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悪役令嬢の侍女

作者: 渡しログ


 「なによこのスープ、変な匂いね」


 お嬢様は、そう仰られました。

 私はスープを下げようと歩み寄りました。

 お嬢様は、皿をお持ちになり、私の頭にスープをかけて下さりました。


 スープには毒が入っていたようです。

 私の肌は酷く爛れ、その日の夜に死にました。


 気が付くと、私はベッドの上。

 ご寝所のすぐ隣りの部屋。

 窓から差し込むのは朝陽でした。

 昨日のあれは夢だったのでしょうか?


 私は起きて、身なりを整えます。

 お側へ向かうと、お嬢様はまだお休みでした。

 静かにさがり、朝食の支度に向かいます。


 私はそこで見てしまいました。

 毒見を終えたスープに何かを流し込み、離れていく司祭様を。

 

 私は別のお皿を降ろし、お嬢様のスープを注ぎました。

 お嬢様の前へお運びすると、優雅に召し上がっておられました。

 

 それから幾日かした夜。

 お嬢様が、財務官様と口論なさっています。

 理由はわかりません。

 お嬢様は丁寧に罵詈雑言を並べ、美しく軽蔑しておられます。

 すると、財務官様は短刀を抜きました。

 寸でのところで、刃は私の背中を切り裂き、お嬢様は無事でした。


 私はその夜、死にました。



 私はまたベッドの上。

 どういうことでしょう?


 それより今はお仕えします。

 起きて、身なりを整えます。


 その日の夕方。

 見覚えがあります。

 昨日と同じです。死ぬ前と同じことをしています。


 このままでは、お嬢様は財務官様に絡まれ、嫌な思いをなされます。


 直前に財務官様は、王妃様とご歓談されていました。

 聞き耳をたてると、お話の内容は、お嬢様の御身に関わることでした。


 立ち去ろうとしたとき。

 王妃様の側近に咎められました。


 私はその場で、処刑されました。



 気付くと、同じ朝でした。


 お嬢様申し訳ありません。

 どうか、後ほどお叱りを賜らせてください。

 今朝は急いで王妃様の御前へ行き、事情をお伺いして参ります。


 王妃様を探していると、国王様と朝のご歓談をされておられました。

 お話の内容は、お嬢様の御身に関わることでした。


 私はまた、その場で、処刑されました。


 私はもう迷いません。

 お休みのところ申し訳ありません。

 御身に触れることを、どうかお許しください。


 お嬢様を揺すって起こし、上意をお伝えしました。

 声を荒げ、お怒りになりました。

 私はなんということを。

 お心を煩わせてしまいました。


 お嬢様は、懐の刀を抜きました。

 そして、私を刺し殺しました。


 薄れゆく意識のなかで、お嬢様のお姿を見ました。

 それは勇み凛々しく、側近達になにかを指示しておられるご様子でした。



 その後のことは良く分かりません。



 私は、小さなベッドで目が覚めました。

 カラダが上手く動かせません。


 横を見ると窓辺には、見知らぬ男性と女性の姿。

 外は騒がしく、金属を打ち鳴らす音や怒号。

 大砲の轟音まで響き渡り、小さなベッドが震えます。


 私は堪えきれず、泣き出してしまいました。

 どうしてでしょう?

 冷静なのに、泣いてしまう。


 女性が近づき、私を抱き上げました。

 そして窓辺へ。


 お城が燃えていました。

 煙は高々と舞い上がり、あちこちの尖塔が崩れていました。


 なんということでしょう。

 あの戦火の中にお嬢様が……


 お嬢様。

 御身の元へ参ります。

 叶うならば、いますぐに。



 お嬢様……


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どうぞ、よろしくお願いいたします。

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