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《第四封の手紙》

《第四封の手紙》


ここは出入り口のない部屋だった。


いや、「部屋」というよりは一つの「空間」と呼ぶのが正しい。


床のタイルは祈祷室と同じ白黒の市松模様だが、こちらのタイルは水晶のように透き通っている。


空気には鉄錆や血の臭いは一切なく、床は果てしなく無限に広がっていた。


その空間に、円卓を囲むように四つの人影が立っていた。


アルファは黒い革張りの一人掛けソファに座り、足を組んでいた。ゆっくりと目を開け、眼鏡を直すと、両手を膝の上で重ねた。


そして、静かに他の三人を観察した。


……


ダニーは濃紺の長袖シャツを羽織り、中の白い丸首シャツを覗かせていた。下はジーンズだ。


彼はソファの男に見覚えがなく、うつむき加減で時折視線を彷徨わせていた。不安げに手元の本を強く握りしめ、静かに立っている。


……


チャーリーはクッションの山に埋もれていた。サイズの合わないノースリーブのタンクトップに短パン姿。全身が白で統一されている。


おもちゃで遊びながら、ベルに向かって言った。「やあ! 久しぶり! 最近遊んでくれないから探してたんだよ。あ、かくれんぼ? なら僕の勝ちだね! やったー!」


他の二人には全く興味がないようだ。


……


ベルはフード付きのデニムジャケットを片方の肩からずらし、中の白いタンクトップと黒の革パンを覗かせていた。二人掛けのソファに横柄に寝そべり、長い脚を肘掛けに放り出している。


彼は片手でナイフを弄び、もう片方の手で頭を支えながら、クッションの中のチャーリーを斜めに見下ろした。


「知るかよ! あっちの面無し眼鏡に聞け! それとな!」彼はアルファを睨みつけ、怒鳴った。「最後に勝つのは俺様だ!」


アルファは冷ややかに全員を見渡した。「静かに見ていろ」彼が顎で示すと、四人の中央にいつの間にか映像が浮かび上がった。


一人の修道女と、その背後にいる子供たち。修道女は満面の笑みで一人の子供の手を引き、子供も無邪気に笑っている。


映像が急速に流れ、突然止まった。


修道女が楽しそうに子供たちを呼び戻す。「みんな、クッキーの時間よ!」子供たちは従順に自分の部屋へ戻り、座ってクッキーを食べ、眠りについた。


映像が静止した。強制的に、止められた。


「おい! 面無し眼鏡! 何しやがる? こんなクソ映像がなんだってんだ?」ベルがアルファを激しく睨みつけた。


ダニーも戸惑った表情で、「アルファ」と呼ばれた男に視線を向けた。


アルファは小さく笑った。「記憶にないか? これはの体の記憶だ。お前たちが知らない真実。なぜなら、俺だけが最初から最後まで隣で見物していたからな。お前が言った通りにな」彼はベルを見て再び冷笑した。


映像が再び流れ、また止まった。


子供が眠そうな目を擦りながら、修道女の裾を引いた。「どうしてみんな、いなくなっちゃったの?」


「養子に行ってお外でもっと幸せに暮らしているのよ」修道女は微笑んで答えた。


子供は頷いた。


映像がまた加速し、止まる。


「さあ、こっちへ。遊びの時間よ」修道女は慈愛に満ちた笑みを子供に向けた。


「うん」子供は小さく答え、ある部屋へと連れて行かれた。


ドアのプレートには「祈祷室」と書かれていた。


クッションの中にいたチャーリーが、突然頭を抱えて叫び出した。「嫌だ嫌だ嫌だ……!」


アルファは、静かに立っているダニーに視線を向け、冷たく命じた。「そのガキを黙らせろ」


ダニーは体を震わせ、歩み寄って膝をつくと、チャーリーを抱きしめてその視界を塞いだ。


チャーリーは泣き叫ぶのをやめ、目を閉じてクッションの中にぐったりと身を預けた。


「ちっ!」ベルはソファに横たわったまま、忌々しそうに鼻を鳴らした。「俺が一番目だ。あの女が俺の体を勝手に切り刻んで縫い合わせやがったからな。美学もクソもねえ。俺はあの女を殺すために生まれたんだ」


