閑話 寒冬の火照り
久しぶりの投稿。
今回は完全ラブコメを目指しました!
唯ひたすら甘々な回です。
アイリスディーナはベッドに寝込みながら、思わずせき込む。
「けほ、けほ、けほ……」
朦朧とする意識と全身に纏わりつく重みと息苦しさ。
空気が喉を通る度に刺すような痛みが走り、体が震えてしまう。
窓の外に目を向ければ、チラチラと雪が舞い、雪化粧を纏った木々が窓から顔をのぞかせている。
視線を窓から室内に向ければ、恋人であるノゾムが心配そうな目で彼女を見つめていた。
その手には、雪を詰めた氷嚢を持っている。
「アイリス、大丈夫か?」
氷嚢が、そっとアイリスディーナの額に乗せられた。
布地からしみこむ冷たさが、心地よく彼女の熱を払っていく。
彼の傍には学園の保険医であるノルンや、この迎賓館に常駐しているアンリたちの姿もあった。
ノルンは彼女の喉を触診し、熱を測ると、難しい表情を浮かべて腕を組む。
「なるほど、喉が腫れている上に高熱。典型的な風邪の症状だな」
風邪を引いた理由は、アイリスディーナ自身もよくわからない。
ただ朝になったら、体調を著しく崩していた。
朝食の時間になっても起き上がれず、心配したノゾムが様子を見に来て彼女の状態を把握。ノルンを呼んで診察してもらっているのが、今の状況だ。
「熱は……45度くらいか?」
「「「45度!?」」」
45度という人間の平熱を十度以上上回る熱に、ノゾム達三人が素っ頓狂な声を上げる。
「ちょっとノルン、それはまずいよ!」
「先生、俺もっと雪持ってきます!」
「私はジハード先生に連絡して、緊急搬送の準備を!」
熱が42度を超えると、人間の体には深刻な影響が出る。
最悪の場合は死。たとえ生き延びても、体に障害が残る可能性もあるのだ。
しかし、大慌ての三人をよそに、ノルンは落ち着き払った様子だった。
「待て待て三人とも。この状態で意識がはっきりしているところを見ると、今の彼女にとってはそれほど高い熱ではないのかもしれない。なにしろ、前例のない状態だからな」
ダンピールとなったアイリスディーナの肉体強度は、既に人間を超えている。そう考えれば、45度という熱も、彼女にとってはちょっと高いだけなのかもしれない。
それに、下手に動かすのも、患者の負担になる。
「でもノルン先生……」
「だから、専門家を呼んだ」
「専門家?」
その時、ガチャリと部屋のドアが開かれ、銀髪の美女が姿を現した。
アイリスディーナがダンピールとなるきっかけとなった人物、ヴィトーラだ。
彼女は露出度の高い季節外れの深紅のドレスから覗く蠱惑的な白い足を見せつけながら、カツカツとベッドに歩み寄る。
「来たぞ旦那様。なにやら娘が大変な状態みたいだな」
「だれが、むすめだ……ごほごほ!」
「大人しくしておれ。ふむ……」
相も変わらずヴィトーラに娘呼ばわりされることに我慢ならないアイリスディーナが声を上げようとするが、喉からは擦れた声が漏れるだけ。
そんな彼女の様子に鼻を鳴らしながら、ヴィトーラはアイリスディーナの胸に手を当てて目を閉じる。
「なにかわかりましたか?」
「うむ、単純にまだ体が妾の力に馴染んでおらんのだろう。元々人間には過ぎた力を旦那様の力で無理やり定着させた状態だったのだ。不定期に何らかの不具合が出るのは目に見えておる」
やはり原因はダンピール化の影響。
「とはいえ、旦那様の力がしっかり守っておる。致命的な状態にはならんだろう。精々、一日二日寝込むくらいじゃろうな」
その言葉に、ノゾムはほっと大きく息を吐く。
熱は確かに高いが、ダンピール化による肉体強度の上昇も加味すれば、二日くらいならもつだろう。
後は、きちんと休養することが肝要。
「さて、特に問題がないようだから、妾は帰るぞ。ああそうだ旦那様。娘がこの状態なのだから、今宵はぜひ妾と……」
