そして美しい貴婦人は俺の家へ挨拶に。
今回ちょっと長いです。前回のあとがきで新キャラは出さないと書いたにもかかわらず、新キャラ登場です。本当にすみません。
朝。昨日は本当に眠れなかった。
今日も義妹の作った食事を食い、1日が始まる。
「そういえば、俺をここに連れてきた悪魔たちは普段はいないんだな。」
俺はふと気づいたことを口から漏らす。
「ええ。経費削減のために彼らは非常勤よ。」
そういうものなのか。俺も財政の立て直しに向けて何かしないとな。
俺はそう思う。
「そういえばここに引っ越したのも金の問題だったんだろ?」
「そうよ。あれは結構な金額になったわね。確か今住んでるのは貴族だったと思うわ。」
ピンポーン。
話を遮るようにチャイムが鳴る。
義妹が出ようとするが、俺の方が先に玄関に着いた。
「はーい。魔王ですが何か。」
「私、リオンと申します。新しい方が引っ越されたと聞いてご挨拶に参りました。」
討伐でないと知って俺は胸をなでおろす。
「それはどうもありがとうございます。どうぞ、お上がり下さい。」
「それではお言葉に甘えて。」
上品な人だな。俺は彼女を応接室に案内しながら、義妹にお茶でも持ってくるよう合図を送る。
すると妹の方も俺に手招きをしている。
「すみませんちょっと待っててください。」
俺は急いでお茶を入れている義妹の方に向かう。
「なんだよ。」
「あの人よ。城を買い取った貴族って。」
「えっ。そうなのか?」
「ええ。だから、失礼のないようにしてよね。」
俺はお茶を持って応接室へ戻る。
「どうもお待たせしました。聞きましたよ。あなたが義妹から城を買い取って下さったんですってね。」
「はい。とてもお安く売っていただいて、助かりましたわ。」
いいなあ。金持ちは。俺もなってみたいもんだな。
「今日はご挨拶だけの予定でしたが、大切なお話がありますの。」
「はっ、はい。なんでしょう。」
彼女は飲んでいたお茶を置き、膝に手をのせる。
「もしあなた方さえよろしければ私の家にご引っ越しなさいませんか。」
え、なんで。魔王なんか家においていいことなどないだろう。
「嬉しいですけど……なんでまた。理由を聞いてもいいですか。」
「私、あなたのことが大変気に入りまして…その…」
恥ずかしそうにうつむきながら彼女は話す。
弱ったな、と目を逸らすと義妹がドアから顔を出し、じとっとした目で俺を睨んでいる。
「……ほんとにありがたいですけど、お断りします。」
「え?でもこのおうちよりもずっと立派ですよ?なんで……。」
「立派な家に住みたいのはやまやまですが、居候させていただくわけにはいきません。義妹も乗り気ではないようですし……。」
「……そうですか。それならば仕方がありませんね。でも私は諦めてはいませんわ。また伺いますので、もし気が変わられたらいつでもおっしゃってください。」
そういうと美しい貴婦人はすっと立ち上がり、部屋を出る。
「ほんとに何のお構いも出来なくて……。」
「いいんです。ミラちゃん、またね。」
義妹に微笑みながら手を振っているが、義妹はそっぽを向く。
「おい!失礼だろ!」
その様子を見ながら貴婦人はにこやかに会釈をして家を出た。
「……お兄ちゃん、あの人のこと好き?」
急に何を言い出すんだ。なんだか口調もいつもと違うぞ。
「まあ、いい人だと思うよ。魔王に一緒に住まないかなんて言ってくれる人だし。」
「彼女にしたいとか、思わない?」
「それはないよ。俺は魔王だし、あの人は貴族だ。」
「そう。ならよかった。ていうかあなた、昨日もそうだったけど、座るとこ違うわよ?あそこ、上座じゃない!恥ずかしい。」
「えっ、そうなのか?全然知らなかった。」
やっぱりいつもの義妹だ。
俺は少し安心して義妹の頭をなでる。
「ちょっと、何すんのよ!」
「いいじゃないか。これくらい兄妹なら普通だろ?」
「……そうね。」
ぽけっと突っ立っている義妹を後にし、俺は部屋に向かう。
そして昨夜よく眠れなかった俺は二度寝する。
ちょっとミラの要素が強すぎですかね。ご意見をお聞かせください。
次回3人組の再登場となります。ぜひご覧ください。