死神の涙(前編)
「ハアハア…ハア…」
彼女は逃げていた。
暗闇で下に何があるのか、どの辺りを走っているのかわからない。
ただ…追ってくる者から逃げることしか頭に無かった。
(あと少し…あと少しで交番が見えるはず…!そこまで行けば…)
彼女の体力は限界に近かったが、足を止めはしなかった。
ザッ…
ザザッ…
ザッ…。
“そいつ”も追跡の手を止めなかった。
「ハアハア…この角を曲がれば…着き…」
ザシュ!!
………。
ドサッ…!
彼女は声も無く倒れ…
その背からは…おびただしい鮮血が溢れていたのだった…。
「ふふふ…」
笑っている。
躊躇なく殺人を犯した“そいつ”は、笑いながら夜の闇に姿を消していったのだ…………。
「『連続通り魔事件!怯える付近の住民達!犯人は…何処に!?』だとよ。ほら、あんたも読んでみな。」
ヒュッ…
パシッ!
筒状に丸められ投げられた新聞を、右手で器用に受け止めるアルフ。
「通り魔、か…。」
「あんたは、どう思う?また、どうするよ?」
「さあな…。」
二人にだけしかわからない会話はまだまだ続く。
「下界のことなんざ、俺達には関係ないけどよ…もしそうだとしたら…」
「天界にも影響あるな…」
「なになに?イーリアちゃんにも教えてよ!」
「うおっ!?嬢ちゃんか…ι」
突然のイリアの出現に、シークは後ろに身を引いた。
細い目は、大きく上下に開かれる。
「イリアか…。」
対照的に、アルフは全く驚いていなかった。
普段から付き纏われているアルフは、イリアのサプライズには慣れっこになっている。
カサッ…。
いつもと変わらぬ表情で、新聞をめくる。
『山下芽理、ついに結婚!?お相手は、俳優の○○!!』という記事が目についた。
「シーク、驚きすぎぃ!あたしは、お化けじゃないんだから、そんなビックリしなくていいじゃんι」
「お化けよりも恐ろしい死神だしな。」
ははは、とシークは豪快に笑ってみせた。
「自分で言って、自分で笑うなんてオヤジ〜!」
そう言うイリアも、クスクスと小さな笑みを浮かべていた。
「イリア…読むか?」
アルフは、イリアに新聞を手渡す。
「ありがとう。えーっと…へえ、山下芽理が結婚したんだ?あたしもアルフと結婚したいなあ…。それから…通り魔事件…。あたし…狙われちゃったら、ど、どうしよー?」
「いや…むしろ返り討ちだろうがι」
シークの突っ込み。
「下界も大変だね…。」
「そうだな…。さて…そろそろ行かないとな。」
アルフは腰を上げる。
彼が座っていたのは、雲を固めて作ったイス。
「あたしも行ってこよーっと。早く終わらせて、エマと買い物ーっと!」
イリアは微笑みながら、愛用の鎌を振り上げる。
柄の先に二つの刃が付いた鎌を。
「通り魔に気を付けな、お二人さん。」
年寄りくさいセリフを吐きながら、シークも立ち上がる。
そして三人の死神は…
ババッ!
バサッ…
バサッ…
バサッ…。
三方向に一斉に飛び去っていった…。
「ここ、か…」
アルフは、黒ずんでしまった地面を見下ろしていた。
地にしっかり足を付けて。
翼は折りたたみ、人間の姿で。
そこは、昨日通り魔事件が起きた現場であった。
遺体は片付けられていたが、血の跡はまだ残っていた。
被害者は直前まで逃げていたらしく、血の跡は前に長く広く伸びていた。
両側に壁があり、人一人通れるか通れないかの狭い路地であった。
路地から15メートルほど離れた前方に、交番があった。
「交番に逃げ込もうとしていた被害者を、後ろから一太刀か…。ん…?」
何かが光った。
ゴミが溢れんばかりに入れられている、青いバケツの上。
「なんだ…?」
アルフは、人差し指と親指で光る者を摘んだ。
それは…電気のように明るく光る刻印であった。
直径5センチ弱、薄さ3ミリ強。
真中に吠える竜の姿が描かれている。
人間には見えない特殊な印。
「やはり…あいつが…」
刻印に見覚えがあった。
(まだ存在していたのか…。)
スパッ!!
