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13 ロン、穴掘りをする。儲けたい

ロンは、エルザと洞窟に向かいます。


そこでエルザの新たな特技を見いだします。



北の森を抜けると、切り立った高い山が見えて来る。それがカラボス山だ。その中腹にぽっかりと口を空いている洞窟は、魔力を含んだ魔鉱石という鉱石の鉱床となっている。


この洞窟は、あまり魔物が出る事が無いので「眠りの洞窟」や「静かの洞窟」などと呼ばれており、水の魔鉱石が採掘されるのでしばしば冒険者の探索場所となっている。



ロン・チェイニーの一行は北の森を抜け、一目散にカラボス山の眠り洞窟に向かう。

道中で二、三回ゴブリンと遭遇したが、ロンはエルザが腰を抜かす前に鮮やかに倒してのける。


道具屋で傷薬などの買い物をし、ロンの家に必要な道具を取りに戻ってから街を出たのだが、ロンの手際の良い進行で何の滞りも無く昼過ぎには眠りの洞窟に到着していた。

一月前ならこうは行かなかったろう。


洞窟に入るとエルザが自分の魔術杖の先端に光水晶をつけて魔力を込め、洞窟を明るく照らし出す。


ロンは洞窟の明るさをみて驚く。灯体の触媒を使っているとは言え、見事な明るさだ。


「すごいな、エルザ。さすが魔術学園を首席で卒業しただけはあるな。」


そう言いながらロンはルックザックから小さな石を取り出す。ほんのり青く輝く角張った石だ。


「エルザ見てみろ。コレがこの洞窟で採れるのと同じ種類の魔鉱石だ。この石の魔力探知出来る?」


「あまり、生物以外の魔力探知ってした事が無いんですけど、頑張ってみます。」


生物の持つ魔力の動態感知と違って、無機物の静態感知って、あんまりやる機会がないんですよね。と言いながら魔鉱石を手に取って魔力の波長を感じようとする。


「あ、何となくわかってきた。この魔鉱石の魔力の放射を感じます。これ水属性の魔石なんですね。」


それを聞いてロンは良し、と片手を掲げる。それにしてもエルザは感の良い子だなと感心する。


「よし、この洞窟はこの水属性の魔鉱石の鉱床なんだ。その手に持ってる魔鉱石と同じ魔力を発する場所を探してくれ。」


「はい! 頑張ります!」


なかなか幸先の良い始まりだ。


探知技術には、結構大きな魔力が必要なのだが、実は魔導師の魔力探知は、鉱山などで使われる鉱石探知とは根本的に違う。鉱石や鉱物の探知は探索、採集をする採掘家の技能だ。どのみち大きな魔力を必要とするのでロンの得意とするものでは無い。


そういう訳で、それぞれ技能の技術体系が違うので、魔力感知で鉱石探知は出来ないのだが、この洞窟の魔鉱石は水属性の魔力を含んだ少し特殊な魔石だ。


ロンの思惑通り、エルザの魔力探知では鉱石の探知は無理だが、魔鉱石の放つ微量な魔力を探知する事が出来た。



「チェイニーさん! こっち! ここの壁面から魔力を感じます!」


「おお! さっそくだな。よし、ここからは僕の仕事だ。」


そう言ってルックザックから小型のツルハシを取り出す。どこに魔鉱石があるか目星が付けば、掘り出す事は簡単だ。しばらく掘り進むと手応えが変わる。黒い岩肌の間から青く輝く魔鉱石が顔を出す。


「よし。出て来たな。...えらく大きいな。ほら! エルザ見てみろよ。こんなに大きいの出て来たぞ。これで、もう依頼完了だ。」


「え!? もう終わりなんですか? すごい!」


「まぁ、まだ時間もあるし、折角だからもっと採掘して行こう。」


「はい! どんどん行きましょう!」


ここからのエルザの魔力探知は冴えに冴えていた。あそこに、ここにと魔鉱石の場所を探し当て、気がつけば二人は抱えきれない程の魔鉱石を掘り当てていた。


「ちょっと、これは凄いな。全部売ったらかなりの額になるぞ。エルザ、この能力を持ってたら色んなパーティから引っ張りだこだぞ。」


「そうですか!? そうですか!? 私もう、おしっこチビリ卒業ですか! 私、役に立ちました!?」


二人して大笑いする。特にエルザのはしゃぎっぷりたらない。冒険者として役に立てたのが余程嬉しかったのだろう。


そんなエルザを見て、ロンは一安心する。もう後何回か採集や採掘の依頼をこなして自信を付ければ、他の冒険者ともパーティを組んで討伐の依頼なんかも受けれるようになって行くだろう。


もう大丈夫だろう。そう思うのは、何よりエルザの魔力の量と大きさだ。この新米黒魔導師の魔力の絶対量は、下手をすると上級の魔導師にも匹敵するのではないのかと。

何故なら、彼女の使う魔法は、効力の制御範囲がとても広い。例えば、この洞窟を照らす光の魔法だが、普通は術者の周りを明るくするだけのものだ。しかしエルザの魔法は洞窟の隅々まで光が届いている。

さらに、その光の魔法を維持させながら、魔力消費量のこれまた多い魔力探知まで使っている。そしてこの魔力探知の探索範囲も恐ろしく広い。


これは逸材だ。ちゃんと導いてあげて、場数を踏めば立派な黒魔導師になれるぞ。


「よし! そろそろ帰ろう。今日の晩は何か美味いものでも食おう!」


「はい! 美味しいもの一杯食べましょう!」


と、言うが早いか、急に青ざめる。手に持っていた魔鉱石を落としてガタガタ震え出した。


「お!? どうした? 腹でも痛いのか?」


「チェイニーさん。魔力を探知しました。すごく禍々しい魔力。すごく強い魔物です! それに向こうもこっちに気がついたみたい! こっちに向かって来ます!」


「おお。そいつは頂けないな。サッサと帰ろう。魔物はどっちだ?」


「うしろ...」


「えっ!」と、振り向くと目の前に魔物がいる。

ゴブリンより一回りも、二回りも大きく筋骨隆々とした身体。そして醜く潰れた大きな鼻。


オークだ。


何故こんなところにオークが居るのだ!?

この土地にはオークなど危険な魔物は居ないハズだ。ロンも二年ほど前に遠征先で遠目に見ただけだ。


何故こんな所にいる?


そんな事は考えても仕方がない。問題はこの局面をどう乗り切るかだ。逃げる訳にはいかない。自身の後ろにはエルザがいる。


なんとしても、どの様な手を使ってでも、このオークに打ち勝たなくてはならない。

自分の死はそのまま、エルザのそれに繋がっているからだ。


「エルザ、下がっていろ。」


そう言って、ロンは構える。

いつもの構えだ。


そう、いつもの構えだ。ロンは落ち着いている。いつもの通りだ。



いつもの通り、勝って帰る。そう心に固く決めた。


さて、どうなるのでしょう。


次回はオークとの決戦です。

さてロンに勝てるでしょうか?


いつも読んでいただきありがとうございます!


頑張ります。

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