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第8章第21節

「やあノゾム、やっとと来てくれたね」


 純白のドレスに銀の装飾に身を包んだアイリスディーナは、笑みを浮かべてノゾムを出迎えた。

 

「いや、その……待たせた……のかな?」


「ああ、待ったな。このままでは踊る相手がいないままパーティーが終わってしまうと思っていたところだ」


 そんな言葉をアイリスディーナは述べているが、高貴で華やかな令嬢である彼女を、ダンスに誘おうとする男は無数に存在する。

 それでも、アイリスディーナは“踊る相手がいないままパーティーが終わる”なんて言葉を口にしたのは、今日だけは踊る相手は一人と決めていたからである。


「う、いや、その。アイリスはヴィクトルさんと挨拶回りとかで忙しそうだったし、落ち着いてからの方がいいかなって思って……」


 一方、朴念仁のノゾムは、そんなアイリスディーナの隠れた告白には気付かない。

 そんなノゾムの反応に、アイリスディーナの中で小さな嫉妬心が鎌首をもたげた。


「正直面倒なんだぞ。ノゾムが話しかけてくれたらすぐに納まったのに、君はシーナ君と楽しそうにしているんだから……」


「え……?」


 ちょっと困らせてやれ。

 小さな妬心に促されるまま、アイリスディーナはノゾムとシーナがおしゃべりしていた時の様子を語る。

 正直、アイリスディーナとしては、楽しそうに話すノゾムとシーナの様子を見て、ムスッとしたのは事実である。


(私も一緒にしゃべりたかったんだぞ!)


 仲間外れにされた気がしていた時のことを思い出しながら、彼女はワザとちょっと不機嫌そうな表情を浮かべる。


「まったく、ズルいじゃないか。私を放っておいて二人だけで楽しくおしゃべりなんて……」


「いや、その……」


 不機嫌そうなアイリスディーナの様子に、ノゾムは困ったような表情を浮かべる。

 シーナとの話が楽しかったのは事実だが、アイリスディーナを仲間外れにしたことも事実である。

 それに、パーティーに不慣れで右往左往していたとはいえ、完璧な令嬢としてふるまうアイリスディーナに対して気後れしていた感は否めなかった。


「アイリス、悪かっ……」


「ふふ、すまない。ちょっとした冗談だよ」


 不機嫌そうだったアイリスディーナの表情が一変し、楽しそうな笑みが浮かぶ。

“してやったり!”というような、得意気なその表情に、ノゾムはようやく、自分が揶揄われていることに気づいた。


「アイリス……」


 嘆息しながら肩を落とすノゾムを見つめながら、アイリスディーナは満足した小さな妬心と、好きな人の視線を自分に向けられた達成感に喜んでいた。


「ノゾムも大変そうだったな。かなりの人達に囲まれていたじゃないか」


「ああ、正直どうしたらいいか全然わからなかった」


「まるで初めて泳ぐアヒルの子みたいだったな。思い出したら……ふふふ」


 挨拶回りで忙しく、自分から話しかけることはできなかったとはいえ、アイリスディーナもノゾムが要人達に囲まれて右往左往している姿を見ていた。

 その時の様子を一言でいうなら、大根役者の喜劇と言ったところ。

 要人達に囲まれて混乱していたノゾムの様子を思い出したのか、アイリスディーナが、再び笑みを浮かべる。


「く、ぷふっ……」


 アタフタしていたノゾムの姿が、よほどツボに入ったのだろう。

 アイリスディーナは大声を上げないようにお腹を押さえながら、必死に笑いを堪えている。

 その姿は、どこからどう見ても年相応の少女そのもの。

 彼女の、普段の令嬢然とした姿が、完全に鳴りを潜めているのは大変珍しい。

 一方、笑われ続けるノゾムとしては、ちょっと困ってしまう。


「そこまで笑うことないんじゃないか?」


「いいじゃないか。シーナ君とはもう楽しんだんだろ? なら、私もこのくらい楽しませてくれ」


「それは、俺を玩具にして、という事か?」


「そういうことだね」


「そういう事ってね……」


 勘弁してください。

 そんな無言の抗議を視線に込めて、ノゾムはアイリスディーナを見つめるが、悪戯好きの少女に戻ってしまった彼女は“ダメ!”というように、可愛らしく口パクで返答してくる。