アルフは刻印を鎌で斬る。
スッと刻印は消えた。
「避けられぬ戦い、か…」
意味深な言葉を残し、アルフはその場から姿を消した。
いや…正確には歩き去っただけだが。
通常の人間では考えられないほどの、スピードで…。
スパーン!
スパスパーン!!
昼間の草原に、鎌の音が響いていた。
「うう…」
人々のうめく声が、少しずつ減っていく。
生き残った者も、やがて全て…。
「ふふ…イリアって、超ラッキー!飛行機墜落事故現場でお仕事なんて!ノルマなんか軽々クリアできちゃうし〜。」
二本の鎌で、次々と人を斬っていたのは、紛れも無くイリアであった。
「あーと5人!」
スパーン!
ザシュ!
「あー…楽すぎて退屈だなぁ。アルフと一緒にお仕事できたら良かったのになあ…。」
最後の一人を斬り終え、イリアはつまらなそうに言った。
うめき声は完全に無くなって…つまり生存者は居なくなったということ。
(それにしても…あれは、人間の芸当じゃないよねっιってことは、もしかしたら“あいつ”なのかも!アルフ…気付いたかなあ。)
そんなことを思いながら、イリアは鎌の刃ををハンカチで拭いていた。
白いレースのハンカチは、赤黒く染まっていった…。
所変わって…
「なあ…爺さん。似てねえか?あの時は天界だったが、今回は下界で起こっている…。」
「…そうやのぅ。ズズッ…」
「のんびりお茶飲んでる場合じゃないだろι一応、最高神力者なんだから、アドバイスするなり、とめるなりしないと…ι」
シークは庵に来ていた。
神力庵。
(相変わらずネーミングセンスのねえ庵だなι)
シークは密かに思った。
しかし、今はそんなこと考えている暇はないことを思い出し、爺さんを説得する。
「頼むぜ…本当にιあんたの孫のアルフも危ねえかもしれないんだからよι」
「なぬ…アルフが関わろうとしているのか?」
ピクッと、爺さんの体が反応した。
「わからねえけれど…アルフは、天界での“あいつ”を倒した奴だから、狙われてもおかしくはないってわけだ。」
「ふむぅ…」
「だから、爺さん。孫を救うと思って、手伝っ…」
「すぅ…」
「言ってるそばからかよι」
シークはため息混じりに言って、眠りこけた爺さんを残し、庵から仕事場へと移動した。
「ちっ…あの女のせいで兄貴とゆっくり話せねえ…」
カーン!
リアゼは落ちていた空き缶を、忌々しげに蹴っ飛ばした。
十三番街。
彼の今回の仕事場は、建設工事があっていた。
(20階建てビル建設予定、か。無駄に金使いたがる生き物だぜ…人間は。)
ガガーと凄まじい音を立てながら、ブルドーザーやクレーンが動いていた。
(さっさと仕事終わらして、兄貴を探し…)
ザシャ!
ズバッ!
鋭い斬音。
「うわぁぁぁ…」
「きゃあ!?」
人々の悲鳴。
「な、なんだ…!?」
リアゼは目の前の光景を疑った。
かまいたちのような風で、人々が斬られていた。
背中…
腹部…
手…
足…
鮮血をほとばしらせて、見る間に倒れていく。
気付いた人々は、悲鳴を上げながら逃げていくが、その風は執拗なまでに彼らを追う。
「うわっ!?」
スパン!
