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『無能』と追放された魔法使い、実は『力の天秤』を持つSランク級の逸材でした。~スキル禁止されたので『進化魔法』でSランク武具を手に入れます~  作者: さらん
第4章『王国の闇と古(いにしえ)の真実編』

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第64話:墜ちる太陽と、Sランクの『処刑』


「消えなさい。『偽神フェイク』」


私の宣告と共に、杖『アルテミス・ロッド・アイギス』から放たれた極大の翠色みどりいろの光が、王都の空を裂いた。


「『進化魔法』――『根源回帰オリジン・リターン』!!!!」


ドガァァァァァァァァァァッ!!!!

それは、破壊の閃光ではない。

対象を構成する時間を強制的に巻き戻し、土へ、塵へ、そして無へと還す、究極の『退化』の光。


「グ、ギャアアアアアアアアッ!?」


ラザロの絶叫が響き渡る。

光に飲み込まれた彼の翼が、ボロボロと崩れ落ちていく。


奪った人々の生命力、混ぜ合わせた魔族の肉体、そして歪んだ信仰心――彼を形作っていた全ての『虚飾』が、私の魔法によって剥ぎ取られていく。


「や、やめろ……! 私は神だぞ!? この国を導く……唯一の太陽だぞ!!」

「太陽は、人を食べたりしません!」


私は魔力を更に込めた。


「あなたはただの、欲に溺れた哀れな老人です!」


私の魔法が、ラザロのコアを完全に露出させた。

黒く濁った、醜い宝石。それが彼の本体だ。


「レオ! エララさん!」

「「おうッ!!」」


左右のビルの屋上から、二つの影が弾丸のように飛び出した。

重力すら置き去りにする、Sランクの加速。


「これで……」


レオの双剣が、紅蓮の炎をまとう。


「終わりだァァァッ!!」


エララさんの愛剣が、蒼い真空の刃となる。

二人の軌道が、空中で交差した。


「合体奥義――『双竜・天喰ツイン・ドラゴン・イーター』!!!!」


ズバァァァァァンッ!!!!

二つの斬撃が、露出したラザロのコアを、十字に切り裂いた。


「ア……ガ……ァ……」


時間が止まったかのような一瞬。

ラザロの動きが停止した。

その瞳から、狂気の色が消え、代わりに信じられないものを見るような、呆然とした色が浮かんだ。


「……私の……理想郷……が……」


パリンッ……。

コアが砕け散る音が、驚くほど澄んだ音色で響いた。


次の瞬間。

ラザロの巨体は、内側から噴き出した光によって爆散した。


汚い肉片などは残らない。私の『根源回帰』と、二人の斬撃によって、彼は完全に光の粒子マナへと分解され、大気へと溶けていったのだ。


王都の空に、キラキラと金色の粉が舞い落ちる。

それは、彼が奪っていた人々の生命力が、解放されて持ち主へと還っていく光景だった。


「……」


広場は、静寂に包まれていた。

5万人の市民が、空を見上げ、呆然と立ち尽くしている。


黒い雲が晴れ、本当の太陽の光が、大聖堂を照らし出した。


スタッ。

レオとエララさんが、華麗に着地する。

私も、ゆっくりとレビテート(浮遊)を解き、ガレンさんの隣へと降り立った。


「……終わったな」


ガレンさんが、ボロボロになった盾を下ろし、大きく息を吐いた。


「へっ。とんだお祭りになりやがった」


その言葉が、静寂を破る合図だった。


「……勝った……?」

「枢機卿が……消えた……?」

「あの方たちが……守ってくれたんだ……!」


ワァァァァァァァァァッ!!!!

爆発的な歓声が、王都を揺るがした。


「『アルテミス』! 『アルテミス』!!」

「ありがとう!!」

「本物の英雄だ!!」


市民たちが、涙を流しながら私たちに手を振る。

彼らはもう、誰が「本物」で、誰が「偽物」かを、はっきりと理解していた。


「……やれやれ」


Sランク聖騎士ライオス様が、人混みをかき分けて現れた。シルヴィア様やレジナルド卿も一緒だ。


「美味しいところを全部持っていかれたな。……これじゃ、俺たちの立つ瀬がない」

「あら、いいじゃない」


シルヴィア様が、満足そうに微笑んだ。


「古い権威ラザロが消えて、新しい希望アルテミスが生まれた。……この国にとっては、最高の結末よ」


私は、歓声の中、空を見上げた。

カイトに追放されたあの日、私は全てを失ったと思っていた。


でも、違った。

私は、あのどん底から這い上がり、最高の仲間と出会い、そして今、自分の足でここに立っている。


「アリア」


ガレンさんが、私の肩に手を置いた。


「胸を張れ。……お前が救ったんだ」

「……はい!」


私は、仲間たちと共に、歓声に応えて手を振った。

その光景は、後に王国の歴史書に記されることになる。


『聖光祭の変』。

腐敗した教会支配の終わりと、Sランクパーティー『アルテミス』の伝説が、真に始まった日として。


数日後。

王都は、急速に落ち着きを取り戻しつつあった。

ラザロ枢機卿の消滅と、メビウスの証言により、教会の不正は全て暴かれた。


「人造勇者計画」に関わっていた司祭たちは一斉に検挙され、聖光教会は解体的再編を余儀なくされた。

そして、私たち『アルテミス』は。


「……で、なんでこうなるんですか?」


王城の『円卓の間』。

私は、山積みの書類を前に、頭を抱えていた。


「仕方あるまい」


国王陛下が、苦笑しながら言った。


「ラザロが消え、民の心は不安定だ。彼らが今、最も信頼を寄せているのはではなく、そなたら『アルテミス』なのだから」


私たちは、Sランクパーティーとしての任務に加え、王国の『特別顧問』という、よく分からない役職を押し付けられていた。


要するに、「国の顔として、復興のシンボルになってくれ」ということだ。


「へっ、ガラじゃねえよ」


レオが、窮屈な礼服の襟を引っ張る。


「ドレスなんて着て戦えないわ」


エララさんも不満顔だ。


「まあまあ」


ガレンさんが笑う。


「給料は破格だぞ? ボルカン師に、もっといい酒をおごってやれる」


平和な日常が戻ってきた。

……かに、思えた。


だが、物語はまだ終わらない。

あの『黒い杭』。古代の技術。


ラザロは言っていた。「古代のシステム」と。

彼はそれを「利用」していたに過ぎない。

では、そのシステムを「作った」のは誰なのか?

書類の山と格闘していた私の元に、一通の黒い封筒が届いた。


差出人の名前はない。

中には、一枚のカードが入っていた。

そこには、見覚えのある文字で、こう書かれていた。


『――おめでとう、アリア。Sランク昇格と、ラザロの排除。……これで、ようやく「同じ盤面」で遊べるね』


私は、背筋が凍るのを感じた。

その筆跡は。

かつて私が、幼い頃に憧れ、そして裏切られた……。


「……カイト?」


死んだはずの、あるいは廃人になったはずの元勇者。

彼が、まだこの世界のどこかにいる?

それとも、これはまた別の「誰か」の罠なのか?


『アルテミス』の戦いは、王国の闇を払い、ついに世界の深淵――『勇者召喚』の真実へと向かっていく。

(第4章・完)

(次章、最終章『世界の起源と、最後の選択』へ続く)


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