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第8章第3節

お待たせして申し訳ありません! ようやく更新できました!

 シーナは自室の机で、その手に持った水晶をじっと眺めていた。

 卓上に置かれたランプの光が、金の耳飾りを抱いた水晶を照らしている。

 ミカエル。ティアマットを封印しようとこの地へ訪れた、古き白龍の魂。

 シーナは目を瞑ると、己の魔力を水晶へ流し始めた。 


「答えて。貴方は今、彼をどうするつもりなのか……」


 シーナはミカエルへのパスを繋ぎ、水晶に語り掛ける。

 しかし、ミカエルは相変わらず何も語らず、沈黙したままランプの鈍い光を照り返すのみ。

 しばしの間、シーナは魔力路を繋ぎ続ける。

 ミカエルは相変わらず、シーナの声に返答する様子はない。

しかし、彼女はミカエルの様子が、二週間前とは違うように感じていた。

 それはまるで、水面にさざ波が立つような感覚。

 深淵と停滞が漂う闇の中を、わずかに風が凪いだように思えた。


「もしかして、迷っているのですか?」


“…………”


 沈黙を続けるミカエルの精神にさらに接触しようと、シーナは魔力を高める。

 だが、彼女の精神がより深くミカエルとつながる前に、後ろから突然ミムルが飛びついてきた。


「シーナ、なにしているの!?」


「きゃあ!」


 唐突に背中に走った衝撃に、シーナが手に持っていたミカエルが、手からスルリとこぼれ落ちた。

 水晶が床にぶつかりそうになり、シーナは慌てて手を伸ばして水晶をキャッチする。

 幸い、水晶は床に激突することはなく、しっかりとシーナの手の中に収まった。


「ミムル、危ないわよ……って」


 ほっと息を吐いたシーナだが、突然ぶつかってきたミムルを咎めようと、目を細めて後ろを振り向く。

そして、目に飛び込んできたミムルの姿を見て、シーナは思わず目を見開いた。


「何、その格好」


「ん? 新しい下着なんだけど、似合う?」


 腰に手を当て、艶めかしいポーズを取るミムル。

だが、彼女が身につけている下着は、下着としての機能があるのかどうかも怪しいほど布地の面積がなかった。

 胸も股間も申し訳程度しか隠れておらず、ちょっとした拍子に見えてはいけないものが見えそうである。

 あまりにも大胆すぎる親友の服装に、シーナは思わず頭痛を感じてこめかみを押さえた。


「似合うというより、破廉恥ね。なんでまたそんな紐にしか見えない下着を選んだのよ」


「トムの為に決まっているじゃん! これで迫れば、彼もイ、チ、コ、ロにゃん!」


 どうやらトムを悩殺するつもりで、この紐下着を購入したらしい。

わざわざ言葉尻を釣り上げる辺りに、シーナは妙なあざとさを感じていた。

 

