会長様の君に2
今の時代、人が妖怪を見る目を持つ者の方が少ないと言えるだろう。
私は妖怪が見えようが、見えまいが関係ない。猫の姿をしている限り、人は猫として私を認識しているのだから。
私はただの“猫又”ではない。存在する理由が定められた、猫又だ。
私は“猫又”としての人格が生まれたと同時に、使命を与えられた。
だが、今はそれを季雨に言う時ではない。正しくは私の口から言うべきではない、……と言うべきか。
まあ、その話はおいといて私は今、季雨の部屋にいるのだけれど……。
部屋は随分と居心地の良い空間だ、和風とモダン調の家具で揃えられている趣味の良い感じの部屋で、とても凝っている。
とても広い部屋なのだが、私が勝手に決めた定位置である季雨の膝の上でゴロゴロと寛いでいると、時折季雨は遠慮がちに優しい手つきで私の毛並みに沿うように撫でてくれる。
それがとても心地が良くて、しばらくは仮契約をどのタイミングで果たすか、見計らいながらものんびりと過ごすことに決めた。
季雨のことを早い段階であの小娘が諦めたのなら、それはそれ。
彼女が季雨への想いはそれだけの想いだった、と言うこと。
私は私のテンポで仮契約を果たすタイミングを決める、それが私のルール。
「……猫はあまり、抱っこされることが好きではなかったような気がするが」
「まあ、良いではないか。私の定位置は私が決める、ちなみにお前のじい様と契約してた時は……あやつの右隣だったな。季雨、お前に対しての私の定位置は膝の上だと決めた。お前はあやつと違って雑じゃないからなぁ、特別だ」
と、そう季雨の言葉に対してそう答えると、彼は驚きからか若干目を見開いた後、ぎこちなく口元を緩めて微笑んだ。
そして季雨は、
「おじいちゃんに酷似してるとばかり言われてたから、自分がおじいちゃんのコピーじゃないかって思っていた。だけど、似てない部分もあるんだって思ったら、そうじゃないんだなって、俺は俺なんだなって思えた」
そう言った。私はそんな季雨に思わず目を細め、こう言葉にした。
「確かにお前は凄くあやつに酷似している、本人じゃないかって思うほどに。
だけど、お前は季雨だ。あやつに似てない部分だってある。だってお前はあやつではなく、季雨なのだからな」
私は不器用だ、だから言いたいことが上手く言葉にすることが出来なかった。……季雨が理解してくれるだろうか? と不安なったが、わからなかったらその時はその時だ。
いつか、私のこの言葉が理解出来る時が必ずしもくるのだから。
この子はきっと、頭が良い。それは学力的な面での意味でもあり、世渡りをしていく上での選択の選び方を的確に見抜けると言う意味でも。
「そうだな、……俺は季雨だもんな」
と、季雨は呟いた後、私に対してぎこちなさがなくなった微笑みを、彼は初めて見せてくれた。
太陽のような眩しい笑顔を見せるあやつとは違い、落ち着きのある慈愛の籠った微笑みを見せる季雨。
どうして、季雨の周りの人間は気づけない? あやつと季雨は似ているようで、似ていないと言うことに。