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『無能』と追放された魔法使い、実は『力の天秤』を持つSランク級の逸材でした。~スキル禁止されたので『進化魔法』でSランク武具を手に入れます~  作者: さらん
第4章『王国の闇と古(いにしえ)の真実編』

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第65話:黒い封筒と、虚無の塔


王城の『円卓の間』。

窓の外には平和な王都の風景が広がっているが、室内の空気は、真冬の湖底のように冷え切っていた。


テーブルの上には、一通の黒い手紙。

そこに書かれた『カイト』という署名が、私たち『アルテミス』の全員を黙らせていた。


「……筆跡鑑定の結果が出たわ」


シルヴィア様が、報告書をテーブルに投げ出した。


「間違いなく、元勇者カイト本人のものよ。……少なくとも、筆跡と魔力残滓ざんしは、彼と完全に一致している」

「バカな」


ガレンさんが、腕を組み、唸るように言った。


「カイトは逮捕され、牢獄に送られたはずだ。その後、教会の『人造勇者計画』の実験体として連れ去られた……そこまでは分かっている。だが」

「あの研究所で、奴のオリジナルは見つからなかった」


レオが、唇を噛む。


培養槽ポッドにいたのは、全部コピーだった。……俺たちは、オリジナルはもう死んで処分されたと……」

「死んでいなかった、ということか」


エララさんが、冷徹に結論を口にする。


「あるいは……最初から『逮捕されたカイト』すら、精巧な偽物だった可能性もあるわね」


私は、手紙の文面をもう一度読み返した。


『――おめでとう、アリア。これで、ようやく「同じ盤面」で遊べるね』

『世界の真実を知りたければ、極西の果て、「虚無の塔」へ来い。そこで待っている』

「……虚無の塔」


私が呟くと、レジナルド卿が顔色を変えた。


「極西の……伝説上の場所です。大陸の西の果て、海さえも途切れる『世界の終わり』に立つと言われる、不可侵の領域。……古代魔法文明の時代から存在し、入った者が戻ってきた記録はない」

「そんな場所に、カイトがいると?」

「罠に決まってんだろ」


レオが吐き捨てる。


「今さらノコノコ出てきて、何を企んでやがる。……アリア、無視しろ。こんなもん」

「……いいえ」


私は、首を振った。


「行かなきゃいけません」


全員の視線が私に集まる。


「カイト個人の問題なら、無視したかもしれません。でも……彼は『真実』と言いました。大障壁、黒い杭、人造勇者……。これら全ての裏にある、この世界の『システム』そのものに関わっている気がするんです」


私の杖『アルテミス・ロッド・アイギス』の『世界樹の魔核』が、微かに明滅した。


(……アリア。行きなさい)

心の中に、声が響いた気がした。


(そこで、全ての始まりと、終わりを見るでしょう)

「それに」


私は、手紙を強く握りしめた。


「私が前に進むためには……彼との過去いんねんに、本当の意味で決着をつけなきゃいけない」


かつて私を「無能」と切り捨て、追放した男。

私の人生を狂わせ、そして強くしてくれた元凶。

彼が今、何を考え、何になろうとしているのか。Sランクになった今の私なら、対等に向き合えるはずだ。


「……分かった」


ガレンさんが、大きくため息をつき、そしてニカッと笑った。


「お前が行くと決めたなら、俺たちはついていくだけだ。……地獄の底だろうが、世界の果てだろうがな」

「Sランクパーティーの遠征ね」


シルヴィア様も微笑む。


「王国の特別顧問としての許可は出してあげるわ。……ただし、必ず生きて帰ってきなさい。この国には、まだあなたたちが必要なんだから」


準備は迅速に行われた。

極西への旅は、王都から転移門を乗り継いでも数日かかる長旅だ。

私たちは、最新鋭の装備と、大量の物資をマジックバッグに詰め込んだ。


出発の朝。

王都の正門には、私たちを見送る人だかりはなかった。今回は極秘任務だからだ。


「行くぞ」


ガレンさんが、西の空を見据えた。

そこには、不気味なほど赤い夕焼けのような色が、朝から広がっていた。


「虚無の塔……か」


レオが剣の柄を撫でる。


「ラスボスのお出ましか?」

「油断しないで」


エララさんが手綱を握る。


「相手は、あのカイトよ。……性格の悪さは、Sランク級なんだから」


私たちは、地竜騎アース・ドラゴンに跨り、荒野へと駆け出した。


目指すは世界の果て。

かつての勇者と、今の英雄。

交わるはずのなかった二つの道が、虚無の塔で再び交錯する。


道中、私たちが目にしたのは、世界が静かに「壊れ始めている」兆候だった。

季節外れの雪。枯れない花。空に浮かぶ巨大な蜃気楼。


『黒い杭』は抜いたはずなのに、世界の「バグ」は収まっていない。


(……カイト。あなたは一体、何を知っているの?)

旅の始まりは、静かだった。

だが、それが嵐の前の静けさであることを、私たちは肌で感じていた。


数日後。

私たちは、大陸の西の果てにある『断崖』に辿り着いた。

そこから先には、海はなかった。

あるのは、底の見えない真っ白な霧と……その霧の中に、天を突くようにそびえ立つ、一本の『黒い塔』だけだった。

『虚無の塔』。

そこに、全ての答えがある。


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