 こうなってしまったら、ノゾムはもうどうしようもない。

 諦めと呆れから漏れたため息とともに、再びがっくりと肩を落とす。

 そんなノゾムの様子を、アイリスディーナは口元に手を当てながら、心底楽しそうに見つめていた。


「そのドレス、前のと違うね」


「ああ、今の髪に合うようにコーディネートしてもらったんだ。以前のホームパーティーとは全然違うけど、どう思う?」


 ノゾムに見せるように、アイリスディーナがスッと体を開く。

 サラサラの絹で編み込まれた純白のドレスと、瑞々しい白磁の肌。たおやかな微笑みは飾る銀細工と相まって、夜空に浮かぶ月の女神のように輝いている。


「月並みなセリフだけど、よく似合っている。今までのアイリスのイメージとは違うけど、まるで……」


「まるで?」


「い、いや、その……」


 思わず自分が言いそうになったセリフに気づき、ノゾムが押し黙る。


「なんだ? どうしてそこで黙るんだ?」


 一方、アイリスディーナはノゾムの言いかけた言葉が気になるのか、ズイズイと遠慮なく近寄ってくる。

 端正で美麗な顔。真っ白な髪とは対照的な漆黒の瞳に迫られ、ノゾムは思わず顔を赤くしてたじろいでしまう。

 一方のアイリスディーナは、そんなノゾムの反応から、彼の心情を簡単に見抜いていた。

 想い人が自分の姿に見とれている事実に心躍りながら、アイリスディーナは口元に悪戯っぽい笑みを浮かべてさらに距離を詰めていく。


「ほら、言って。ノゾムはどう思うんだ?」


“もっと自分を見て欲しい。もっと自分を感じて欲しい”

 そんな乙女心に突き動かされながらさらに詰め寄るアイリスディーナだったが……。


「まるで、月の女神さまみたいだ。すごく、綺麗だよ……」


「…………」


 まっすぐなノゾムのカウンターに迎撃された。

 予想以上にまっすぐで純粋なノゾムの言葉に、アイリスディーナの羞恥心が一気に跳ね上がる。


「なんでそっぽ向くんだよ?」


 白磁の肌を朱に染め、自分の体を守るように両手を組み、アイリスディーナはノゾムに背を向ける。

 明らかに照れている。

 さらりと肩から流れる白の長髪から覗く頬も、これ以上ないほど真っ赤になっていた。


「アイリス、照れてるのか?」


「……照れてない」


 可愛い。

 少し前にシーナと繰り広げたやり取りを思い出しながら、ノゾムは自分の心にちょっとした嗜虐心が鎌首をもたげるのを感じていた。


「自分から言えって言ったのに照れるなんて……」


 もうちょっと揶揄ってみたい。

 心に沸いた嗜虐心に促され、先にアイリスディーナに揶揄われたことも相まり、ついついノゾムは調子に乗ってしまう。

 

「照れていないったら照れてない!」


「うわ!」


 アイリスディーナの猛反撃。

 素早く右手でノゾムの頬を引っ掴み、割と本気でつねり上げる。


「あ、あいりぃす、いひゃいいひゃい」


「もう、もう……!」


 組んだ両手のうち、片方を器用にノゾムの頬に伸ばして抓っているアイリスディーナ。

 所々に優雅な仕草が残っているあたりはさすが貴族令嬢だが、こんなメトロノームのように攻守が交代する惚気劇は、当然ながら、他のパーティー参加者達に丸見えなわけで……。