「トムの性格を考えると、むしろ引くと思うけれど……。恥ずかしくないの?」


「何言っているの? 女は度胸! 旦那の三歩後ろを歩くなんて、私のガラじゃないのよ!」


 胸を張って宣言するミムルだが、先ほどまで真面目な考えを巡らせていたシーナとしては、今一彼女のテンションに付いていけない。

 ミムルが紐下着しか身に着けていないことも、彼女の気力を削ぐ要因となっている。

 ついでにまだ結婚していないにもかかわらず、トムを旦那と呼んでいたが、シーナは深く追及はしなかった。


「そう。とにかく、トムに迫るなら、あまり周りに迷惑にならないようにしなさい」


 溜息を吐きながら、シーナはミムルを放置して、再びミカエルとの会話を試みる。

 相変わらずミカエルからの返答はないが、それでも彼女は水晶とのパスを繋ぎ続けていた。

 一方、ノリの悪いシーナの姿に、ミムルは不満そうに口を尖らせる。

だが、次の瞬間、ニンマリと笑みを浮かべて彼女の後ろからしなだれかかってきた。


「シーナだってその気になればノゾム君をイチコロにできるんじゃない? せっかく綺麗な体なんだから、もっと有効活用すべきだよ」


「ちょ! 何するのよ!」


 シーナの背中から抱き付いて気ミムルは両手をスルリとシーナの脇の下に滑り込ませると、彼女の胸を持ち上げるように包み込んだ。


「う~ん、ちょっと控えめだけど、形は文句なし。おまけに……」


「ひゃっ! こ、こら! やめなさい!」


 さらに、ミムルは滑り込ませた手でワサワサとシーナの胸を撫で始める。

 シーナの体に電流が走ったようにピクンと震えた。


「感度も抜群。こりゃ弄る側はたまりませんな」


 調子に乗ったミムルは、シーナのシャツの中に手を入れ、直接愛撫し始めた。

 

「あっ。んっ! この、いい、かげん、に……」


 これには流石にシーナも怒り始める。

 いい加減、実力行使でお仕置きをしてやろうと手を上げるが……。


「シーナ、想像してみなよ。もしこの手がノゾム君だったら……」


「ふわっ!」


 ところが、ミムルがノゾムの名をシーナの耳元で呟いた瞬間、彼女の全身に雷が落ちたように一際大きく跳ねた。

 さらに続いて一瞬シーナの体から力が抜けたかと思うと、彼女の全身は石のように硬直し、ビクッ、ビクッと先ほど縒りも激しい震えに襲われ始めた。

 先程までの怒りに震える様とは明らかに違う、艶めかしい身震いに、彼女の胸を揉んでいるミムルの手に力が入る。


「んっ! っ~~~~~!」


 ミムルの手が動く度に、シーナの口からえも言われぬ嬌声が漏れる。

 よく見ると、シーナの特徴的な長い耳は真っ赤に染まっており、白い首筋からはムワッと強力な色香が漂い始める。

 彼女は明らかに快感を覚えていた。

 それでも、シーナは全身に走る快感と羞恥の間で悶えながらも、唇をかんで必死に声を押し殺そうとしている。


「やっべ、このエルフ、超可愛いんですけど……」


 からかうだけのつもりだったのに、ミムルの中で変なスイッチが入った。

 興奮した様子のミムルがこのままシーナを弄り倒してしまおうかと思ったその時、窓ガラスがコンコンと叩かれ、ガラッと開かれた。


「夜分遅くにすまんな。お嬢さん、ちょっと話がって……ふぉ!」


「え?」


 窓から顔を覗かせたのは、ゾンネだった。

 予想外の事態に思わず硬直し、言葉を失う山猫少女と老人。

 端から見れば、シーナとミムルは自室で百合の花を咲かせている女学生。ゾンネに至っては、女子寮に不法侵入してきた不審者である。

しばしの沈黙が両者の間に流れた後、


「ヴェリ~~グッド!!」


「天罰覿面!」


「あじゃぱぁあ!」


 当然の報復とばかりに、紐下着姿のまま跳びかかったミムルの拳が、ゾンネの腹を深々と抉った。

 前かがみに崩れ落ちたゾンネの体は、窓枠を乗り越え、部屋の床に屍のごとく倒れこむ。


「まったく、こんな夜に女性の部屋に押し掛けるなんて、なんて非常識な色欲龍なのかしら……」


 腕を組んで怒り心頭のミムルだが、今の彼女が身に着けている衣服は紐下着のみ。

 さらに言うなら、ついさっきまで劣情に駆られていたのは彼女も同じなので、説得力は皆無である。

 