映像が再び動き出した。


子供が狂ったように笑いながら、ナイフで修道女を襲っていた。何度も、何度も突き刺す。


修道女は目を見開き、狂ったように叫んだ。「やめて! これは私の遊びよ! 私だけの遊びなのよ!」……そして、動かなくなった。


映像が止まった。


静かだったダニーが、驚愕の表情でアルファを見た。「僕が二番目だ。でも、どうして? お母さんはもう……」


「そうだ。お前の記憶はどこから来た? あるいは、最初から存在すらしていないかもな?」アルファは映像を見つめたまま、冷酷に笑った。


ダニーは狼狽した。「そんな、ありえない! じゃあ……あの本は?」


「お前の言う通りだ。あれは『お母さん』からもらったものだ。開いて見てみろ」アルファはそう答えた。


ダニーはさらに混乱した。「違う! そんなはずはない! 僕はあの子を守るために……チャーリーを守るために……」


「自分を守るためではなくか?」アルファが言葉を遮った。


ダニーは目を見開き、信じられないというようにうなだれた。涙がこぼれ落ち、呟いた。「最初から、僕には存在価値がなかったのか? ……」


彼は重苦しく目を閉じ、ゆっくりと消滅していった。


クッションの山には、丸まったチャーリーの姿だけが残った。


そして、アルファはポケットから一通の手紙を取り出した。


『どうしよう? どうしよう? お父さんとお母さんが地面に倒れて動かない!


床に血が溜まって、どんどん溢れてくる! 目が覚めたら手にナイフを握ってた!


僕なの? 僕がやったの? 違う! 違う! お父さんとお母さんは優しいから、僕も優しいんだ! 僕はこんなことしない! 優しい僕がこんなことするはずないんだ!


そうだ! 僕はチャーリーを守るためなんだ! お父さんとお母さんを救うためだったんだ! みんなのためなんだ!


だから僕は悪くない! 悪くない、悪くない、悪くない……』


ソファにいたベルが大笑いしながら立ち上がり、アルファを真っ直ぐに見据えた。「陰険野郎、何をしやがった? あいつはどうして消えたんだ?」


アルファは淡々と、嘲るように言った。「その本を見てみろ。ダニーがお前に『見ろ』と言っただろう?」


ベルは鼻を鳴らし、本を開いた。


そこには、一人の子供が全身切り裂かれた写真がびっしりと貼られていた。古い殴打の痕に新しいナイフの傷。まともな皮膚は一箇所も残っていない。


写真の下には、虐待の方法を嘲笑するような言葉が添えられていた。どのページも同じような光景、同じような言葉で埋め尽くされている。


「なんだよ、ダニーの野郎が一番目だったのか? あんな弱虫が?」彼は不満げに吐き捨てた。


アルファはそれを聞き、鼻で笑った。「弱虫? ダニーこそが一番厄介だったんだ。黙って最後まで見ていろ」


ベルは苛立ちながら最後の一ページをめくった。


そこでは配役が逆転していた。ソファの上には両親の遺体が置かれ、首元には一度切り裂かれ縫い合わされた跡がある。


中央に座った少年が二人の手を固く握りしめ、腹部は横に切り裂かれ、二人の内臓が引き出されて一つに結ばれていた。切り落とされた両足はソファの横の絨毯に投げ出され、鮮血はすでに暗赤色に変色している。


写真の中の三人は全員笑っていた。大人は無理やり笑わされていた。下手な縫合糸がはっきりと見て取れる。


写真の下には一行、こう書かれていた。


『お父さんとお母さんのいけない手は僕が預かるね。これでずっと優しくそばにいられるね』


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