「あいりぃす、あいりぃす」


「何よ!」


「ふぃられてる」


「……え?」


 ノゾムに言われて、アイリスディーナはようやく自分がどれだけ目立つことをしていたのか理解した。

 促されるまま周囲に目を向けてみれば、パーティーに参加している要人達が、まるでありえないものを見たような表情で固まっている。

 ノゾムに注目していた貴族令嬢達も、手に持っていた扇子をポトンと落とし、あんぐりと口を開いて呆けてしまっていた。


「っ~~~!」


 最高潮に達した羞恥心に突き動かされるまま、アイリスディーナは抓っていたノゾムの頬を一際強い力で思いっきり捻りあげる。

 さらにそのまま、抓っていた手を思いっきり振り払った。

 ビチン! と弾けるような音とともに、ノゾムの悲鳴が響く。


「ひぎゅあ!」


 頬に走る激痛にのたうち回るノゾムと、優雅に腕を組みながらそっぽを向くアイリスディーナ。

 さすがに揶揄いすぎたと思ったのだろうか。

 赤くなった頬を押さえながらも、ノゾムがアイリスディーナに謝罪する。

 

「ゴメン、ゴメン。悪かったよ」


 だが、肝心のお姫様は子供っぽく頬を膨らませて、超不満顔。

 やりすぎたと若干の後悔を抱えながらも、拗ねるアイリスディーナの姿は、彼女の妹であるソミアをノゾムに連想させた。

 

「でも、やっぱり姉妹なんだな。やっぱりソミアちゃんによく似てる」


「……ふん」


「可愛いだけじゃなくて、綺麗なのも本当だよ。女神さまみたいに見えたのも」


「……本当なのか?」


「こんな事でウソなんてつけないよ……」


 先ほどまでの凛とした姿も美麗だが、こんな風に子供っぽい姿も愛らしい。

 本心からそう思うノゾムは、真っ直ぐに自分の想いを口にする。

 ノゾムにはそのくらいしか出来なかった。

 元々ノゾムは口下手で、お世辞とかが苦手な人間である。

 コミュニケーション能力も高いわけではない。


“余裕を持て”