「シーナ、悪は滅んだから……あれ? なんで拳を握りしめてるの?」


 そして当然ながら、彼女の行いのツケも、彼女自身に帰ることになった。

 シーナの白魚を思わせる手が振り上げられ、ほっそりとした外見からは想像も出来ないほどの勢いで振り抜かれる。


「ミムルの……バカアアアアアアア!」


「ギニァアアアアア!」


 ミムルの頬を捉えたシーナの手がズビシッ! と芯に響くような音を鳴らし、ミムルの体は綺麗な三回転半捻りを加えながら、窓の外から飛び出していった。

 ミムルを窓の外へ強制的に投棄したシーナは、空いていた窓をピシャリと閉めると、荒々しい手つきでカーテンを閉めた。

 ハアハアと乱れた息を整え、床に崩れ落ちたゾンネに視線を向ける。

 

「それで、何の御用ですか?」


「い、いやなに、エルフのお嬢さんとミカエルに少し用があってのう……」


 腹部の鈍痛に悶えながらゾンネが視線を上げると、そこにいたのは怒気を全身から滲ませ、怒髪天を突いたエルフの少女。

ブリザードもかくやと思えるほど冷たい瞳の奥に、あのアビスグリーフですら怯えて腰が砕けそうな怒気を滲ませていた。


「こんな時間に態々来たということは、それなりに重要な要件ということですよね?」


「う、うむ……」


「分かりました。お茶を用意しますので、座って待っていて下さい」


 シーナは踵を返すと、テキパキとお茶の準備を始める。

その背中は“これ以上追及するな!”という無言の圧力を放っていた。

 さすがのゾンネも今のシーナにちょっかいを出す勇気はなかったのか、おとなしく近くの椅子に座って、彼女がお茶を入れ終わるのを待つ。

 数分後、ゾンネは手渡されたお茶をゆっくりと啜ると、簡潔に要件を述べ始めた。


「しばらくの間、小僧にミカエルを預けてくれぬか?」


「彼を、ノゾム君に?」


 ノゾムとミカエル。両者の名前が出たことに、シーナが怪訝な表情を浮かべる。


「小僧は今、ティアマットと同調した影響で、徐々に奴の過去を垣間見始めておる。

小僧もティアマットの過去が気になるようでの。ワシが話してもよいが、当事者から聞く方が良いと考えたのじゃが……」


 どうやらゾンネはミカエルの口から直接ティアマットの過去を伝えさせようと考えているらしい。

 ゾンネの言葉を聞いたシーナの表情が、雨天の空のように曇る。


「彼は、未だに何も……」


「そうか……」


 未だに沈黙を続けるミカエル。

 その事を聞かされたゾンネもまた、落胆したように溜息を吐いた。


「怒りや憎しみを乗り越えようとする小僧達の姿を見た今なら、少しは変わるかと思ったのじゃが……」


 アゼル暴走の責任、そしてティアマット封印の為に、ミカエルはノゾム達の元に身を寄せている。

だがゾンネとしては、今のノゾム達の行動を見ることで、絶望と諦観に縛られたミカエルが少しでも変わってくれることを期待していたのかもしれない。


「ですが、ミカエル殿は少し、迷いを抱えているようにも感じました。あくまで、私の主観でしかありませんが……」


「そう、か……」


 ゾンネは喜哀入り混じった複雑な笑みを浮かべる。

シーナにはその顔が、積み重ねた年月以上に弱々しく見えた。


「ノゾム君の訓練は捗っていないのですか?」


 今度はシーナが老人に問いをぶつけてきた。内容はノゾムの訓練の進捗状況。

 訓練を始めてから目に見えて消耗しているノゾムの様子を心配しての事だった。


「訓練自体は良くもないが、悪くもない。問題は小僧の焦り具合じゃ。お嬢さんも知っておろう?」


 ノゾムが自身に課している苛烈な鍛錬。その理由を知っているだけに、シーナもゾンネの言葉に頷いた。


「ワシら龍の力は、精霊の力。しかし、小僧は龍殺しになったにもかかわらず、精霊を感知できる気配すら全くない。どこまでも人間のままじゃ。

 異能の方も、完全に制御しているとはお世辞にも言えん。封じることはできても制御はできておらん状態じゃ」


 精霊の王族の力を取り込んだ龍殺しは、程度の差はあれ、精霊との対話が可能になる。

 しかし、ノゾムは龍殺しになったにもかかわらず、どこまでも人間のままだった。

 異能の方も御しているとはお世辞にも言えず、ティアマットの力を封じることは出来ても、完全に制御は出来ていない状態。

 異能と精霊魔法。どちらも一朝一夕に習得できるものではない。

 それでも何とかしなければならないとノゾムが焦燥を感じているのは、シーナも十分に理解していた。


「異能の制御と精霊を感知できないこと、この二つが問題なのですね?」


「どちらかでも解決できれば、突破口となるかもしれんのじゃが……」


 ゾンネの言葉を受け、シーナは考え込むように口元に手を当てる。

 人間であるノゾムでは、周囲に存在する精霊の感知すら困難。しかし、彼は自分が取り込んだティアマットの力を使ったことはある。

 実際、シーナはノゾムがティアマットの源素を使う光景を何度か目にしている。

 なら、今のノゾムに足りないものも自然と見えてくる。


「そうすればノゾム君も……。でも……」


 やや戸惑いを含んだ表情を浮かべつつも、シーナは思考を巡らせていく。

 その様子を、ゾンネは黙って見守っていた。

 

