村娘のグラティーヌ 共通①
『お兄ちゃん、パパとママはいつ帰ってくる?』
『い、いいこにしてればきっと帰ってくるよ!』
早く寝て早く起きる規則正しい生活を続けていれば、きっと―――
「ふあ……おはようパイドリオ兄さん」
「おはよう。今日は魔法の師匠に会い行く日だろう?弁当用意してあるから」
「いつもありがとう!」
両親がいなくなり兄と二人で暮らしており、いつも面倒見てくれる。私は立派な魔法使いになって兄孝行したい。
「おはようございます!」
領主の使用人ラトマさんに挨拶する。
「……おはようございます」
彼は目がクマだらけで不健康そうな男性。ここの領主は我が儘で評判が悪いから心配だ。
「ラトマさんいつも具合悪そうだけど大丈夫?」
「はあ……転職したいですよ」
彼は小声で愚痴を言う。
「あ、私そろそろ行かないと」
「ではまた」
「アマイマン師匠!」
「なんだー朝からうるせえ……」
青年アマイマンは3年前にとつぜん村へ来て移住、私が弟子入りを志願したら魔法を教えてくれるようになった。
「今日はいつもより身体が軽いので強くなれる魔法とか教えてください!」
「魔法にも相性があんだよ……いつまでも俺に頼るな」
「いつまでも、って……まるで10年単位みたいな言い方ですけどたった3年くらいですよ」
むしろ3年で基礎しか教えてくれないなんて遅すぎる。
「はーわかった。そんなに言うなら一気に詰め込んでやる」
「わーい!!」
アマイマン師匠はいい加減だがやる時はやる人だ。
「そこの君、少しいいか?」
「はい?」
師匠と森へ向かう最中、緑色の鎧騎士に声をかけられた。
「私はジュグ大国騎士のツキノネというだ」
彼いわく神からえらばれし人間は、中心の大国ジュグの王に継ぐ権威を与えられる。
そして人神が亡くなり、新たな対象が選ばれる。
まるで都市伝説のような話をされた。
「手を皿のようにしてくれ」
「こうですか?」
ツキノネがガラス玉を取り出すと、彼の手から浮いて私の手に乗った。
「村娘グレイテナ、今日から君が人神だ」
「はい?」
「マジかよ……」
「私はただの村娘なのに!!」
「神が選ぶ人間に身分は関係ない。貴族階級を優先するのは人間の業であるからだ」
彼は私にジュグ大国へ来てほしいという。
「兄に話してみないと」
■
「それなら僕も行くよ」
「え!?」
「騎士さま、もしかして家族とは離縁とか?」
「いや、それはないが……」
「ならよかった」
兄がいてくれるなら心強い。
「でも私がジュグに行ったら師匠に魔法を教わることもないんだね……」
「しかたないな、可愛い弟子の為ならついていってやるよ」
「この人望……ただの村娘じゃ考えられないな」
私たちはジュグに行くべく、転送魔法ができる広い場所へ向かう。
「今日という今日はゆるさんぞ!!」
「あ、ラトマさん!!」
屋敷の前を通ると、彼は領主に撃たれそうになっていた。