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『無能』と追放された魔法使い、実は『力の天秤』を持つSランク級の逸材でした。~スキル禁止されたので『進化魔法』でSランク武具を手に入れます~  作者: さらん
第1章: 『無能』の烙印と『天秤』の覚醒

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第6話:決着、そして背負う罪


「これが、私の本当の力。あなたが『無能』と呼んだ、魔法使いの力です!」


私が放った『氷結牢アイス・プリズン』は、カイト、ルナ、サラ、ミナの四人を完璧に閉じ込めていた。ルナから吸収した魔力を上乗せした私の氷は、並大抵の炎では溶かせない。


「アリア、お前……!」


レオが驚愕の声を上げるが、今は感心している場合ではなかった。


「グオオオオオオッ!!」


私たちの背後で、本命のミノタウロスが、邪魔者がいなくなった(と判断した)ことで再びガレンさんに猛攻を仕掛けていた。


「集中します!」


私はカイトたちに背を向け、仲間たちに向き直った。


「ガレンさん、エララさん、レオ! ボスを倒します!」

「ああ!」

「言われなくても!」


ガレンさんが盾で攻撃を受け流し、エララさんとレオが隙を突いて斬りかかる。

だが、B+ランクのボスはしぶとい。


「アリア、さっきのスキルをもう一度!」

「はい! 『力の天秤アストラル・バランス』!」


私は再びスキルを発動。ミノタウロスの「力」を奪い、今度は前線で戦うエララさんに「上乗せ」する。


「なっ……!?」


エララさんの剣が、淡い光を帯びた。


「軽い……! 力がみなぎる……!」


ミノタウロスの動きが鈍化し、エララさんの剣速が倍加する。


「今よ、ガレン! レオ!」

「「応!!」」


ガレンさんがミノタウロスの戦斧を盾で絡め取り、動きを封じる。

レオが弱体化した脚部に双剣を叩き込み、体勢を崩させた。

そして、力が強化されたエララさんが、がら空きになったミノタウロスの首筋に、光の軌跡を描くように剣を突き立てた。


「グ……オ……ァ……」


巨体が、ゆっくりと傾き、地響きを立てて倒れた。

広間に、荒い息遣いだけが響く。

私たちは、B+ランクのボスを、そしてカイトたちの妨害を、乗り越えたのだ。


「……やった」

「ああ……。アリア、お前、とんでもないスキルを隠してたな」


レオが肩で息をしながら、私を見た。


「隠してたわけじゃ……私も、今日まで魔力を吸収できるなんて知らなかった……」

「フン。結果的に助かったわ」


エララさんが剣を鞘に戻し、ガレンさんも盾を下ろした。

私たちは、ゆっくりと『氷結牢』に向き直った。

氷の中で、カイトは顔を真っ赤にして怒鳴り散らしている。


「アリアァァ! 出せ! ここから出せ! この裏切り者がァァ!」

「ちょっと! なんなのよこの氷! 私の炎が効かないじゃない!」


ルナも必死で魔法を放っているが、氷はびくともしない。

対照的に、サラとミナは、氷の壁に背中を預け、膝を抱えて座り込んでいた。顔は真っ青で、震えている。


「……さて」


ガレンさんが、重々しく口を開いた。


「どうする? こいつら」

「決まってる」


レオが、冷たい目でカイトを睨みつけた。


「ギルドに突き出す。ダンジョン内での仲間への意図的な妨害、殺人未遂だ。冒険者資格の剥奪だけじゃ済まない」

「ま、待て!」


氷越しに、カイトの声がくぐもって聞こえる。


「殺人未遂!? 冗談じゃない! 俺はただ、ちょっと脅してやろうと思っただけだ!」

「退路を塞いでおいて、それを言うか」


エララさんが吐き捨てる。


「アリア!」


カイトが、今度は私に懇願の目を向けた。


「頼む! 幼なじみのよしみだろ!? 俺たち、一緒に育った仲じゃないか! 見逃してくれ!」

「…………」


私は、黙ってカイトを見つめた。

幼なじみ。その言葉が、私の胸を抉る。

私たちが手柄を差し出し、カイトが「勇者」として輝いていた、あの頃。あの頃の彼は、少なくとも、こんな卑劣な目はしていなかった。


「アリアさん」


私は、おもむろに氷の牢に近づくと、震えているサラとミナに視線を合わせた。


「サラさん、ミナさん」

「……っ!」


二人がビクリと肩を震わせる。


「あなたたちも、私たちを殺そうと思ったんですか?」

「ち、違う!」


サラが泣きじゃくりながら首を振った。


「私たちは……私たちは、カイトさんに逆らえなくて……! ルナさんが『B+ランクのボスにぶつければ、あいつらも少しは反省する』って……こんな、退路を塞いで殺そうとするなんて、聞いてなかった!」

「ごめんなさい……ごめんなさい……!」


ミナも泣き崩れた。


「……そう、ですか」


私は、仲間たちを振り返った。


「ガレンさん、エララさん、レオ。……お願いがあります」


数分後。

私は『氷結牢』を解いた。


「っし!」


氷が消えた瞬間、カイトとルナが、残っていた武器を手に、私たちに襲いかかろうとした。

だが――

ガキン!


「遅い」

「甘い」


エララさんの剣がカイトの剣を弾き飛ばし、レオの双剣がルナの杖を切り裂いていた。あまりにも圧倒的な、実力差だった。


ガレンさんが、抵抗する二人を片手で押さえつけ、ロープで厳重に縛り上げる。


「離せ! なにするんだ!」

「クソッ! このゴリラタンク!」

「サラさん、ミナさん」


私は、動けずにいる二人に手を差し伸べた。


「あなたたちは、縛りません」

「え……?」

「代わりに、ギルドに戻ったら、審査会で『全て』を話してください。カイトさんとルナさんに何を言われ、何を思い、何をしたのか。全てです」

「……」

「もし、あなたたちの言葉が真実だと認められれば、罪は軽くなるかもしれません。でも、嘘をついたり、私たちを裏切ったりすれば……その時は、容赦しません」


二人は、お互いの顔を見合わせ、そして、震える声で答えた。


「……わかった」

「わかります……。全部、話します」

「アリア! お前、優しいんだな!」


縛り上げられたカイトが叫ぶ。


「そうだ! サラとミナがやったことにすればいい! 俺とルナは悪くない! こいつらが勝手に――」

「黙れ」


レオが、カイトの顎を掴んだ。


「お前は、まだ分かってないのか。アリアがこいつらを縛らないのは、『優しさ』じゃない。『信頼』でもない」

「……?」

「お前ら二人が『主犯』で、こいつら二人が『共犯』だっていう『証拠』を、ギルドに分かりやすく提示するためだ。……違うか? アリア」


私は、黙って頷いた。

私は、もうカイトに手柄を差し出す、内気な女の子ではない。

仲間を守るためなら、非情な選択もする。『アルテミス』の魔法使いなのだから。


「さて、と」


ガレンさんが、崩れた入り口を見上げた。


「最大の難関が残っているな。この瓦礫をどうやって撤去して、この大荷物カイトたちを運ぶか……」


私たちの、長く、困難なダンジョンからの帰還が始まろうとしていた。


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