リアゼの隣にあった“駐車禁止”の標識が真っ二つになった。
と、
「…アルフはどこだ?」
風の中から声がして、死神が一人現れた。
声は低く大人びているのというのに、顔は幼かった。
「なんだよ、おまえ!人のエリア、荒らすなよな!」
「アルフの居場所を言え。」
その死神は完全にリアゼの言葉を無視した。
「兄貴なら仕事だろうよ…こっちが聞きたいぐらいだぜ!」
「アルフに言っておけ。止めたくば…明日太陽が沈む直前にこの場所に来いと。」
「人の話を聞け!!」
やや怒りながら、リアゼは小鎌を投げつける。
ヒュン…
シュン!
鎌が当たる直前で、死神は風と共に消え去った。
「なんなんだ…あいつ?言いたいことだけ言って逃げやがって!くそっ…!」
ガツッ!
地面に力いっぱい投げつけられた鎌は…半分に折れていた。
「痛い…」
「助けて…」
うめき声と赤い液体を流しながら、人々は力尽きていった…。
「あっ!兄貴!探してたんすよ。顔をフードですっぽり隠した死神が兄貴に伝言だそうす。」
「…カナルと会ったのか。」
「カナルっていう奴なんすか…。ちらっと見えたんですが、髪は深緑色で幼い感じがしたっす。」
リアゼがボディランゲージで特徴を伝える。
暗くなったことを感知した街灯が自動で点灯した。
「カナルの伝言とは?」
「なんか…『明日太陽が沈む直前に13番街の建設予定地に来い』だそうっす。…兄貴、行くんすか?」
「これ以上、無関係の者を巻き込めないからな。それに…」
「それに…?」
アルフは一呼吸置いて言う。
「カナルは…私の弟でもあり、天界での無差別殺人犯でもあるからな。」
「…そうなんすか。もっと詳しく…」
「アールフ♪やっぱ知ってたんだね…。知らなかったら、教えてあげよっと思ってたんだけど。」
「また出やがったな…ストーカー娘。」
言葉を遮ったイリアに対しての呟き。
「誰がストーカーだってぇ!?」
「聞こえてたのかよ…耳だけはいいってやつか。」
「るさぃっ!!」
スカッ…
イリアの足は、虚しく宙を蹴った。
「………ι」
やや呆れ気味のアルフ。
「あっ…あたしったら、アルフの前ではしたなかった…ι呆れないでよー、アルフ♪」
イリアはおどけながら、アルフの背中に抱きつく。
それを見たリアゼは、
「兄貴が迷惑がってるだろぃ!!」
イリアの体をぐいっと引っ張り、アルフから引き離そうとする。
「リアゼ…」
「兄貴、待っててください!この迷惑女は俺がどかし…」
「カナルは、“どっち”だったか?」
「へっ?のわっ!?」
ドタッ!
気を緩めた瞬間、イリアに蹴りを受け、尻餅をつくリアゼ。
「痛てて…ι」
「ふーんだ!女の子に乱暴するから、天罰が下ったんだよー♪」
そう言って、あっかんべーをするイリアは、とても死神には見えない。
「くそっ…あとで覚えてろよ…。あっ、兄貴。“どっち”って、カナルってのが逃げた方向のことっすか?」
「…唐突すぎたみたいだなιカナルについて少し話しておくか。」
「は、はいっす!」
「イリアちゃんも聞く〜!」
イリアはアルフの背中から下り、ちょこんとその場に座った。
雲がぽよっと揺れた。
リアゼは、こいつと見つめ合いたくねえ、とイリアから1メートルほど離れた右隣に座った。
パフッと揺れる灰色雲。
アルフは二人の前に立ちすくし、話し始めた。
「あれは…5年前のこと。天界で“連続死神殺傷事件”が起きたのさ。…話だけではわかりにくいな。スクリーンを使うか。」
途中からは独り言のように小声で言って、アルフは何も無い空間に鎌をヒュッと一振り。
すると…
ブイイーン!
