やっと気づく
全くいちいち話しかけられるタイミングが良いな、と思いながらも、服が汚れたし、明日も仕事なのでシャワーを浴びることにする。
リモコンの電源ボタンを押すがテレビは消えない。
電池切れだった、と思い出し、テレビ本体の電源ボタンを押す。
…
消えない。
「ハルナ」
テレビの電源ボタンを押している私を画面の中から見上げてくる。
「火傷しなかった?」
「えっ…?」
優しく話しかけられてはいるものの、この状況を飲み込めなかった。
そうだ、ドッキリ番組ね!
玄関を開けて、周りを確認するが誰もいない。自分の醜態を世間のお茶の間に晒すわけにいかないので、玄関は鍵とチェーンをしっかりかける。
ついでにクローゼットを確認、部屋中に怪しい物がないか確認する。
ドッキリ用のカメラって全く分からない。本当にすごいな、と感心しながらも、酔いの冷めた私はテレビに向かって話しかける。
「カイトさん、私はあなたの大ファンです。だから、このドッキリがカイトさんで良かった。でも、第三者に私の私生活を晒される事を拒否します。残念ですが、この番組はなかった事に…」
前半はカイトさんへのファンとしての本心。後半はスタッフへのメッセージだ。この後、もしテレビで晒すなら出るとこ出るよ、言おうとしたが、
「待って、ねえ、信じて。本当に俺はここにいるよ。」
じっと見つめる彼。
ああ、やっぱりカッコいい。
「私だって…騙されてたって、カイトさんと話したい。けど、こんな姿を放送されるのは困ります。」
言い終わり、自分がスッピンでダルダルな部屋着だと気づく。
ドッキリって事はカイトからも見えているのかもしれない。
急に恥ずかしくなり、顔を隠す。