 それが、先ほどパルライン夫人から贈られた、大事な人達に不安を感じさせないための忠告。

 その忠告から考えたノゾムは、下手に取り繕うよりも、自分の心をストレートに言葉を口にする方が、余裕が持てると思ったのだ。

 だがアイリスディーナにとって、ノゾムの素直で真摯な言葉は、今まで社交界で受けてきた万の賛美よりも甘美で、心躍る魔法の言葉だった。


「……そっか。ふふ」


 不満一杯だった胸の内が、一瞬で歓喜に満たされる。

 気が付けば、周りの視線は全く気にならなくなっていた。

 アイリスディーナはコロコロと瞬く間に変わる自分の心に驚きながらも、その驚きを上回る歓喜に喜んでいた。

 その時、一際荘厳な音楽が始まった。

 よく見ると、パーティー会場の集まっていた数多の男女たちが、手を取りあって大広間の中央に集まり始めている。

 ダンスが始まったのだ。


「始まったな」


「あ……」


 クルリと振り返ったアイリスディーナが、挑戦的な笑みを浮かべる。


「ノゾム。準備はいいか?」


「ええっと……」


 ん、ん! 喉の調子を整えながら、ノゾムもまたアイリスディーナと向き合う。

 数日前にフランシルト邸で行った練習を思い出しながら、片手を胸に当て、そっと手を差し出す。


「レディ、私と踊って頂けますか?」


「ええ、喜んで……」


 しっとりとした美声に胸躍る歓喜を乗せながら、アイリスディーナは緊張でちょっと震えているノゾムの手に、優雅に自分の手を重ねる。

 そして二人は、流れるようにダンス会場へ躍り出て行った。

 純白のドレスが舞い、壮麗な音楽に合わせて二人は踊り始める。

 自然とタイミングを合わせて踏み出した足を起点に、寄り添うノゾムとアイリスディーナの体が、綺麗な曲線を描く。

 そっと添えられた手に互いに促されるようにステップを刻みながら、音楽に合わせて息の合ったツイストを披露する。


「なんと……」


「まさか……」


 基本的なステップだが、その様子が思った以上に見事だったのか、二人を見ていた要人や令嬢たちから感嘆の息が漏れる。

 貴族令嬢のアイリスディーナはともかく、一介の平民であるノゾムがこれほど見事なステップを披露したことが、彼らの予想外だったようだ。

 元々ノゾムは武術に精通しているだけに、背筋はキチンと伸びており、姿勢はとても綺麗である。

さらに二人の阿吽の呼吸も相まって、その動きは一体感に満ちていた。

 外野が目を見張る一方、ノゾムとアイリスディーナの意識からは既に要人たちの存在は消えていた。

 二人の目に映るのは、互いのパートナーのみ。

 重なり合った手から伝わる熱と、胸から湧き上がる想いに促されるままに、ステップを刻み続ける。

 何度目かのツイストに合わせて体を入れ替えて背中合わせになったかと思えば、向き直る勢いのままにノゾムが手を上げ、その手に促されるように、アイリスディーナが一回転のターンを魅せる。

 さらにノゾムとアイリスディーナはサイドに流れる勢いのまま手を放し、二人揃ってくるりとスポットターンを決めた。

 再び向かい合って再び手を取り合ったノゾムとアイリスディーナに、笑みが零れる。


「そういえば、借りを返してもらうと言っていたね」


 踊りながらアイリスディーナは唐突にそんなセリフをノゾムに告げた。

 一瞬驚いたような顔をしたノゾムだが、すぐに笑顔で答える。


「……いいよ。俺は何をすればいい?」


 自分から借りを返してもらうと言ったアイリスディーナだが、いざ何をして貰おうかと考えると、上手く言葉が出てこない。

 彼女の脳裏に一瞬過ぎったのは、同じようにノゾムに魅かれている同級生。蒼穹のドレスを身にまとったシーナの姿だった。

 アイリスディーナは、シーナがノゾムに行った血約の儀の意味を知っている。その儀式が彼女にもたらす影響も、およそ想像がついていた。

 そして、今日の模擬戦で明らかに不調であったシーナの姿を見て、その予感はほぼ確信となっている。

 それは同時に、シーナが自分の夢を捨ててまで、ノゾムに尽くそうと決めた事に他ならない。

 そんなシーナの一途さが、アイリスディーナの心に影を落とす。


「……アイリス?」


 表情に影が差したアイリスディーナに、ノゾムが心配そうに声を掛けてくる。

 間近で見つめてくる、愛しい男性。それだけで、アイリスディーナの胸はトクン、トクンと高鳴り、同時に締め付けるような切なさに襲われる。

“もっと傍に……”という願望と、“私なんかが……”という後ろめたさがせめぎ合い、鈍痛となって再びアイリスディーナの心をかき乱す。

 それでも、彼女は自分の本心をノゾムに知られるわけにはいかない。知られたくなかった。

 溢れそうになる涙を堪え、表情を取り繕いながら、アイリスディーナは、おもむろに口を開いた。


「鈴、鈴が欲しい。ノゾムが作った鈴が……」


「俺が作った鈴?」


「ソミアにはあげていただろ? 私が貰えないのはおかしくないか?」


 アイリスディーナが欲したのは、ノゾムが妹の誕生日に送った、彼お手製の鈴だった。

 決して高価でもなければ、これといった見事な装飾が施されたわけでもない、普通の鈴。

 だが、アイリスディーナは覚えている。

 ノゾムから貰った鈴を見ている時の妹は、とても嬉しそうな表情を浮かべながら、鈴の送り主を思い出していることを。

 そして、そんな贈り物をもらえた妹が、たまらなく羨ましかったことも。


「分かった。ちゃんと作っておくよ」


「よかった。約束だからな?」


「もちろん」


 アイリスディーナの依頼を了承したノゾムに笑みを返しながら、彼女は自分の胸の痛みが鈍くなっていくのを感じた。

 同時に、ノゾムの存在がとても遠くなっていく。


“これでいい。これだけで十分。私は、ソミアのように素直でもなければ、シーナ君のように純粋でもない。それでも、このくらいは許されるよな……”


