後は魔物を殴るのだから拳を守る物がいる。昨日は素手で殴ったものだから、すぐに手を痛めてしまった。

戦士や剣士の身に着けている籠手のようなものを着けていればイイだろうか。

流石にそんな物は持っていないので、武具屋に買いに行かなければならない。


もう一つ、必要なのは道具袋だ今までは後方支援ばかりだったので肩からずだ袋を下げていた。しかしこれでは素早く動けない。背中に背負えてコンパクトで頑丈な方がイイだろう。コレも何処かで購入しなくては。


そうと決まれば、武具屋に出発だ。

新しく作ったぶん殴り屋の衣装を着てずだ袋を肩から引っさげて街へ繰り出す。



「へい、いらっしゃい。...っと、ロンじゃねぇか、なんだいその格好は!?」


馴染みの武具屋のオヤジが怪訝な顔をする。


「あぁ、まぁ、色々と考えがあってね。動きやすい格好にしたんだよ。」


「ふうん。おかしな格好だが、お前さんがイイってんなら、まぁ何も言うまいよ。...それで、今日は何を探しに来たんだい?」


相変わらず思った事をはっきり言ってくれるオヤジだな、と思う。後そんなに変な格好か? まぁいいや、まずは此処に来た目的だ。


「戦士とか、剣士とかの戦闘職の奴らが装備してる、籠手ってあるだろ。出来るだけ大きくて、指の辺りまでガード出来るのが欲しいんだが。」


「そりゃ、あるがよ。どんな素材を使ったモノがいいんだ? 革製のものから金属製のモノまで色々あるぞ。...そっちの棚だな。」


そう言って店の一角を指差す。なるほど色々あるな。牛の革や鹿の革、リザードマンの革で作られたモノもある。

さらに、金属製のモノと言えば、銅製のモノや鉄製のモノ、魔力を宿した魔鋼製のモノまである。


金属製の籠手は重くて自分には使いこなせないなと思う。何より高価だ。

革製の籠手が軽くて取り回しも楽そうだ。牛の革の籠手にしようか。値段もお手頃だ。


「コイツにしようかな。」


ロンは革の籠手を右手に嵌めながら、武具屋のオヤジに拳を振ってみる。「いいんじゃねぇか」と、オヤジも頷く。


「コイツでゴブリンとか、魔物をぶん殴っても大丈夫か?」


「ん、そりゃ、ちょっとやそっとで壊れるもんでもねぇけどよ。どういうこった?」


「いや、なんでも無い。聞いてみただけだよ。」


今日から「ぶん殴り屋を始めます」って言うと色々とややこしいし話しも長くなりそうだ。さっさと革の籠手を購入しよう。

ついでに背中に背負える取り回しやすい道具袋がないか聞いてみる。


「ん〜。背嚢の事かね。専門店じゃねぇから、あまり種類はネェが、そこに革製の背嚢があるが、どうだい? ロンのお眼鏡にかなうかい?」


少しおどけた口調で説明してくれ「最近若い冒険者連中はルックザックって呼ぶようだな」と付け加える。


なかなか頑丈だ、背負ってみた感じも背中にフィットして邪魔にならない。


「うん、いいね。じゃあこのルックザックと革の籠手を買っていくよ。幾ら?」


「銅貨七枚だな。...ほい、まいどあり。」


さっそく購入したルックザックに革の籠手を突っ込んで背負う。ピタッと背中にフィットする。いい感じだ。


武具屋のオヤジに礼を言って立ち去る。そしてその足でギルドに向かう。なにか薬草採取のような比較的に簡単な依頼を受けようとロンは思う。籠手も手に入れたし、ゴブリンみたいな新米冒険者でも狩れるような魔物を試しにぶん殴ろうと思ってはいるが、今の時点で魔物討伐依頼を受けても多分失敗する。はっきり言って自分はそれほど強く無い。昨日まで「中の下」の白魔術師だったのだ。

なので、薬草採取などで生活のために金を稼ぎながらその合間に、たまに出現するはぐれゴブリンみたいなヤツを相手に「ぶん殴り屋」になるための研究をしようと思っている訳だ。


そんな事を考えているうちにギルドに到着する。


ギルドの中に入った途端、たむろしている冒険者達になんとも奇妙なモノを見た、みたいななんとも言えない視線を浴びる。ロンは自分はそんなに可笑しな格好なのだろうかと、内心首をひねる。


受付でも同じような顔をされる。


「おはようございますロンさん。...どうしたんですか? その格好は?」


「ん、いや、動きやすい格好にしたんだよ。そんなに変な格好かな?」


「いえ、変と言いますか、あまり白魔術師っぽく無いなと思いまして...失礼しました。」


謝られても困る。なるほど白魔術師らしくは無いな。まぁ、もう白魔術師では無いが。ここでは何も言うまい。


「いいよ、別に。ところで薬草採取とか簡単な依頼はない?」


「ありますケド......。ロンさんならパーティを組めば、もっと割のイイ仕事がありますよ。」


「いいんだ、ソロで簡単な依頼をやりたいんだよ。」


「そうですか、それなら明日までに薬草十束採取って依頼がありますよ。報酬は銅貨五枚ですね。」


「じゃあ、それにしよう。ありがとう。」


そう言って、ギルドを後にする。



よし、それでは、ぶん殴り屋を始めてみましょうか。

そうだ、道具入れのずだ袋はもういらないな。

道具屋で売っ払ってしまおう。


売ったお金で薬草の一つでも買って行こう。


これで多少怪我しても大丈夫だろう。

読んで頂きありがとうございます。


ぼちぼちとやっていきますので、お付き合いください。

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