短詩〔魍魎の街〕〔赤いペン〕
〔魍魎の街〕
ざわめく街
動き出したビル街
蠢く民衆
魑魅魍魎が走り出す
駆け出した街の中
右を向けば呪い
左を向けば怨恨
逃げ場はない
半身で避けた
人さえ悪魔
どれもこれも
逃げ出したくて
それでも僕は
生きているんだ
だからそっと
もがき始めた
ふと見る景色
魍魎の良さを探した
僕の場所を探した
生きる意味を探した
立ち向かおう
殻を破ろう
自分自身の力で
声を出して
瞼開ければ
そこにはいつもの景色で
魑魅魍魎はどこかに
消え去ってた
〔赤いペン〕
赤いペン
滲みやすくて
色は濁っていて
それでも確かに
持っていたんだ
青じゃなくて
緑でもない
真っ赤なペンだけ
いつも持ってた
黒いペンの中に
一本だけで
それでも確かに
持っていたんだ
マルかバツかを
付けるだけで
不真面目な僕は
線さえ引かなかった
まわりの人は皆
色彩豊かで
それでも僕は
赤だけで良かった
そんなペンなのに
ただのペンなのに
使うことができなくなった
怖くなったんだ
手も足も
恵まれて有るはずなのに
この瞳から零れる涙
赤いペンは変わらない
インクは滲みやすくて
インクは濁っていて
ペン先は潰れてしまって
それでも怖かった
マルを書けなくて
バツしかなくて
自分の所為と
分かっていた
黒く沈んだノートに
赤は描かれなくて
数式だけが並んで
答えを確かめられなかった
時が経って
見返したノートの
その真ん中に
赤いはなまるがわらっていた