妙な音がして、リアゼとイリアの目の前に画面が現れた。
まるで映画が写し出されるようなスクリーン。
「“記憶スクリーン”だね♪さっすがは、アルフ♪気が利くねっ!どこかの誰かさんとは大違〜い!」
「ケンカ売ってんのか!?」
リアゼが激しい剣幕で怒鳴る。
「リアゼ…イリア…準備はいいかい?」
アルフが聞いて、
「は〜い♪」
「ストーカー毒舌女め、見てろよな…。OKっす。」
イリアは上機嫌。
リアゼは、不機嫌そうに眉をひそめて答える。
ブイイーンとまた音がして、スクリーンに二人の死神が映った………。
<5年前、天界中央部>
「なーんだ、アルフも死んじゃったのかよι」
サファイアブルーの髪の死神が残念そうに言った。
瞳は茶色に近いオレンジ色。
「カナル…。まさか、本当に天界があるとはな。」
「あったり前さ!俺も初めは驚いたけど、慣れって怖いものだ。」
「慣れ、か…。」
「全く…フィアラ家は早死の家庭なんだろうな。まあ、それはよしとして…」
意味ありげににっと笑うカナル。
「アルフ、これからは兄弟仲良く死神やろう!そんで、俺とアルフは天界一凄腕死神コンビになるんだ!」
「天界一の死神コンビ…?」
「そうさ!やろうぜ、アルフ!そりゃ突然死んじゃってさ、まだ気持ちの整理がつかないだろうけど…。俺、さみしかったしな。アルフはたった一人の肉親だから、一緒に居たいって思いがあるんだ。死神ライフも悪くないぜ♪」
アルフは数秒置いて…
「…そうだな。何にしろ、過去も人間としての生活も取り戻せない。一人でやっていくつもりだったが…兄弟で天界一を目指すのも悪くないな。」
「んじゃ、改めてよろしくな、アルフ…いや兄さん!」
「ああ。」
差し伸べられた弟の手を、アルフはしっかりと握った。
「カナル、アルフにそっくり〜♪仲良しだったんだね♪でも、こーんな仲良しなのに、どうしてケンカしちゃったの?」
イリアが不思議そうに尋ねた。
「ケンカじゃないのだよ、イリア。カナルと戦わなければならなかった理由は…」
「兄貴!そんな辛そうな顔して…直接言いたくないんすよね?だったら、スクリーンで見るから言わなくて言いっすよ!」
「わかった。続けるな…。」
アルフは言いかけた言葉を心にしまい、スクリーンを投影し続ける。
「むっ…後から来たくせにやけに気遣いするじゃん…。なんか…やっぱりムカつ〜く〜!!」
イリアの叫びは、スクリーンの音でかき消されることになる…。
ガーン!!
「…っ…はぁ…はぁ…。」
カナルの鎌から放たれた衝撃波は、アルフの体を噴水にぶつけた。
噴水の水がピタと止まる。
元気な死神は、どこへともなく逃げ去っていた。
傷付いた死神は、雲にひれ伏し苦しそうに顔を歪めていた。
「あう…うう…」
という呻き声がひっきりなしに聞こえる。
「なぜだ…カナル…。なぜ…こんなことを…」
鎌を持ち直し、よろめきながらも体制を立て直すアルフ。
翼はぱっきりと折れ、フードの至る所が破れていた。
血も滲み出している。
痛みと出血で意識が朦朧としていた。
ザッ…
ザッ…
ザッ…
一歩ずつアルフに歩み寄るリアゼ。
その顔に懺悔や哀れみの色は無い。
「答えろ…カナル…!天界一の…死神…目指すのでは…なかっ…たのか…!」
息は絶えだえ。
それだけ言うと、アルフの体はズッと下がる。
「ああ…言ったさ、アルフ。天界一の死神になるとな。それには…おまえが邪魔なんだよ…。」
冷ややかにアルフを見下すカナル。
「カ…ナル…」
「ふふ…次で終わりだ。」
カナルは、鎌にぐっと力を込め…
「さらばだ…アルフレッド・フィアラ!!」
ゴーッ…!!
風で轟音を立てながら、アルフに体当たりした。
ドッ!!
