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『無能』と追放された魔法使い、実は『力の天秤』を持つSランク級の逸材でした。~スキル禁止されたので『進化魔法』でSランク武具を手に入れます~  作者: さらん
第1章: 『無能』の烙印と『天秤』の覚醒

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第9話:王都からのスカウトと「権力」の影


Aランクパーティー『アルテミス』。

私たちがその銀色のプレートを手にしてから、一週間が経過した。


「……さすがに、Aランクの依頼クエストは内容が違いますね」


私は、ギルドホールの一番奥、AランクとSランク専用の掲示板の前で、ゴクリと唾を飲んだ。

• 『グリフォンの群れ 討伐(推奨人数10名以上)』

• 『王都へのS級機密物資 護衛(護衛対象:非公開)』

• 『“嘆きの廃城” 霊体調査およびアンデッドロードの浄化』


どれもこれも、カイトのパーティーにいた頃は夢のまた夢、B+ランクのミノタウロスが霞んで見えるほどの高難易度依頼ばかりだ。


「フン。やりがいはありそうね」


エララさんが、興味深そうに『グリフォン討伐』の依頼書を眺めている。


「アリアの『天秤』があれば、群れのリーダー格の力を奪ってガレンに回せる。……いけるわ」

「うむ。アンデッドロードというのも気になるな。物理が効きにくい相手こそ、俺の防御ヘイトとアリアの支援が活きる」


ガレンさんも、乗り気だ。


「二人とも、すっかりアリアのスキル頼りだな」


レオが呆れたように笑うが、その目も次の戦いに向けて輝いている。

私たち『アルテミス』は、Aランクになったことで、ようやく四人の力の「最適解」を見つけ出そうとしていた。


周囲の冒険者たちの視線も、以前とは全く違う。

賞賛、尊敬、そして……『天秤の魔女』と呼ばれるようになった私への、わずかな「畏怖」。


もう誰も、私たちを「Bランクから上がってきた新米」とは見ていなかった。

私たちが次の依頼を選定していると、ギルドの入り口がにわかに騒がしくなった。


屈強な冒険者たちが、慌てたように道を開けている。

入ってきたのは、場違いなほど豪奢な、白銀の甲冑をまとった一団だった。


先頭に立つ男は、腰に細身のレイピアを下げ、胸には王家の紋章――「金獅子」の刺繍が施されている。


(王都の……近衛騎士?)

その男は、酒場の喧騒など意にも介さず、まっすぐAランク掲示板の前にいる私たちに向かってきた。


「君たちか。パーティー『アルテミス』というのは」


男は、私たちを品定めするように一瞥し、最後に私の顔を見て、その動きを止めた。


「……そして、君が、噂の『天秤の魔女』アリア、だな?」

「は、はい。(魔女、は余計ですが……)」


私が頷くと、男は尊大な態度で、一枚の羊皮紙を突きつけてきた。


「私は、王国宮廷魔術師団・副団長補佐、マルクス伯爵である」

「は、はあ……」

「光栄に思うがいい。君たちの噂は、王都の、とある大貴族様の耳にまで届いている。……特に、君のスキル、『力の天秤アストラル・バランス』は、国家にとって非常に有益だと判断された」


マルクス伯爵は、有無を言わせぬ口調で続けた。


「よって、アリア。君を、王都宮廷魔術師団付きの魔術師として『スカウト』する。……いや、これは命令だ。パーティーを解散し、直ちに王都へ出頭せよ」

「「「「…………」」」」


空気が、凍った。

ガレンさんも、エララさんも、レオも、そして私も、あまりに一方的で、高圧的な「命令」に、言葉を失う。


「あの……」


私が口を開く。


「スカウト、というのは、私だけ、ですか?」

「当然だろう」


マルクスは、私以外の三人を侮蔑するように見下した。


「我々が必要としているのは、君の『ユニークスキル』だけだ。そこのタンクや剣士ごときは、騎士団にいくらでもいる。双剣使いなど、論外だ」


その言葉は、私たちの逆鱗に触れるのに十分すぎた。


「……おい、テメェ」


レオの双剣の柄に、ギリ、と力がこもる。


「今、なんつった?」

「レオ、待て」


レオを制したのは、ガレンさんだった。彼は、マルクス伯爵の前に、その巨体で立ちはだかった。


「……伯爵様、とやら。お言葉ですが、我々は冒険者パーティー『アルテミス』。王国の兵士ではありません。我々は、誰かの命令で動く駒ではない」

「ほう? この王家の紋章を前にして、逆らうと?」

「逆らうのではない。取引ビジネスの話をしている」


エララさんも、冷たく言い放った。


「私たち『アルテミス』は、四人で一つのパーティーよ。アリア一人を差し出すなど、ありえない。……どうしてもアリアの『力』が必要だというなら、私たち四人を『Aランク依頼』として、正式にギルドを通して雇用なさい」


マルクス伯爵の顔が、侮辱されたように歪んだ。


「……貴様ら、ただの冒険者の分際で、伯爵である私と『交渉』する気か! 身の程を知れ!」

「身の程を知らないのは、あんたの方だ」


レオが、もう我慢できないとばかりに前に出た。


「アリアの『天秤』が、なぜ今、これほど注目されているか分かるか? それは、ガレンさんの鉄壁の防御があり、エララさんの神速の剣があり、俺が敵を引き受けるからだ! アリアが、俺たちを『信頼』して、俺たちがアリアを『守る』からだ!」


レオは、私をかばうように立つ。


「アリア一人だけ連れて行って、お前ら騎士団に、アリアの力を100%引き出せるのか? ……無理だな。お前らみたいな、仲間を『道具』としか見ない奴らじゃ、絶対に」

「き、貴様ぁ……!」


レオの言葉は、かつてカイトに言われた言葉と重なり、マルクスのプライドを粉々にした。

私は、レオの隣に並び立ち、マルクス伯爵をまっすぐに見据えた。


「マルクス伯爵。お断りします」

「……なんだと?」

「私は、『アルテミス』の魔法使い、アリアです。仲間たちと離れて、あなた方にお仕えするつもりはありません。……それが、私たちの答えです」


ギルドホールが、再び静まり返る。

Aランクになったばかりの新米パーティーが、王家の紋章を掲げた伯爵の「命令」を、公衆の面前で、きっぱりと拒絶したのだ。


マルクス伯爵は、怒りにカタカタと震え、やがて、吐き捨てるように言った。


「……いいだろう。よくぞ言った、冒険者ども」


彼は、私たち四人を、蛇のような目で睨みつけた。


「この私、マルクス伯爵の誘いを断ったこと……王国に弓引くも同然ということを、後悔させてやる。……お前たちが、この街で、いや、この国で、二度とまともに冒険者活動ができなくしてやるからな。覚えておけ」


そう言い残し、彼は騎士たちを引き連れ、荒々しくギルドを去っていった。


「……やれやれ」


ガレンさんが、重いため息をついた。


「カイトの次は、伯爵様か。……随分と、厄介な敵を作っちまったな」


こうして、私たちの「伝説化」は、いきなり「権力者からの妨害」という、最悪のフェーズに突入してしまった。


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