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怪奇見聞録  作者: 那智
1/11

神隠し 0

追加プロローグ。

――――昼に山に入った男女二人がいつまで経っても戻らない。


その通報が警察に届いたのは昨夜のことだ。

最初は「若い男女がやることなんて~」と真面目に取り合わなかった警官だったが朝になっても戻らないとの連絡を受け慌てて応援を呼び捜索を開始した。


現在の時刻、4時。

昼前から始められたにも拘らず捜索は難航していた。

二人の姿どころか痕跡すらも見つけられず、ただ時間だけが過ぎていった。


「警部! こちらには何も!」


「そっちはどうでありますか!」


「まだ何も見つかっていません!」


警官の言葉に警部と呼ばれたまだ若い男性は苦虫を噛み潰したような顔をした。


「この山はそこまで広くないであります・・・。 なのにここまで捜索が難航するとは・・・おかしいでありますな」


現在警察が捜索している山は地元の住民が気軽に山菜取りに来るような山であり行方不明者が出るような場所ではなかった。

事故でないなら何らかの事件に巻き込まれたと考えるのが妥当だがそれも違和感がある。


ふと、警部の脳裏にある言葉がよぎる。

それはこの近くの住人に聞き込みをした際に何度も言われた言葉だ。


神隠し。


何人もの村人がその言葉を口にしており、聞き込みに参加した警官たちの脳裏にはその言葉が焼きついている。

難航する捜索に口には出していないが不安を感じ始めている者もいた。

そんな中、警部が口を開いた。


「大泉」


「なんすか」


「何人か連れてもう一度聞き込みを頼むであります」


「何について聞き込めば?」


「神隠しについてであります」


「了解っす」


警部が口にしたのは警察官としては奇妙な命令。

だが大泉と呼ばれた警官はその奇妙な命令にも慣れた様子で従い走り去っていった。


「警部っ!」


「どうしたでありますか?」


「行方不明者のものと思われる荷物を発見しました!」


「っ! 案内するであります!」


警部達は急いで荷物が見つかった場所に急いだ。

荷物が見つかったのは山の木々の中でも一際大きい巨木のしただった。

その木の根本に男物のリュックと女物の鞄が一つずつ置いてある。


「置き方からして何かあったとしたら荷物を置いたあとでありますな」


「ええ、おそらくここで休息を取ったのでは?」


「その可能性が高いであります。

 大西巡査部長、部下達にこの付近を中心に捜索するように伝えるであります」


「は、はいっ!」


大西と呼ばれた警官――通報を受けた警官だ――は慌てて走り出した。

彼が状況を軽視したせいで捜索が遅れたのは問題だったが誰だって邪推はしてしまうだろうし


「犬飼は女物の鞄を調べるであります。 男物は自分と久保田がやるであります」


次々と命令を出しながら警部は白い手袋――証拠品に自分の指紋がつかないためのもの――を付けた。

リュックを開けると雨具や携帯食料が入っている。

おそらく運転免許証などが入っている財布は山では必要ないので奥にしまってあるのだろう。

警部がリュックの奥を調べるとあるものが目に入った。


「これは・・・」


それは一冊の本だった。

通常の本のようにきちんとした装丁がされている訳ではなくまるで一昔前の本のように表紙に挟んだ紙を紐で纏めてある。

警部はその本に見覚えがあった。

そしてその持ち主のことをよく知る部下に問いかけた。


「久保田、この本に見覚えがあるでありますな?」


久保田はその本を見ると驚きで目を見開いた。


「っ! こ、これはあいつの!」


「やはりでありますか。

 ・・・無理言ってこの捜索に加わって正解でありましたな」


久保田に本を渡すと再び警部は荷物を調べた。


「警部、財布の中に身分証明書がありました!」


「こっちも見つけたであります」


財布の中の運転免許証を取り出しながら警部は久保田の方を向いた。


「その本はお前が調べるであります。 この事件はおそらくまともな終わり方をしないであります。

 そうならないためにも・・・」


「はっ! 了解しました!」


「久保田以外はこの付近での捜索を続行するであります」


警部は他の部下の元へと歩いていった。

一人残された久保田は手に持ったままの本に視線を落とした。

表紙には『怪奇見聞録』と文字が書かれている。

久保田は確信する。

間違いない。友人である彼らの字だ。


「浩一君、香也乃ちゃん・・・・・・無事でいてくれ・・・」


そう祈ってから久保田は最初のページを開いた。



――――そこには世にも奇妙な記録が記されていた。

この警官たちの詳細は後ほど。

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