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『無能』と追放された魔法使い、実は『力の天秤』を持つSランク級の逸材でした。~スキル禁止されたので『進化魔法』でSランク武具を手に入れます~  作者: さらん
第4章『王国の闇と古(いにしえ)の真実編』

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第68話:バグだらけの『神』と、生身の一撃


「アアアアアアアアアアッ!!!!」


カイトだったものが変貌した『破壊神』が、虚無の塔の天井を突き破り、咆哮した。


それは生物の声ではない。ノイズ混じりの、耳障りな電子音が、大音量で空間を震わせている。


全身が漆黒のポリゴンと、エラーコードの奔流で構成された巨体。

その大きさは50メートルを超え、背中からは世界を塗りつぶすような「虚無の翼」が広がっている。


『WARNING: WORLD DELETION IN PROGRESS... 5%...』

空中に浮かぶ赤い文字。

塔の外では、空がモザイク状に崩れ落ち、海が砂嵐ノイズとなって消え始めている。


「……本気かよ」


レオが、足場の端で踏ん張る。


「世界を……マジで消す気か!?」

「俺ハ……神ダ……!!」


巨人の顔――カイトの顔が歪んだ状態で張り付いている胸部から、壊れたスピーカーのような声が響く。


「気ニ食ワナイ世界ナド……イラナイ……! 全テ消シテ……最初カラ……ボクノ理想ノ世界ヲ……!!」

「……哀れだな」


ガレンさんが、巨大な盾を構え、その瞳に憐憫れんびんの色を宿した。


「思い通りにならないからリセット? ……ガキの遊びじゃねえんだぞ、人生これは」


ドォォォォンッ!!

カイトの腕が振り下ろされる。

その軌道上の空間が、黒く「欠損」する。触れれば即死、防御不能の『削除攻撃』。


「避けろッ!! 触れるな!!」


エララさんの指示で、全員が散開する。

直撃した塔の床が、音もなく四角く切り取られて消滅した。


「チッ、近寄れねえ! あの黒い霧に触れただけでアウトだ!」


レオが焦る。物理攻撃すら「データ削除」されてしまうため、刃が届かない。


「アリア! どうする!?」


私は、暴れまわるカイトを見上げた。

彼の胸の中心。ノイズの奥深くに、微かに光る「本体」が見える。


あの黒いカード――『終焉の鍵』が、カイトの魂を燃料にして、この暴走を引き起こしている。


(……止めなきゃ)

(殺すんじゃない。あの『システム』から、彼を引き剥がさないと)

私は、杖を強く握りしめた。


「皆さん! 私を、あの胸のコアまで運んでください!」

「あそこまで行けば、私の『進化魔法』で、あのふざけたリセット機能を強制停止クラッシュさせます!」

「……言うじゃねえか」


ガレンさんが、ニカッと笑った。


「あの『削除の嵐』の中を突っ切れってか? ……最高に痺れるオーダーだ!」

「行くぞ!」


Sランクパーティー『アルテミス』、最後の突撃。


「ウオオオオオッ!!」


ガレンさんが、先陣を切って飛び出した。


「『アルテミス・ハート・イグニス』――全開ッ!!」

盾が真っ赤に燃え上がる。ガレンさんは、カイトが放つ「黒い削除ビーム」に対し、自らの膨大な生命力を燃やして生成した「存在の炎」をぶつけた。


ジュウウウウウッ!!

「削除」と「再生」が拮抗し、火花が散る。


「ぐ、うぅぅぅッ!! 俺の『存在データ』が削れていく……! だが、通さねえッ!!」

「ガレン!」


その背後から、レオとエララさんが飛び出す。


「道は作る!」

「『双竜・螺旋撃』!!」


二人の斬撃が、カイトの振るう腕の関節(ポリゴンの継ぎ目)を正確に狙い撃つ。

ダメージは与えられない。だが、衝撃でわずかに軌道を逸らすことはできる!


「小賢シイイイイッ!!」


カイトが叫び、全方位に衝撃波を放とうとする。


「今だっ、アリア!!」

「はいッ!!」


私は、ガレンさんがこじ開けた、わずかな隙間を縫って飛んだ。

風魔法で加速し、カイトの巨体へと肉薄する。

周囲の空間がバグり、私の服や髪がノイズに侵食されそうになる。


(痛い……!)

データ上の痛みじゃない。魂が削れる痛み。

でも、止まらない。


私は、カイトの胸――本体が埋まっている場所の目の前に到達した。

そこには、半身がノイズに埋まり、白目を剥いて痙攣けいれんしているカイトがいた。


「……消エロ……消エロ……」

「カイト!」


私は叫んだ。


「こっちを見なさい!」

「……ア、リ、ア……?」


カイトの目が、虚ろに私を捉えた。


「ナンデ……? お前ハ……モブ(脇役)ダロ……? ナンデ……主役ボクニ……勝トウトスル……?」

「脇役なんかじゃありません!」


私は、杖を振りかぶった。

魔法じゃない。

Sランクの身体強化を乗せた、ただの物理的な、渾身の――


ゴッ!!!!

私は、杖でカイトの頭を、思い切りぶん殴った。


「いったぁぁぁッ!?」


カイトの目が覚め、涙目になる。


「な、なにすんだ!?」

「痛いでしょう!? それが『現実』です!」


私は、ひるんだカイトの胸に刺さっている『黒いカード』を、素手で掴んだ。


ジュッ!!

「あつっ!?」


カードから放たれる呪いが、私の手を焼く。

でも、離さない。


「こんなものに頼るから! あなたは、いつまで経っても『勇者』になれないのよ!」

「や、やめろ! それを抜いたら、俺の力が……管理者の権限が……!!」

「いらないそんなもの!!」


私の魔力が爆発する。

世界樹このこが力を貸してくれる。


『偽りの神』を否定し、『人間』に戻すための力。

「『進化魔法』――『神殺し(デウス・エクス・マキナ)』!!!!」


バキィィィンッ!!!!

私は、黒いカードをねじ切り、カイトの体から強引に引き抜いた。


「ア、アアアアアアアアアアッ!!!!」


カイトの絶叫と共に、黒い巨体が崩壊を始めた。

世界を覆っていたノイズが晴れ、赤い警告文字が砕け散る。


リセット機能、停止。

世界崩壊、キャンセル。


「……終わった」


巨体は光の粒子となって消え、私と、人間に戻ったカイトだけが、空中に放り出された。

私は、気絶したカイトの襟首を掴み、浮遊魔法でゆっくりと、塔の床へと降り立った。


スタッ。


「……ふぅ。乱暴な『治療』だったな」


ガレンさんが、ボロボロの盾を下ろして笑った。


「だが、効果は抜群だ」


床には、あの偉そうだった白いスーツも破け、薄汚れた姿で伸びているカイト。

もう、管理者でも、破壊神でもない。

ただの、情けない少年の姿。


「……勝ちですね」


私が呟くと、レオとエララさんが駆け寄ってきて、私を抱きしめた。


「やったな! アリア!」

「世界、守りきっちゃったわね」


窓の外。

バグっていた空が、元の美しい青色に戻っていく。

水平線の向こう、沈みかけていた太陽が、再び輝きを取り戻していた。


私たちは勝った。

ゲームの理不尽なルールに。

そして、自分たちの運命に。


Sランクパーティー『アルテミス』。

世界の果てでの最終決戦、完全勝利。


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