「……分かりました。お爺さん、精霊魔法の件、私に預けてくれませんか?」


「ふむ、何か考えがあるようじゃな。大方何をしようとしているのかは予想がつくが、ワシよりもお嬢さんの方が適任じゃろう。よろしく頼むわい」


 シーナの言葉に、ゾンネは一瞬目を細めるが、すぐに何かを悟ったように破顔した。

 そのままゾンネは立ち上がると、窓を開けて縁に足を掛ける。


「あ、あの。ミカエル殿は……」


「お嬢さんから小僧に渡しておいとくれ。

 明日は小僧の鍛練を休みにしておくから、小僧に何かするつもりならその時にしておくとよいじゃろう」


 その時、なぜかシーナの頬に朱が差した。

 ゾンネはそんなシーナの様子に笑みを浮かべる。


「そうじゃ、お嬢さんが考えていることなんじゃが、もしかして……」


「そうよね、他に方法はないわよね。でも、でも……」


 ゾンネがふと振り返ると、シーナは腕を組み、口元に手を当てながらブツブツと考えに耽っていた。

 一体何を思い付いたのだろうか。

 考え込む彼女の頬は、先程ミムルにからかわれていた時よりも更に紅く、まるで茹蛸のようだった。


「やれやれ。小僧が羨ましいのう」


 ゾンネは自分の呼びかけに気付く様子のないシーナに呆れたように肩を竦ませると、そのまま窓の外へと消えていく。

 残されたのは、羞恥に悶える可愛いエルフが一人のみ。

 ちなみに、窓の外に投棄された山猫族の少女は、落下の衝撃で気絶したまま、結局朝になるまで放置されていたのだが、それは甚だ余談である。









 アルカザム北部に設けられた行政区。

 各国要人用の特別室の中は、まるで沼の底のようなどんよりとした空気に満ちていた。

 夜のとばりが下りたこの場所に、人の気配は全くない。

 その闇の中で、二人の人物が相対していた。


「それで、ご当主様を呼ぶことにしたの?」


「ええ。フランシルト家が抱えている“火種”の詳細が分かりました。

“星影”にこちらの手勢を潰されてから後手に回ってしまいましたが、情報が集まった以上、そろそろ動く時です」 


 メクリアと屍烏。

 妖艶な美女と、死臭を漂わせる痩男の組み合わせは、闇夜の中にあってもなお、その不気味さを際立たせていた。


「その為に“あっちの国”まで眷属を使って書簡を出すんだから、大事だよね~。ご当主様に知られたら大事だよ?」


「別にかまわないでしょう。彼としても、あのフランシルト家当主に一泡吹かせられるなら、憤慨しながらもこの話に乗るはずです」


「ご当主様、昔っからあのオジサン嫌いだったみたいだからね~。想い人も取られたみたいだし。それで、どうやって相手の牙城を崩すつもりだい?」


 ニタニタと不快な笑みを浮かべながら


「とりあえず、こちらの手を一つぶつけてみましょう」


「一つだけ? 下手に手加減するの、良くないんじゃない?」


「あのヴィクトルが、何の対策もしていないはずはないでしょう。下手に手札を切りすぎれば、こちらが息切れしてしまいます」


 動くといいつつ、あくまで慎重な手を使うとメクリアは明言する。

 それは彼女が、ヴィクトルを明確な脅威と認めているのに他ならない。