 ノゾムの隣にいるべきは自分ではないと自分自身に言い聞かせながら、アイリスディーナは己の心を凍らせていく。

 それでも、表情を取り繕うのは慣れていると、アイリスディーナは笑顔を崩さない。

 そんな彼女の笑顔は、どこからどう見ても、本心からノゾムがくれるであろう贈り物を喜んでいるようにしか見えなかった。


「……アイリス、どうしてそんな顔しているんだ?」


「……え?」


 だが、そんな彼女の仮面は、重苦しいノゾムの一言で簡単に打ち砕かれた。


「なんだか、泣きそうな顔してる……」


 ノゾムは何を言っているんだろうか? 自分は泣きそうな顔なんてしていない。

 そう自分に言い聞かせるが、見つめてくるノゾムの瞳には、これ以上なほど憂いに満ちている。


「…………」


「いったい何が……っ?」


 仮面の笑みを見破られたという驚きと、本当の自分を見てくれる嬉しさで沸き立つ熱。

 一方で、想い人に卑しい本心を見破られたくないという恐怖が、アイリスディーナの胸の奥で激しく入り乱れる。


「大丈夫……」


「大丈夫って、そんな感じじゃあ……」


 先程まで響いていた荘厳で軽快な音楽は、いつの間にか流麗で落ち着いたテンポに変わっている。

 穏やかな音楽に合わせて体を揺らしながらも、アイリスディーナはスッとノゾムに身を寄せ、その胸板に顔を埋めた。


「大丈夫、大丈夫だから。今は、このまま何も言わずに一緒に踊って……お願い」


 敗北感と後ろめたさとに苛まれ、胸に走る痛みを堪えるアイリスディーナは、周囲から隠れるように、すすり泣く事しか出来なかった。

 一方のノゾムは何が何だか分からないといった様子で、縋ってくるアイリスディーナをただ受け止める事しか出来なかった。

 静かな沈黙が二人の周りに満ちる。

 アイリスディーナの心に何があったのか、ノゾムは全く分からない。

 それでも、このまま彼女を放っておくことは彼には出来なかった。

 こんな悲しい顔をさせたくない。その思いのまま、ノゾムは口を開こうとする。


「アイリス、俺は……っ!?」


 その時、ノゾムの背筋に猛烈な悪寒が走った。

 あの白龍アゼルをも上回る、今まで感じてきたどんな存在よりも巨大な存在感。

 まるで氷原に放り込まれたような冷気を伴った気配が、すぐ近くまで来ている。

 ノゾムの視線が、パーティー会場の入り口に向けられる。


「ノゾム?」


 ノゾムの異変に気付いたアイリスディーナが、怪訝な顔を浮かべ、ノゾムの視線を追う。

 気がつけば流れていた音楽は止まり、パーティーに参加していたすべての人間が、その存在に釘付けになっていた。


「ああ、すまないな。驚かせるつもりはなかったんだ」


 現れたのは、真紅のドレスを身に纏った、銀髪の美女。

 溢れんばかりの王気と凍り付くような美貌を持ち、サラサラと流れる銀髪が、魔力灯の光を浴びてダイヤモンドダストのように輝いている。


「初めまして、になるかな? 私はヴィトーラ・ルタラーク・ダット・ウアジャルト。ディザート皇国の領主の一人だ」


 あらゆる命を惹きつけずにはいられない美声と、血を思わせる真紅の瞳で、眼前の存在全てを睥睨しながら、かの吸血鬼の姫は己の名を告げた。


ストックはここまでです。

次節以降については活動報告で随時報告していきます。

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