「いえ、アイリスの看病するんで帰ってください。というか帰れ」
「なんだ。同じ館に住む者同士だというのに、冷たいのう……」
帰るついでにヴィトーラがノゾムに色目を向けながらしなだれかかるが、ノゾムはきっぱりと誘いを断ると、彼女を部屋の外に追い出す。
ちなみに、ヴィトーラは現在迎賓館に滞在しているが、部屋割りとしては館の中心を挟んでちょうど正反対。一番遠い場所が割り当てられている。
これはアイリスディーナとノゾムの希望である。
一緒に住むのはアルカザムの事情を考慮すれば仕方ないが、出来るだけ遠くにいてほしいというもの。
「それでは、診察は一応これで終わりとするが、念のため熱が下がるまでは私も近くにいた方がいいな。アンリ、悪いが部屋を用意してくれるか?」
「まかせて~~」
「ノルン先生、ありがとうございました。私も仕事に戻ります」
ノルンがアンリを伴って部屋を後にし、続いてインダも出ていく。
「じゃあ、俺も行くよ。今日はゆっくり休んで」
残されたノゾムも部屋を出ようと背を向けると、クイッと袖を引かれた。
ノゾムが思わず振り返ると、アイリスディーナが潤んだ瞳で彼を見つめている。
「アイリス?」
「やだ……」
「え?」
「行っちゃヤダ。ここにいて」
「でも、休んでいないと……」
袖をつかむ細い指にキュッと力がこもり、寂しさを漂わせる視線が向けられる。
凛とした強さを漂わせる普段とは違う、弱々しくも、信頼する者にしか見せない姿だった。
そんなアイリスディーナの様子に、ノゾムは笑みを浮かべながら、そっと袖をつかんでいる手を握り返す。そして近くの椅子をベッドの傍に引き寄せ、腰を下ろした。
アイリスディーナは安堵するようにホッと表情を緩ませる。
「分かった。アイリスが眠るまでなら」
「やだ、ずっといて……」
「なんだか、今日は結構わがままだなぁ……」
手を握って五分もすると、アイリスディーナは眠りに落ちた。
規則正しい寝息を確認し、ノゾムは静かに息を吐く。
(やっぱり、体温が高い……)
「んん……」
添えた手に、人よりもずっと高い熱が伝わってくる。
袖を握るだけだったアイリスディーナだが、小さなうめき声と共に、ノゾムの手を胸元に引き寄せる。まるで、大切な彼の存在を、もっと求めるように。
そのイジらしい仕草に、ノゾムは思わずそっと愛しい人の頬を撫でた。
手の平に返ってくる優しい感触。愛しさがいっそうこみ上げてくる。心なしか、熱に苦しんでいたはずのアイリスディーナの表情も、少し穏やかになっていた。
(アイリスには悪いけど、寝ている間に色々と用意しておこうかな)
いつの間にか手をがっちり抱きしめている彼女に苦笑を漏らしつつ、ノゾムは上着を脱ぐ。袖から掴まれているため、腕を引き抜くには上着を犠牲にするしかないのだ。
少し名残惜しさを覚えながらアイリスディーナの抱擁から手を抜くと、ノゾムは彼女の食事を用意するためにキッチンに赴き、竈に火を入れる。
作るのはカボチャのスープ。とろみと甘みのある、体調が悪い時の定番料理の一つだ。
「こんにちは~~。姉様大丈夫ですか?」
スープを作っていると、元気のよい声がキッチンに響いてくる。
ドアを開けて入ってきたのは、フランシルト家の面々。ソミアとメーナ、そしてヴィクトルだ。
「ソミアちゃん、いらっしゃい。アイリスに会いに来たのかい?」
「はい。姉様、体調が悪いと聞いたので……」
「おい、小僧! 私の娘は無事なんだろうな!」
一応、アイリスディーナは廃嫡となっているが、それでもソミア達にとっては家族であることは変わっていない。
特にヴィクトルに至ってはよほど心配なのか、普段の大貴族の顔がすっかり喪失してしまっていた。
「旦那様、お静かに」
「へぐ!?」
