彼女に会うきっかけを
部屋に戻れば、しんみりと深刻そうな顔をする季雨の姿があって。
私はすぐさま駆け寄り、落ち込んでいる季雨を慰めるために、彼の膝に前足をおいた後、こう言う。
「どうした? 季雨」
「はぁ……。俺、狐の嫁入りを呼び寄せる体質なのに……体育祭とか、どうしたら良いの……。本部から離れるなって、風紀委員長にも言われたのに」
と、そう弱きな発言をする季雨に違和感を覚える。……さてはこいつ……!
「風紀に憧れを抱いているんだなぁ? 不器用な奴め、素直に認められんのだろう?」
そう意地悪気にそう言うと、図星なのか若干肩を揺らし……顔を下に向ける。
まあ、そりゃそうだろうな。……気紛れな私でさえ、あのカリスマ性に目を惹かれたのだから、同じく上に立つ者としてあの人気、そして信頼を抱かれている風紀に憧れを抱いてもおかしくはないことだ。
「……だって!あの人は俺のこと……嫌いだし、それに……風紀委員長はこの学園の砦、守護神だよ? 俺の“この力”と相性が悪いし……俺にはもう、この力は抑えきれないから」
「いや……風紀は……」
そう暗く考える季雨に私は、さきほど感じたことを伝えようと思ったが、何故か“今”は伝えるべきではない、とそう私は思ってしまう。
……ん? さきほどの現代で言う、ネガティブ発言とやらに聞き流してはいけないような単語があったような気がするのだが。
……ッ!体育祭!
そうか、そこで小娘を行かせて……出会うきっかけにすれば良いのか!
まあ、季雨に出会えるかどうかは……小娘の運次第、と言ったところだが。
仮契約を果たすため、……このくらいの助言くらいはしてやろうか。
◇◆◇◆
「……と、言う訳だ」
「成る程ですね。兄を応援しに行くと言う肩書きで体育祭に行けば良いんですか。……会長さんと会えるかは、私次第と言うことですよね……?」
と、そんな小娘の言葉に「いかにも」とそう返事を返す私。
「……わかりました」
そう浮かぬ顔でそう言った小娘に、疑問を抱いたが……その訳も聞かず、帰ったことを後々後悔することになるのだが、それは別の話。