第3話
更新がかなり遅れました。すみません。
食事を終えたテラットは、夜の祈りの前に「式」の練習をすることにした。
今日練習するのは、「納の式」だ。物を収納し、その劣化を防ぐ「式」だが、その難しさは収納する量に比例する。
野宿の技術の第一歩で、狩人は必ず使えなければならないが、テラットはかなり収納できる。
対して、「速の式」「力の式」などの直接、戦闘に使える「式」の扱いが苦手だ。
友達のルクソは戦闘系の「式」が得意だ。俺は一度も彼に戦闘で勝ったことはない。まあ、才能に大きく依存するから、仕方がないといえば仕方がない。
ともあれ夜に騒ぐわけにはいかないので、したくとも戦闘系の「式」は練習できない。だから夜は、周りに迷惑をかけない「納の式」を練習することにしているのだ。
さて、「式」には何が必要だろうか?
それは魔力である。
魔力を使うのは「式」の起動と「式」の維持。「式」の維持に必要な魔力は魔結晶から補われるが、「式」の起動には使用者の魔力が使われる。
魔力は主に食事や睡眠によって回復するが、それまでは基本、魔力は戻らない。
魔力が足りないとかなり怠くなるので、無理はしづらいのだ。
つまり、起動に必要な魔力が多かったり、本人の魔力量が少なかったりすると、「式」を使うことができる回数も減るのである。
ちなみにテラットの魔力量は多くない。そうなると必然的に「式」を使える回数は減るし、起動に使う魔力量が多い戦闘系の「式」は苦手になる。もちろん彼が戦闘系の「式」が苦手な理由はそれだけではなく、普通に才能がないという方が大きいのだが。
はあ、才能がないのは悲しいな。
こればっかりは努力してもうまくならないしな……。
そんなことを考えながら準備を終えたテラットは、気持ちを切り替え集中する。
思い描くのはたくさんの物を収納する袋。中の物は壊れないし腐らないし魔力に戻らない。
想像をそのままに指で魔結晶に字を刻む。
魔結晶が青く光り、「式」の定着を示す。
……ふう、終った。
普段は1から魔結晶に文字を刻むことはしないが、たまに練習しておかないと、いざとい時に使えなくて困るからな。
よし、と頷いて魔結晶を袋に触れさせ、魔結晶を握り魔力を流し込む。
すると、先ほど刻んだ文字が淡く光り「式」が起動する。
試しに袋の中に大きな石を入れてみると、石は袋に入らない大きさにもかかわらず、袋の中に入った。「式」の維持を止め、ため息をつく。
そしてもう一度「納の式」を起動して大きな石を取り出し、テラットは夜の訓練を終えた。
これからも「地下牢」をよろしくお願いします。