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第38話 ゴミ拾い

「助けてほしいにゃん」


 ケットシーの一人からそう言われた。


「俺に出来ることならな」

「ヘルパーで行った先のお爺さんが原因不明にゃん」


 ええと、治癒魔法は寄生している何人かが使えるから俺も使える。

 ただし、もうそんなことはしてるんだよな。

 まあいいか。

 行ってみるとするか。


 行った先は大邸宅だった。


 場違い感が鼻肌(はなはだ)しい。

 なんか字が違う気がするがまあ良いだろう。


「こんちは」


 声を掛けて入る。

 そしてお爺さんが寝てる部屋に入った。

 どっかで見た人だな。

 だけど思い出せない。

 まあ良いか。


「死相が出ているな」

「お前さんそれを言いに来たのか。もう帰れ。腐っても、この(わらび)権蔵(ごんぞう)見世物になるつもりはない」


 お爺さんが力のこもってない声でそう言った。


「治せるか見てやる。鑑定スキル発動」


 分かったぞ、これは呪いだ。

 じゃあ話は簡単だ。

 寄生して解呪すれば良い。


「無駄だ。やめておけ」

「どうだい爺さん、もし治ったら一番大事な物をくれないか」

「面白い、いいだろ。やってみろ」


「寄生スキル発動。よし呪いが緩んだ。解呪スキル発動」

「おお、体に力が戻って来る」

「ついでに治癒魔法と」

「ほう、すっかりよくなった」


 お爺さんはベッドから起き上がってゴルフスイングをしている。


「じゃあ、大事な物を貰おうか」

「わしの一番大事な物は、悪党の心得だ」

「何だって!」

「良く聞け。わしは長年政治の世界を生き抜いてきた。世間では悪党と呼ばれている。だが愛される悪党なのだ。悪事には愛がなくちゃならん。10悪いことをしたら、ひとつ良いことをする。それに言いたい事を我慢しちゃならん。言いたい事大いに言うべし。美学がないと始まらない。わしは悪ぶるのに命を賭けている」


 思い出した。

 こいつは悪の博物館と言われた政治家じゃないか。


「先生の元気な声がしたと思ったら、すっかり良くなられて。誤解のないように言っておきますが。先生はひとつ悪いことをしたら、10良いことをする人です」

「ああ、あんたの顔を見て尊敬されているなと思ったよ。なるほど良い物を貰った」

「がはは。人生に迷ったらわしの所に来るといい。こう見えて人生相談は得意だぞ」


「また来るよ」


 そう言って俺は屋敷を後にした。

 愛される悪党を目指す。

 何となく俺の進むべき方向が分かった気がする。


「何か嬉しそうね」


 帰ってきて、弥衣(やえ)にそう言われた。


「手始めに街の掃除だ。仕事してないコボルトとケットシーにやらせるぞ」


 俺は配信を始めた。


「おらおら、さぼってないでゴミ拾いしろ。仕事が終わったら、糞みたいな飯をたらふく食わせてやる」


【突然、ゴミ拾いなんかしちゃってどうしたんだ】

【良い人アピールじゃないか】

【いいじゃないか。やらない善よりやる偽善】

【お前らはゴミ拾いした事があるのか?】

【あるぜ】

【捨てているんじゃないか】


「おう、ゴミの日じゃないのに出している馬鹿がいるな。おいお前ら、臭いで誰が出したか突きとめてゴミ袋を玄関にぶちまけて来い」


【うわ、それやられたら、たまらんな】

【ゴミの日以外に出す奴が悪い】

【玄関にぶちまけて来いは草】

【ゴミ捨てる奴が悪】

【そうだ、綺麗にする人に文句を言ったら、ばちがあたる】


「吸い殻、落ちているな。本人特定できないかな」


「魔力視を使えば辿れるにゃん」


「じゃあ、そいつの家にぶちまけて来い。俺はいつでも喧嘩を買う。訴えたかったら裁判でも起こすが良い。こっちは証拠があるんだ負けるはずがない」


【うわ、開き直りが凄い】

【なんか悪事が変わったな】

【前はせこかったが、なんか言いたい事を言っている】

【ちょっと格好いいかも】

【悪党なんだけどね】


 ゴミ拾いが終わった。

 ゴミの痕跡が辿れる物は辿ってもれなく返した。


「犬の糞が落ちているな。こいつも特定して返してこい」

「はいにゃん」

「やりますわん」


【犬の糞返されたら、ちょっとだな】

【マナー違反は罰せられるべき】

【こういう悪事なら嬉しい。ほんとあれには困る】


 そして、ゴミ拾いが終わり、コボルトとケットシーの食事シーンになった。


「これが糞不味い飯だ。その名も和牛の焼肉。たかがキロ3000円の糞不味い飯だ」


【くそー、俺より良い物食ってやがる】

【俺の方が良い物食ってるよ】

【正直負けた】


「愚民共、残飯より不味い飯食ってるようじゃ。お里が知れるぞ」


【馬鹿だなCGだよ。本当は鳥胸肉】

【いやCGには見えないんだが】

【肉の焼ける音が堪らん】

【いい匂いがしてくるような気がした】


「お前ら頑張って働けよ。そうそう、俺らのゴミ拾いに参加したら、今日みたいに焼肉してやる」


【ちょっと釣られそうな俺がいる】

【底辺おっさんのイメージアップに協力したら負けだ】

【でも良いことなんだよな】

【ゴミを捨てた奴に仕返ししてるだけだがな】

【捨てる奴が悪い】


 俺の愛される悪党計画は始まったばかりだ。

 言いたいこと言って、やりたいようにやる。

 それが悪いことでもだ。


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