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《第二封の手紙》

 《第二封の手紙》


 教会の裏庭。かつて子供たちが遊んだ場所。取り残された一足の子供靴に泥水が溜まり、静かに横たわっている。


 空気が抜けたゴムボールが、幼い日の面影を語っていた。


 雑草はすでに足首まで伸びている。男は悠然と草を踏みしめ、一本の古木へと向かった。古木の枝からは簡易的なブランコが吊るされていたが、今では蔦に覆われている。


 彼は幹に寄りかかり、散らかったおもちゃ箱から見つけ出した一通の手紙を取り出した。


 それはしわくちゃで、薄紅色の水滴の跡があった。濡れては乾き、乾いては濡れた跡だ。


『大きくなった僕へ。


 あ! 他の人がこの手紙を拾っても読んじゃダメだよ! 元に戻して。


 人の手紙を勝手に見ちゃいけないって、修道女様が言ってたもん!』


「俺は『他人』じゃない。これは俺のものだ」アルファは無表情に呟いた。


『僕は今でもベルと一緒に遊んでいるのかな?


 ベルはずっと僕のそばにいてくれる。だって、僕とお話ししてくれるのはベルだけだもん。


 みんなは一緒に遊んでくれるけど、お話ししてくれないからつまんない。だからベルとずっと遊びたい。


 ベルはたくさんおもちゃをくれるんだ。おもちゃ箱の中は全部ベルがくれたものだよ。


 ベルが大好き。


 修道女様も一緒にいるかな? 修道女様はいつも僕の体に絵を描いてくれる。一緒に遊んでるんだって。でも修道女様はいつも力いっぱい描くから、すごく痛いし、絵も下手っぴなんだ。


 だからベルがいつもその絵を飾り付けてくれるんだ。ベルの描く絵はとっても綺麗だよ。


 僕は修道女様のこと、嫌いじゃないよ。今もそうなのかな? 修道女様はたくさんクッキーを焼いてくれる。食べるといつも頭がふわふわして眠くなっちゃうけど、クッキーが一番大好き!


 今日起きたら、ベッドの横にまたおもちゃが増えてた。きっとベルがくれたんだ。


 みんなと一緒に遊ぶのが大好き。それに一番素敵なのは、今日は修道女様も一緒に遊んでくれたんだよ! これからはずっと、みんな一緒だね!


 あ! そうだ! これは僕だけの秘密だよ。数日前に修道女様と街へ買い物に行ったとき、すごく怖いお兄さんたちに会ったんだ。修道女様を連れて行って、僕のものを奪った。本当にひどい人たち!


 でも、ベルが出てきて助けてくれたんだ。


 そのお兄さんたち、次の日にはみんなと一緒に遊びに来てくれたんだよ! これからはずっと、みんな一緒だね!』


「……もう一緒には遊べないな」アルファの瞳に一瞬だけ哀しみが宿り、無表情なまま声を漏らした。


「だが、お前とベルは、永遠に一緒にいられる」冷酷な勝者の態度で、彼はそう告げた。


 男は曲がりくねった石畳の道を通って、礼拝堂へと向かった。


 彼は扉の前で足を止める。取っ手も鍵穴もない。そんなものがあれば、この扉の神聖で不可侵な美しさを損なってしまうからだ。


 彼は袖を捲り上げ、引き締まった腕を露わにした。そこにはかつてスミレが描かれていたであろう場所に、今では醜く歪んだ火傷のような痕跡が残っている。


 彼は、壁に埋め込まれたスミレの彫刻を迷わず押した。


 歯車が噛み合う音が響き、扉がゆっくりとせり上がる。彼は少し腰を屈め、中へと足を踏み入れた。




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