………。
しばしの静寂…。
やがて…
「受け止めた…だと…ばかな…」
ドサッ…
倒れたのは、カナルの方だった。
アルフの鎌の柄が、カナルの腹部を直撃していたのだ。
「…これで…なんとか…」
スッ…。
アルフの意識は、そこで途切れた。
スクリーンが消えた。
「えっ?この後、どうなったの〜!?アルフ…まさか死んじゃったの?」
「生きてるから、俺達と話せるんだろうがιそれくらいも考えつかないのかよ、ストーカーむす…」
ドカドカッ!!
「痛っ!?何すんだよ!?」
本日二度目になるイリアの足蹴りは、今度は確実にリアゼにヒット。
「うるさーい!!今度ストーカーって言ったら、この鎌で切り刻んじゃうんだから!!」
鎌を突きつけすごんでみせるイリア。
上機嫌は不機嫌へと一転している。
「ちっ…兄貴、こんな奴ほっといて、続きを…」
「こんな奴って何よ!!こんな奴って!」
彼女の怒りは頂点に達していた。
しかし、
「イリア…落ち着けι」
アルフのこの一声でイリアは、すぐに笑顔になった。
「はーい♪イリア、なだめられちゃった…はーんせい♪アルフ〜、結局どうなったの?」
「…気が付けば、千爺の庵のベッドの上にいた。体全体に包帯が巻いていて、動こうとすると激痛が走った。『まだ動くでない。生きていたのが奇跡なぐらいじゃからな。正確には“存在が消えなかった”ことが奇跡じゃな、死んでいるのだからのぅ。』千爺の言葉を聞きながら、私はある不安を抱えていた。」
「不安、っすか。」
リアゼが言葉を繰り返す。
「ああ…だから、千爺に聞いた。『カナルはどうなったのかと。』千爺は、すぐに答えたさ。『カナルは…天界少年院に連れて行かれたようじゃ』と。」
「えっ?今下界に居るってことは………まさかあそこから出れたってこと?嘘〜!?」
「タフな野郎だな…」
イリアとリアゼは、感嘆した。
「…これを見てくれ。」
「んっ?何っすか、それ?」
アルフの手の平には、薄く光る刻印が現れていた。
「ん〜?何だろう…見たことないなあι」
イリアは、よく見ようと目を細めて顔を近付ける。
「見たことない、か…。当然だな。これは…私がカナルを封印した刻印なのだよ。」
「じゃ…元々は兄貴の鎌の柄の裏側についてた物なんすか?」
「ああ。」
アルフは二人が顔を離したのを確認してから、刻印をふっと消す。
「リアゼ。」
「何っすか、兄貴?」
「どっちだと聞いた理由…なんとなくわかったかい?」
リアゼは、少し間を置いて、わかったっすと返事をした。
「たぶん…いや、絶対違うっすよ…。兄貴の弟だった奴とは。」
「ねえねえ、アルフ…?イリア、思ったんだけど、カナル君って統合失調症?だっけ。それじゃないの〜?」
アルフは目を見張った。
「イリア…よく知っているんだな。その通り…カナルは多重人格の重症化したものともいえる、それなのだよ。」
「ま、待った!っつうことはですね…奴の中には、純粋なカナルってのもまだあるってことなんすよね…。兄貴…まさか…」
「…そのまさか、だよ。私は…自分の弟を…カナルを…いいあいつも悪いあいつも合わせて、消すつもりなのだよ。」
「兄貴…」
「アルフ…」
イリアもリアゼも、かける言葉が見つからなかった。
「………もう夜も更けてきたな。イリア、リアゼ。疲れてるだろうから、帰って寝た方がいいと思う。私は…明日に向けて今から鍛錬してくるから。」
「あたしも何か力に…」
「…行くぞ、ストーカー娘。」
「ストーカー言うな〜!!…あっ、ちょっと…!何すんのよ!離しなさーい!!」
暴れるイリアの腕を引っ張って、リアゼは北へ歩いて行った。
一度だけアルフに礼をして、その後は振り返らずに……。