顔を真っ赤にしてノゾムに詰め寄ろうとするヴィクトルの脳天に、メーナの拳が炸裂し、床に叩き伏せる。
相も変わらず主を主と思わない行動を取るメイドに、ノゾムは顔を引きつらせながらも、アイリスディーナの容態を説明した。
「ええっと。アイリスは確かに体調を崩していますけど、今は大丈夫です。一日二日で回復するそうなので……」
「よかった~~」
「いや、万が一というのもある。やはりここは私自らこの屋敷に残って……」
「はいはい、婦女子の部屋にいきなり押しかけようとしないでください」
「ぐおおお……」
ノゾムの説明に、少し緊張を漂わせていたソミアがほっと胸をなでおろした。その隣では、メーナがアイリスディーナの部屋に突撃しそうなヴィクトルの首根っこを引っ掴まえている。
「ノゾム様が作っているのは……」
「アイリスの食事です。さすがに体調が悪いのに固形物は無理なので……」
「兄様、何か手伝えませんか?」
「そうだな……って、兄様?」
ソミアの口から出た呼び名に、ノゾムは思わず聞き返す。
「? ノゾムさん、姉様と結婚するんですよね? なら、兄様と呼ぶべきじゃないですか?」
「…………いやまあ、将来的にはそうなるかもしれない……いや、俺としてはそうなって欲しいけど」
「小僧、貴様~~!」
「旦那様。ご自分でアイリスディーナお嬢様を廃嫡したのですから、いい加減子離れしてください」
「あの、アイリスが休んでいるので、静かにしてもらえませんか?」
「ぐむううう……」
メーナに物理的に止められ、ノゾムに正論で封殺され、ヴィクトルは悔しそうにうめき声を漏らす。
「とりあえず、ソミアちゃん、手伝ってくれる?」
「はい、任せてください!」
「私はお嬢様の着替えなどを用意しておきます。旦那様は氷嚢に使う雪を取ってきてください」
「よし分かった! っておい、私が外で雪集めするのか?」
「料理を初めとした家事一切が不可能な貴方にできるのは肉体労働くらいでしょう? いいから行きなさい」
キッチンには搬入のための勝手口が裏にあるのだが、メーナはそこからヴィクトルを蹴り出した。
しばしの間ギャーギャー文句を言っていたヴィクトルだが、しぶしぶ雪をかき集め始める。
そして一通り料理などの用意が終わると、ソミアはすぐに帰ることをノゾムに告げた。
「それじゃあ、兄様。姉様のこと、よろしくお願いしますね」
「会っていかなくていいの?」
「姉様の負担になりたくないので、今は我慢します。治ったら、また改めて来ますね」
相も変わらず、姉想いのよくできた娘さんである。
「おい小僧! ここはお前に任せてやるが、決して娘に邪なことをするんじゃ……イダダダ!」
「ノゾム様、アイリスディーナお嬢様をよろしくお願いいたします。それでは旦那様、帰りますよ」
「分かった、分かったから、腕をひねったまま引っ張るんじゃない!」
ノゾムがソミアの気づかいに感心している一方、メーナとヴィクトルも相変わらず。
そして、ヴィクトルを引きずりながら帰るソミア達を見送ったノゾムは、食事と氷嚢、そして着替えを持ってアイリスディーナの部屋へと戻った。
部屋に戻ると、既にアイリスディーナは目を覚ましていた。
ノゾムが残した上着をギュッと抱きしめながら、自分が寝ている間にいなくなっていた彼に不満そうな目を向けてくる。
「むう……いてほしいって言ってたのに、いなくなってた」
「色々用意していたんだから、ちょっとぐらい我慢してくれ」
ふくれっ面なその顔も可愛い。ノゾムは苦笑を浮かべつつ、こみ上げる喜びを押さえながら、用意していた食事などを近くにあるサイドテーブルに並べる。
「ソミアが来ていたの?」
「ああ、メーナさんとヴィクトルさんもね」
「そう……」
フランシルトの人間ではなくなっても心配してくれる肉親が嬉しいのか、彼女の声色が少し寂しそうながらも、隠しきれない嬉しさを漂わせている。
