第83話 トカゲの楽園
「癌が小さくなって手術しました。術後も良好です」
ノアフォロの人からそう言われた。
ノアフォロは末期癌の患者の団体だ。
「それはなによりだ。長生きして奴隷として仕えるが良い」
「やはりあなたは神でしょう。優れた人を神と言いますが、あなたならそう言われても不思議はない」
俺が何の神かと問われれば連打の神と答えるだろう。
どんな障害も連打でぶち壊す。
それしか俺は知らない。
さて、次のダンジョンはどこにしよう。
トカゲの楽園にやってきた。
最初のザコがオオトカゲ。
炎を吐いたりはしない。
毒液も吐かない。
だが、Dランクだ。
一般人には手ごわいのだろう。
フィールドは砂浜。
オオトカゲが何頭も日向ぼっこしている。
ワニとどっちがでかいかな。
【トカゲの楽園ね。結構強敵】
【ちょっとどこがトカゲなのよ】
【ここのこれが普通サイズだ】
【ボウガンはちょっと狙いづらいんじゃね】
【そうだな。斜めだから、刺さらないかも】
【酸の水鉄砲と毒があるじゃないか】
【まあね】
弥衣達は酸の水鉄砲を選択した。
酸を掛けられオオトカゲがのたうち回る。
【地獄絵図。綺麗ではないな】
【仕方ない。ボウガンは地面を狙うようにはできてない】
【おっさん、見本を見せてよ】
「よし」
素材の観点から言ったら、キャメルクラッチが良いだろう。
俺はオオトカゲに飛び乗ると顎に腕を回し、思いっ切り持ち上げた。
ボキっという音がしてくびの骨が折れて一丁上がり。
オオトカゲの肉を食ってみたかったのだ。
「どんどんいくぜ。ボキボキボキっとな」
【いやこんなに簡単に折れるのか】
【おっさんなら造作もない】
【俺達がやるなら、酸の水鉄砲だな】
【ロープで口をグルグル巻きにして脳天にナイフの一撃とかできないかな】
【やってみろよ】
【ワニでもそうだが、口をグルグル巻きは度胸がいるぞ】
討伐は順調に進んだ。
ボス部屋の扉の前まで簡単に進めた。
まあ序盤だからな。
ボスは俗称オオオオトカゲ。
ギガントリザードという名前があるらしいが、オオトカゲのでかいのだから、オオオオトカゲ。
まあいいや。
俺は食材にしたかったのでキャメルクラッチ。
簡単に首をへし折った。
ダンジョンから出ると、子連れの女が抱きついてきた。
弥衣の目が冷ややかだ。
【おっ、修羅場】
【次の言葉はあなたの子供よかな】
「どちら様?」
「やだ忘れたの。佐代子よ」
「あー、さよちゃんか。弥衣、こちら昔、近所にいた佐代子さん」
【近所の知り合いか】
【おっさんとの年齢差を考えると、付き合っていたとは考えにくい】
【いま若いけど】
【若さ吸い取ったからな】
「いつまで抱き着いているの」
弥衣が鬼の形相だ。
【やっぱり修羅場だ】
【ヤエちゃんより年齢的にはカップルになる可能性がある】
【ない! 絶対にない!】
【ヤエちゃん降臨かな】
「ごめんなさい。懐かしかったのよ。よく遊んでもらったから。この子は知代子。ほら挨拶して」
知代子ちゃんの年齢は幼稚園児ぐらいだ。
知代子ちゃんは佐代子さんの後ろに隠れた。
そして、何も言わないでこっちをじっと見てる。
「ごめんなさい。人見知りなの」
「別にいいさ」
「お願いダンジョンの中で匿って」
「別に良いけど、ダンジョンの中は危険だぞ」
「安心できる所がないのよ」
「それなら、コボルトとケットシー達が暮らすマンションはどうだ」
「そこは安全なの」
「まあな。やつら気が良い奴ばっかりだぞ」
「じゃあ、お願い」
「キナコとモチ、案内してやれ」
知代子ちゃんは突然モチに抱きついた。
珍しくモチが動揺してる。
「モチ、おんぶしてやれ」
「はいにゃ」
知代子ちゃんはモチに背負われて満足そうだ。
さて、トカゲの肉はどんな味かな。
トカゲの尻尾を輪切りにして、網で焼く。
うほっ、油が垂れた匂いが、良い匂いだ。
醤油を少し垂らして、かぶりついた。
油が乗った鶏肉だな。
癖もほとんどなくて美味しい。
張り切っている弥衣達には悪いが、キャメルクラッチでいける所は全てそれでいきたい。
美味しい肉は正義だなと思う。
佐代子さんの所にもおすそ分けしてやろう。