 身内の事については色々と暴走しがちな面があるが、まかりなりにもこのソルミナティ学園設立に関わった手腕は伊達ではないのだ。


「それより“彼”の様子はどうですか?」


 そして、話題は今ヴィクトルが注目している青年へと移る。

 ノゾム・バウンティス。

 武技園であのジハード・ラウンデルと壮絶な戦いを演じたことから、今ではあちこちの国から注目を浴び始めている刀術使い。

 だが、この青年について真に注目すべき点は、数百年ぶりに出現した“龍殺し”であるという点でもある。


「相変わらず、この二週間ほど白龍翁と一緒に森の中だよ。かの老人が傍にいるから、長時間監視し続けるのは難しいけどね~」


 彼が龍殺しであることを突き止めてから、メクリアは屍烏にノゾム・バウンティスの監視を命じていた。


「最近の彼、すごいよ~。あの力の制御限界時間を十秒も更新している。しかも、彼はそれがまだまだ不満みたいだ。もしかしたら、化けるかも……」


 白龍という強大な存在から師事を受けているノゾムの様子を、屍烏は笑みを浮かべて語る。

 屍烏の喜悦の混じった笑みに、メクリアは思わず目を見開く。


「興味があるようですね」


「少なくとも、メクリアちゃんよりはね~」


「計画に影響がない範囲にしなさい。

 彼は鍵となる人間。やっと巡ってきたチャンスなのです。分かっていますね……」


「分かっているって。そんな怖い顔しなくても大丈夫だよ~」


 ヒラヒラと手を振る屍烏に、メクリアは強い疑問の視線を向ける。


「どうでしょうか。貴方は昔から興味を惹かれる対象を目にすると、自制というものをドブに投げ捨てますからね」


「やれやれ、長い付き合いなのに信用ないね~。でもさ、それが俺の在り方なのよ。こればっかりは変えられないんだよね~」


「この前の仕事でも、必要もないのに対象以外を勝手に処分したそうですね」


「少し面白そうだったんだけどね~。正直期待はずれで、簡単に壊れちゃったよ」


 暖簾に腕押しといった屍烏の様子に、メクリアは溜息を吐く。


「もうすぐ機会が訪れます。それまで我慢なさい」


「はいは~い。心得ていますよ~」


 屍烏の言葉を信じたのか、それとも言っても無駄だと悟っているのか、メクリアは踵を返して、部屋を後にする。

 屍烏はドアの向こうに消えて行く彼女の背中を見送ると、傍のカーテンをまくり、閉まっていた窓を思いっきり開いた。

 冬の冷たい風が、窓から一斉に室内に雪崩れ込む。

全身に当たる風を感じながら、彼は両手を上げた。黒翼を思わせる衣装が、吹きすさぶ風にはためく。


 

「そう、分かっているさ……」

 

 先ほどまでのふざけた軽い口調とは違う、重みを感じさせる声。

 屍烏はそのまま勢いよく窓の外へと飛び出すと、新月の闇へと消えて行った。

 






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うんうん。サイコーやな
[一言] 個人的にリサ大好きなのでリサとくっついてほしい
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