その時、アイリスディーナの鼻腔に、甘い香りが漂ってきた。くう……と、小さく腹の虫が鳴く。
「スープ……」
「もう昼時だ。朝飯も食べていないし、お腹減ったろ?」
「……うん」
コクリと小さく頷くと、アイリスディーナは目をつむり、小さく口を開ける。
「アイリス、なにしてんの?」
「食べさせて」
ノゾムが一瞬、驚きに固まる中、アイリスディーナは早く早くと催促するように、くいくいと顎を突き出してくる。
根負けしたノゾムは肩を落とし、彼女の前に座ってスープの入った器に匙を入れた。
「はい、アーン……」
「ん、おいしい」
少しぬるくなったスープが、ほんのり甘く、優しい口当たりと共にするりと喉を通る。
トクン、トクン……。早まる鼓動とこみ上げる衝動に流されるように、アイリスディーナは再び口を開けた。
「もう、なんだか今日は子供みたいだな」
「いいの、今日くらいは」
一匙一匙、口に運ばれるスープを、彼女はまるでひな鳥のように嚥下する。
まだ熱は高く、体は重い。喉にも痛みが走る。
でも、嬉しい。彼の心配が、彼の心遣いが、彼の優しさが、アイリスディーナの喜びとなって全身を駆け巡っていた。
そんな法悦も、鍋の中のスープが空になるとともに終わりを迎える。
食器を片付け始めるノゾムの背中。逸れてしまった彼の瞳に、彼女の胸に再び寂しさがこみ上げる。
「ノゾム。体、気持ち悪い……」
「ああ、寝汗か。お湯とタオルも用意してあるから、体を拭くといいよ」
だからだろうか、アイリスディーナは全身を蕩かす熱に促されるまま、普段の彼女なら絶対にしないことをし始めてしまう。
「ん……」
彼の前でパジャマのボタンに手をかけ、外し始めた。その瞳はトロンと蕩け、まともに思考が働いていないことを窺わせる。
プチ、プチという音とともに露になっていく白い肌。ノゾムは思わず噴き出し、大声を上げた。
「って、ちょっと待て! 俺がまだ部屋にいるのに脱ごうとしない!」
「でも、気持ち悪い……」
制止しても、アイリスディーナの手は止まらない。そして最後のボタンが外された。
彼女の胸元からお腹までが顕わになり、ノゾムは慌てて背を向ける。
「だったら、せめて俺が部屋を出るまで待って……」
「ノゾム、拭いて……」
「は?」
「拭いて」
「いやいや、さすがにそれは……うわ!」
ノゾムの手がグイっと引かれる。
思わずベッドの傍に膝立ちする形になったノゾムの眼前に、白いアイリスディーナの背中が飛び込んできた。
「お願い。体、まだ熱で痛いの。背中、拭けない……」
「じゃ、じゃあ目を瞑っているから……」
「見てもいいから」
「ふえ?」
「見てもいいから。ううん、見て?」
(見れるかあああぁぁ!)
互いに沈黙すること十秒。折れたのはノゾムだった。
有無を言わさぬアイリスディーナに心の中で叫びつつも、持ってきたタオルを手に取る。
そしてタオルをお湯に浸し、軽く絞ると、白く艶やかな彼女の背中を拭き始めた。
「ん、ノゾムの手、気持ちいい……」
(これは仕方ないんだ、仕方ないことなんだ……というか、触れているのはタオルであって俺の手ではありません! 変な言い方しない!)
艶めかしい声が、ノゾムの鼓膜と全身を震わせる。
布越しでも手に返ってくる感触は柔らかく、熱を帯びて思考をマヒさせていく。
ともすれば暴走しそうな劣情に必死に耐えていると、アイリスディーナがおもむろにノゾムの腕に手を伸ばしてきた。
「こっちも……」
「ちょ……!」
添えられた手が引かれ、ノゾムの腕がアイリスディーナの脇の下を通る。
そして彼女は己の手を彼の手に重ねたまま、なんと体の前側を拭き始めたのだ。
背中よりもさらに柔らかい感触に、ノゾムの体は完全に硬直し、思考力と理性もガリガリと削られていく。
(前は駄目だって!)
