この世界の事実
「ねぇ、概念くん。君はこの世界についてどう思う?」
僕の目の前にいる彼女、穹雫 蒼誇は僕のベッドに仰向けに寝ながら僕に問い掛ける。
「それは、脅威の元凶の外の事?」
脅威の元凶とは、僕達のような異端者を一ヵ所に集めて、監察する施設の事である。僕達はこの中で教育や生活をするのだ。
「ふふ、違う違う。…僕達はね、脅威の元凶に閉じ込められているけれど、それは脅威の元凶の外で生きている人も同じ何だよ?」
蒼誇はそお言うとベッドから起き上がり僕の方を見た。蒼誇は誰も知らない事を知っていて、それを僕に教えようとしているのだろう。
「中も外も、僕達はみ~んな、地下に閉じ込められているだよ。…地下シェルターて言ってね。本来ならば人々が避難する場所だったんだ。…最初はね、皆地上の世界で暮らしていたんだ。けれどある日、一人の異端者が生まれた。その異端者は、一晩で約二千人の人を殺害したんだ。それからというもの、異端者が生まれた国で次々と異端者が生まれたんだ。」
蒼誇はそこで区切ると、僕の隣に座った。
「?どうして移動した?」
「…、何となくだよ。」
蒼誇は正面に目を向けると、また語り出した。
「それでね、無能力者達が怖がって、異端者が生まれた所の国民を、皆まとめて地下シェルターに閉じ込めたんだ。…此処は地下シェルターと言うより、脅威の箱庭て、感じかな。これが僕達の世界の事実。およそ今から五十年前の事だよ。」
蒼誇は語り終えると、本を読み始めた。
「何で誰もその事実を知らないんだ?」
蒼誇は本に目を向けたまま答えた。
「異端者が協力したんだろうね。精神系の固有能力を持った異端者が。」
「成る程、確かに異端者が協力したんなら、皆知らなくても可笑しくないな。でも蒼誇、何で僕にその事を話したんだ?というか、蒼誇は何でそんな事を知ってんの?」
何故蒼誇は、僕にこんな事を聞かせたのだろうか。いつもの気まぐれかな?
「教えたのは何となく、分かったのは、僕の固有能力、膨大なる過去の知識を使ったから。」
蒼誇はすらすらと言った。
「まぁ、詳しい事はまた後で聴く事にするけどさ。…ねぇ蒼誇、そろそろ自分の部屋に帰った方が良いんじゃない?」
そう、ここは僕の部屋だ。そして今の時刻は午後9時52分、もうすぐ10時だ。
蒼誇は女の子で僕は男だ。不健全極まりない。
「僕の部屋隣だから。此処で寝る!」
そう言うと蒼誇は、僕のベッドに入り横になった。
「ちょっ!そこで寝られたら僕、何処で寝れば良いの!?」
僕の部屋にはベッドは1つしかない。蒼誇に寝られたら僕は寝る所がなくなるのだ。
「僕と一緒に寝よ♪」
蒼誇は楽しそうに言う。蒼誇、態度変わり過ぎだろ!さっきまでのクールキャラは何処いったんだよ!
「むぅ~、ほら!」
「うわっ!!」
蒼誇強引に僕をベッドに引きずり込んだ。僕は蒼誇に背を向けて極力蒼誇を見ないようにする。…蒼誇は美少女なのだ。こんなに近くでいると、理性が飛びそうになるというのに。
「概念くん、暖かい。」
「!!」
蒼誇は僕の背中に抱き付いてくる。蒼誇の柔らかいものが僕の背中に当たる。…本当、今日は寝れそうにない。
僕は自分の激しくなった心臓の音を、蒼誇に聞こえないように祈った。