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11 ロン、成果が出る。

毎日、毎日、鍛え続けていた成果が見え始めます。



剣と魔法の世界フーケ。


この世界の暦法は、七葉の精霊と呼ばれる七人の精霊が守護する七日間が、一巡すると「一週」となる。


この一週が、四回巡ると「一月」となる。

十二花月と呼ばれる、十二柱の月の神々がいてそれぞれの一月を守護している。


十二花月の神々が一巡すると「一年」となる。


この七葉の精霊と、十二花月の神を統べ、一年を守護するのが主神である太陽の神。


その太陽の神セオストが、あまねく照らしている世界が、フーケと呼ばれる剣と魔法の世界なのである。



ロンが身体を鍛え始めて、一月と少し経ち、

四番目の月の神ディツィアの守護する月も終わりを迎え、五番目の月の神リィーツィの守護する月を迎える頃になった。


ロンの日課となった早朝の走り込みも徐々に距離も伸び、最近はウンドの街を一周できるようになっていた。


ぐるっとウンドの街を走り抜け、ギルドに向かう。サッサと中庭に行き、砂袋を抱えて摺り足を始める。


しっかり腰を落とし、着実に一歩一歩進んで行く。一往復、二往復と周回を重ね、砂袋を一度も落とさず十往復する。


「おお! ロン! やるじゃねぇか! とうとう十往復しちまったぜ!」


「はぁ、ふぅ。でも一月も、かかっちゃったよ。ふぅ。」


ロンは汗をかきかきその場にヘタリ込む。

「なに、上等だ」と、言いながら屈んでロンの肩を叩いたグリエロだが、そこで眉を寄せる。


「ん!? なんだ、この肩は? んん!?」


そして、ロンの胸、背中、太腿とまさぐり出す。


「おおい。グリエロ、なんだよ。どうした!?」


困惑するロンを尻目に身体を弄るグリエロ。


「ロン、お前さん、この身体どうした?」


神妙な面持ちでロンを見るグリエロ。何事かと不安になるロン。


「え? 何かマズイ事があるのか?」


「いや、その逆だ。スゲェ身体になってるじゃねえかよ。何だ、この筋肉は? 何したらこうなるんだ?」


触れてみて、始めてわかった。ローブを改造した、ゆったりした服の上からでは、見ただけでは分からない筋肉の盛り上がりがある。


「何って。グリエロが言う通り、砂袋を持って、摺り足をやってんじゃないか。」


「それだけで、こんな身体になるのか?」と、疑問を呈するグリエロ。


「あぁ。もちろん、走り込みもやってるよ。」


「あぁ。ちゃんと走ってるのか。どれくらいの距離を走ってんだ? 」


「最近はウンドの街を一周してるな。」


しれっと答えるロンに、驚愕するグリエロ。


「はぁ!? お前、街を一周してから、此処に来てんのか!」


「そうだよ」と、ロン。「チョット待て」と、グリエロ。


「それで、その後、ゴブリンをぶん殴りに行ってんのか。」


「まあね。」


「まあねって。お、お前さん、この一月そんな事を繰り返してたのか。...一日も休まず? ...もはや訓練じゃねえな。そりゃ、修行だぜ、修行。お前さん修行僧か何かか?」


呆れるグリエロ。そりゃ毎日、朝から晩まで鍛えていればこんな身体になるかと納得する。そこで、ふと、疑問を感じる。この男、ロン・チェイニーの言うところの「ぶん殴り」と言うモノはどう言うものなのだろうか? と。

先程のロンの身体。特に肩から背中にかけての筋肉の盛り上がりは目を見張るモノがある。

その身体で、どうやってゴブリンを殴っているのか、非常に興味がある。


「なるほど、修行ね。」などと呑気に呟いているロンに問うてみる。


「なあ、ロン、お前さんの「ぶん殴り」ってのは、どうやるんだ? 見せてはくれないか。」


駄目で元々で聞いてみる。普通は手の内を明かさない。


「いいとも」と、あっさり了承する、ロン。

拍子抜けしたグリエロは簡単に見せると言う事はやはり大した事は無いのかと思うのだが。次の瞬間、目を丸くして驚嘆する事になる。


ロンは、「こうするんだ。」と言って、いつもの様に構える。

脚を肩幅に開き、拳を顎先に持ってくる。


一瞬の沈黙の後、肩腰を入れて拳を一閃させる。


その鋭さに絶句するグリエロ。


そこから更に、ロンは拳を、右、左、右、左と、交互に打ち出す。

速い。そして、ぶれない。交互に目にも止まらぬ速さで拳を繰り出しているのに、拳筋が乱れない。よほど脚腰がしっかりしているんだろう。


「おい。ロン、この手を打ってみろ。」


そう言ってグリエロは自身の掌をロンの顔の高さまで持って来る。

ロンは「よし」と言って、その手を打つ。


パァン!


乾いた音が、中庭に響く。差し出したその手が打ち上げられる。驚くグリエロ。

ロンの拳は鋭く重い。思わず自分の手でを見つめる。ビリビリと痺れている。


「コイツは驚いた。」と言って自分の手をさする。


「しかし、コレはもう、ぶん殴るってもんじゃ無いな。」


「と、言うと?」と、首を傾げるロン。


「コレはぶん殴る、なんて程度の低いもんじゃねえ。そうだな。突き刺す、と言った方が言い得てるな。見た事の無い構えに、見た事も無い殴り方だ。もうまともな術理を持った、攻撃だ。」


「え!? 本当に?」と、目を輝かせるロン。


「これじゃあ、ますます、ぶん殴り屋ってのはオカシイな。ロン、お前さん何か良い呼び方を考えたのか?」


「え!? 考えてない。...突き刺し屋とか?」


「それじゃ、ますます、訳が分からないじゃねえか。」


「う〜ん」と、唸って、二人して頭を抱える。



結局、決まらずじまいで今日も解散する事になる。



今のところ、第一候補は「突き刺し屋」


相変わらず、二人では職業名を決めれないですね。


次回は、再び登場する人物が、ビシッと職業名を決めてくれます。


いつも読んで頂きありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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