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『無能』と追放された魔法使い、実は『力の天秤』を持つSランク級の逸材でした。~スキル禁止されたので『進化魔法』でSランク武具を手に入れます~  作者: さらん
第4章『王国の闇と古(いにしえ)の真実編』

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第66話:虚無の塔と、歪んだ『再会』


大陸の西の果て。

そこは、物理法則が崩壊した場所だった。

足元の岩盤は唐突に途切れ、その先は、上も下もなく、ただ真っ白な霧――『虚無』が渦巻いている。


その虚無の中心に、重力を無視して浮いている一本の巨大な黒い塔。

陸地と塔を繋ぐのは、幅数メートルほどの、頼りない光の橋だけだ。


「……落ちたら、死ぬな」


レオが、光の橋の下、底のない霧を覗き込み、ごくりと喉を鳴らした。


「死ぬだけならマシね」


エララさんが呟く。


「あの霧に触れた瞬間、存在ごと消滅しそう」

「行きましょう」


私は、迷わず光の橋に足を乗せた。

私の『杖』が、この塔から発せられる微弱な信号コードを受信し、安全なルートをナビゲートしてくれている。


「カイトが待っています」


長い橋を渡りきり、塔の巨大な黒い扉の前に立つと、扉は音もなくスライドして開いた。


歓迎されている。あるいは、誘い込まれている。

塔の内部は、外観の古めかしさとは裏腹に、異様な空間だった。


壁も床も、継ぎ目のない白い素材でできており、空中に幾何学的な光のパネルが浮かんでいる。

松明も魔道具もないのに、影ができないほど明るい。


「……なんだここは」


ガレンさんが、周囲を見回す。


「古代遺跡……とも違う。まるで、別の文明の世界に迷い込んだみたいだ」

「上へ」


私は、直感に従って進んだ。

階段はない。中央にある円形の台座に乗ると、体がふわりと浮き上がり、高速で上昇を始めた。


10階、50階、100階……。

景色が光の帯となって流れていく。

そして、最上層に辿り着いた時、浮遊感は唐突に消えた。


そこは、ドーム状の広大な空間だった。

壁一面がガラス張り(に見える透明な壁)になっており、眼下には『虚無』の雲海と、遠くに小さく見える大陸の端が一望できた。


そして、部屋の中央。

無数の光るモニターに囲まれた、玉座のような椅子に、その男は座っていた。


足を組み、退屈そうに頬杖をつき、私たちを見下ろす男。

黒い髪。少し吊り上がった目。

かつてのようなボロボロの装備ではなく、この塔の雰囲気に似た、奇妙な白いスーツを身にまとっている。


「……遅かったな、アリア」


男が、口を開いた。

その声は、私の記憶にあるものと同じだった。

傲慢で、自信家で、そしてどこか人を小馬鹿にしたような響き。


「……カイト」


私は、その名を呼んだ。

怒りも、悲しみもなかった。ただ、目の前の「現実」を確認するように。


「本物……なのか?」


レオが、剣に手をかけながら問う。


「またメビウスが作ったコピーじゃないだろうな?」

「ハッ。一緒にすんなよ」


カイトは鼻で笑った。


「あんな出来損ないの人形と、『覚醒』した俺を」


カイトが、指を鳴らした。

瞬間、部屋中のモニターに、様々な映像が映し出された。


王都の様子、北の大障壁、東の遺跡跡地、そして私たちが今まで戦ってきた場所……。

彼は、ここから世界の全てを覗き見ていたのだ。


「アリア。お前がSランクになったと聞いた時は笑ったぜ」


カイトが、玉座から立ち上がり、ゆっくりと階段を降りてくる。


「『無能』だと思って捨てた荷物が、まさか世界を救う英雄になるとはな。……俺の『目』も、当時は節穴だったってわけだ」

「……謝罪の言葉は、期待していません」


私は、カイトを真っ直ぐに見据えた。


「あなたを捕まえに来たわけでもありません。……ただ、聞きたいことがあります」

「世界の真実、だろ?」


カイトは、私の目の前数メートルで立ち止まった。

Sランクになった私の魔圧プレッシャーを受けても、彼は顔色一つ変えない。


それどころか、彼の体からは、魔力とは異なる、異質な波動が立ち昇っている。


「いいぜ、教えてやる」


カイトは、両手を広げた。


「この世界はな、アリア。……『ゲーム』なんだよ」

「……は?」


ガレンさんが、眉をひそめる。

「何言ってやがる。頭がおかしくなったか?」

「比喩じゃない。文字通りの意味だ」


カイトは、憐れむような目でガレンさんを見た。


「俺たちは、日本という別の世界から『召喚』された。……なぜだと思う? なぜ、この世界には『ステータス』や『スキル』なんていう、都合のいい概念がある?」


カイトは、空中のパネルを操作した。

そこには、私たちにも見覚えのある『ステータス画面』が表示された。


「それは、この世界自体が、誰かによって作られた『管理された箱庭』だからだ」

「俺たち勇者は、その箱庭を調整するために呼ばれた『デバッガー(修正者)』だ」


カイトの瞳が、狂気的な光を帯びる。


「だが、俺は気づいた。……デバッガーとして使い潰されるのは御免だ、とな」

「だから俺は、この塔(管理端末)に辿り着き、手に入れたんだよ」


カイトの背後に、巨大な光の翼――ラザロのものとは違う、デジタルな光の粒子で構成された翼が出現した。


「俺はもう『勇者』じゃない」

「俺はこの世界のルールを書き換える権利を持つ……『管理者ゲームマスター』になったんだ」


ドオオオオオッ!!

カイトから放たれた波動が、私たちの体を吹き飛ばそうとする。

それは、魔法ではない。

この空間の「設定」そのものを操作する、絶対的な強制力。


「くっ……! 体が……重い!?」


レオが膝をつく。


「重力が……強くなってやがる……!?」

「アリア、お前の『進化魔法』も、元を正せばこの世界のバグ利用だ」


カイトが、ニヤリと笑った。


「だが、管理者の前で、バグ技がいつまでも通用すると思うなよ?」


元勇者カイト。

彼は、Sランクを超える脅威。

世界のルールそのものを掌握した『管理者』として、私たちの前に立ちはだかった。


「さあ、遊ぼうぜ、アリア。……『無能』と『管理者』。どちらがこの世界に相応しいか、決着ラストゲームといこうか」


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