「ん、ん……」
カッチーンと硬直しているノゾムをよそに、アイリスディーナは体を拭き続ける。
すべすべのお腹から二の腕、そしてひときわ柔らかい、二つの丸みを帯びたもの。
指の間に沈み込み、返ってくる感触に、思わずノゾムは頭の中で悲鳴を上げた。
(うおおおお! 誰か頼む、俺を気絶させてくれ~~~~!)
精神的にあまりにも高負荷がかけられること数分。ようやくノゾムは解放された。
「はあ、はあ、はあ……さっぱりした?」
「うん……ノゾム」
「こ、今度は何?」
「着替え……」
「ああ、こっちに……ん? ぶっ!」
疲労困憊なノゾムが何とか立ち上がり、アイリスディーナの着替えを手に取った時、はらりと小さい三角形の布地が床に落ちた。
それは可愛らしいピンク色の下着。
ノゾムは思わず上から替えのパジャマを乗せ、そのまま下に隠した布地が見えないようにする。
そして、努めて何事もなかったかのように着替えを持ち直す。その頬はヒクヒクと引き攣っている。
その時、折りたたまれた着替えのパジャマの隙間から、白い紙が顔をのぞかせているのに気付いた。
怪訝な表情でノゾムは紙を抜いて広げ……そして書かれている文に声を失う。
『ノゾム様へ、今が男を見せる時です!』
(おいこらメーナさあああん!)
それはメーナからの余計な激励だった。
檄文の隣には、親指立てた可愛らしくも意味深なイラストも描かれている。
すでに十分すぎる以上のダメージを受けているノゾム。これ以上何をしろと言うのか。
「ノゾム、どうか、した?」
「いや、なんでも……というか、上半身裸でこっち向かない!」
コテンと可愛らしく首をかしげながらも、アイリスディーナは両手を上げて着替えを求めてくる。
視界の端に割り込んでくる、プルンと揺れる二つの丘。
これ以上はマズい。いろんな意味で壊れてしまう。
そう判断したノゾムは目を背けながら着替えを渡し、そのまま部屋から立ち去ろうとするも……。
「だから、行っちゃダメ……」
「ふぐ!?」
三度手を引かれ、無理やりベッドの上に座らせられた。
そしてアイリスディーナは彼を繋ぎ止めるように、腕を回してくっつく。
背中から抱きつかれる形になり、二つの女性のシンボルが直接背中に押し付けられる。
普通の人よりもはるかに高い彼女の熱が、先ほどまで布越しに触れていたものを介してノゾムに伝わっていく。
(ああああああ!)
「ん、ヒンヤリしていて気持ちいい……。ノゾムは、気持ちいい?」
耳元でささやかれる、愛しい人の呟き声。
ふにふに、ふにふに……と、アイリスディーナが身じろぎする度に、形を変えながら襲ってくる柔らかい感触。
体内で交わる熱は、もはや彼女の者なのか自分の者なのかもわからないほど混ざり合い、猛り狂っていく。
そして、ついに理性の限界を自覚したノゾムは、反射的に右手を己の顔に当てて気を放った。走る衝撃が彼の脳を揺らし、意識を飛ばす。
「ノゾム、ノゾム……寝ちゃったの?」
「きゅう~~~~……」
「えへへへ、じゃあ、私も寝る~~」
自分で自分を気絶させたノゾムの体が力なく項垂れる中、熱で思考が蕩きっているアイリスディーナは愛しい人を自分のベッドに引きずり込み、喜びと共に再び眠りに落ちていく。
その後、乱れた服で同じベッドに眠る二人を前にして、教師二人が大騒ぎをし、その釈明にノゾムは忙殺されることになる。
そして、このアイリスディーナの奇妙な体質が後々、様々な騒動を引き起こすことになるのだが……。
「なんじゃこりゃああ!」
「きゃあ~~! 姉様可愛い!」
「うええええん、のじょむ~~~~!」
「これは……。アイリスディーナお嬢様、随分幼くなりましたね」
それはまた別の話である。
いかがだったでしょうか?
最終的にアイリスの攻勢に負けたノゾムは自決を決意。
ラスボスアイリスさんは戦利品をゲットして大満足。
そして後々にまたトラブルの予感が……。