地獄の扉
死体から皆が視線を逸らす。
同時に現実からも目を逸らした。
「おい、どうせドッキリだろ?
はやく止めようぜ」
一人の男が声を上げた。
女達はまだ固まったまま動かない。
俺達三人も、今までの様な余裕はなくなってしまった。
自分でも今までどうしてあんなに余裕があったのかが不思議だ。
多分俺達が一番現実逃避をしていた。
行動する事で冷静を装って、自分で自分を紛らわしていただけだったのだ。
でも現実逃避はもうできない。
――――――――――俺達はこのゲームが現実だと知ってしまったのだ。
死体はまだ放置したままだ。
呼吸と脈を確認して以来誰も振れていない。
そのまま放置していると、死体が腐って腐乱臭がしてくるだろう。
そんな事を考えていると、また画面に管理人が映った。
『一人目の死者が出ましたね。
死体は43の扉に入れてください。
入れると30秒後にロックがかかるのでお気をつけを』
笑いながら画面から消えた。
「どうする?」
「入れるしかないな」
愁に話かけられ、平静を装った。
俺が足、愁が頭を持って天使の扉の中から男を出す。
力の全く入っていない体はかなり重たい。
男二人でもやっとだ。
感触は土の様だった。
自分も死ねばそうなるのかと考えるだけでぞっとする。
俺は考えない事にした。
43の扉の中に男を入れる。
本当にこれでいいのかは分からなかったが、逃げたい一心で急いで男から離れた。
扉の外に出ると、すぐに扉を閉める。
すると天井から『30秒前・29・28・27……』とカウントをする声が聞こえた。
俺達はそれを最後まで聞き続けた。
『3・2・1』
1、と同時にロックがかかる。
「ちゃんと天国に行けるといいね」
「ああ……」
でも、男が行ったのは天国ではなかった。
落下音が部屋中に響きわたる。
「イヤーーーーー!!」
女達が悲鳴を上げる。
俺は耳をふさいだ。
『しかし、それ以外の扉に入ってしまうと……。
地獄へ落ちるでしょう』
管理人の言った通り、男は地獄へと落ちたのだ。
『タイムリミットものびた。
扉も一枚ロックされた。
一石二鳥、ですね?』