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『無能』と追放された魔法使い、実は『力の天秤』を持つSランク級の逸材でした。~スキル禁止されたので『進化魔法』でSランク武具を手に入れます~  作者: さらん
第4章『王国の闇と古(いにしえ)の真実編』

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第59話:『偽りの神』と『分解』の魔法


「■■■■■■■■■ッ!!!!」


言葉にならない咆哮と共に、融合体キメラ『ネオ・バーサーカー』が突進した。

その速度は、巨体に似合わず音速に近い。

右腕のドラゴン・クローが、空気を切り裂きながら、ガレンさんの頭上へと振り下ろされる。


「速えな! だが、軽いッ!!」


ドガァァァァンッ!!!!

ガレンさんが、『アルテミス・ハート・イグニス』で真正面から受け止める。

衝撃で床の鉄板がめくれ上がるが、ガレンさんの足は一歩も下がらない。


「オオオオッ!」


キメラは、防がれたことに苛立ち、今度は左肩に内蔵された『魔導砲』をゼロ距離で発射しようとした。


「させねえよ!」

「遅い!」


レオとエララさんが、左右から同時に仕掛ける。

レオの双剣が砲塔を斬り飛ばし、エララさんの突きが膝の関節駆動部を貫く。

Sランクパーティーとしての連携は、もはや呼吸をするように自然に行われている。


「……アリア、どうだ?」


ガレンさんが、キメラの猛攻を涼しい顔でさばきながら、背後の私に問う。


「……酷いですね」


私は、杖『アルテミス・ロッド・アイギス』を通して、キメラの内部構造を『診察スキャン』していた。


「ドラゴンの筋肉、魔族のコア、機械の骨格……。互いの拒絶反応を、強力な『呪い』で無理やり縫い合わせています。……中の魂が、泣いています」

「クックック! 素晴らしいでしょう!」


メビウスが、安全圏から叫ぶ。


「互いに反発する力を、強制的に圧縮することで、爆発的なエネルギーを生むのです! これこそが科学! アリアさん、あなたの『進化』など、この『混沌』の前には無力です!」

「……いいえ」


私は、静かに首を振った。


「それは進化ではありません。ただの『崩壊の先送り』です」


私は、杖を掲げた。

以前の私なら、この怪物を倒すために、さらに強い力で吹き飛ばそうとしただろう。

でも、今の私には、もっと「正しい」倒し方が分かる。


「ガレンさん、離れてください」

「おう!」


ガレンさんがシールドバッシュでキメラを弾き飛ばし、バックステップで距離を取る。

キメラは体勢を立て直し、その胸の『ヴォルグのコア』を赤熱させ、全身から破壊光線を放とうとした。


「消えろォォォッ!!」

「『進化魔法』――『強制分離アン・シンセシス』」


私が杖を一振りすると、翠色みどりいろの風が、キメラを通り抜けた。


シュン……。

破壊光線は、発射されなかった。

それどころか。


ガチャン、ガラガラ……。

キメラの体から、機械のパーツが、ネジが外れたようにボロボロと落ち始めた。


「……ア、ガ……?」


キメラが、自分の腕を見つめる。

ドラゴンの腕が、ずるりと肩から剥がれ落ちる。

魔族のコアが、ポロリと胸から転がり落ちる。


「な……なにが……!?」


メビウスが、目をいた。


「私の、私のキメラが……バラバラに……!?」

「混ぜてはいけないものを、混ぜるからですよ」


私は、淡々と告げた。


「私の魔法は、対象を『あるべき姿』へと進化させます。……無理やり融合させられた彼らにとっての進化とは、『元の姿に戻る』ことです」


ボロボロと崩れ去った肉塊の中から、光の粒が立ち昇る。

それは、素材にされた生物たちの魂が、解放され、天へと還っていく光だった。


あとには、ただのスクラップの山と、動かなくなった魔石コアだけが残った。

攻撃も、防御も必要ない。

私は、この怪物の「存在の定義」そのものを解除したのだ。


「……ば、馬鹿な……」


メビウスが、ガクガクと膝を震かせて後ずさりした。


「Sランクのキメラだぞ……!? 私の理論の結晶だぞ……!? それを、指先一つで……解体したというのか……!?」

「あなたの理論は、もろすぎました」


私は、メビウスに歩み寄った。


「Sランクというのは、ただ力が強いだけじゃありません。……命の重さを知る者だけが、辿り着ける領域です」

「ヒッ、ヒイイイッ!!」


メビウスは、腰を抜かして這いつくばった。


「くるな! 化け物め! お前は人間じゃない!」

「往生際が悪いぜ、先生」


いつの間にか背後に回り込んでいたレオが、メビウスの首元に剣を突きつけた。


「チェックメイトだ。……洗いざらい吐いてもらうぜ。この国の『闇』についてな」


エララさんが、素早くメビウスの手を縛り上げる。

ガレンさんが、床に転がった『人造勇者のデータ』が入った記録媒体を回収した。


「……確保完了」


エララさんが冷たく告げる。


「アリア、こいつどうする? ここで処分しても、誰も文句は言わないけれど」

「いけません」


私は、メビウスを見下ろした。


「彼は重要な証人です。……誰が彼に資金を提供し、誰が『黒い杭』を作らせたのか。黒幕スポンサーを吐かせないと」

「……ち、違……」


メビウスが、青ざめた顔で、うわ言のように呟いた。


「私は……頼まれただけだ……。あの方に……『枢機卿すうききょう』閣下に……」

「枢機卿?」


その言葉に、私たちは顔を見合わせた。

枢機卿といえば、王国の宗教組織『聖光教会』のトップに次ぐ地位。

国民から聖人として崇められている、あの人物か?


「……へえ。坊主(教会)が絡んでんのか」


ガレンさんが、眉をひそめた。


「きな臭くなってきやがったな」


その時。


ウウウウウウウ……!

施設全体に、けたたましいアラーム音が鳴り響いた。


『――緊急自爆シーケンス起動。爆発マデ、60秒――』

「なっ!?」


メビウスが叫んだ。


「じ、自爆だと!? 私は起動していないぞ!?」

「……尻尾切りか」


シルヴィア様の声が、通信機から響いた。


『アリア! すぐに脱出しなさい! 証拠隠滅のために、施設ごと吹き飛ばす気よ!』

「60秒!? 間に合うかよ、出口まで!」


レオが叫ぶ。ここは地下深くの最深部だ。


「皆さん、私のそばに!」


私は、杖を床に叩きつけた。


「『転移魔法テレポート』――最大出力!!」

「ちょ、ここ結界が……!」

「Sランクなら、関係ありません!!」


ヒュンッ!!

私の魔力が、施設の妨害結界を強引にこじ開け、空間を繋ぐ。

爆発の炎が迫る中、私たちの姿は、光の中へと消えた。


ドガアアアアアアアン!!!!

東の森の奥深くで、地面が陥没し、巨大な爆炎が夜空を焦がした。

間一髪、森の上空へと転移した私たちは、眼下で崩れ去る遺跡を見下ろしていた。


「……あっぶねえ」


レオが、冷や汗を拭う。


「マジで死ぬかと思った……」

「……口封じに、施設ごと消すとはな」


ガレンさんが、拘束したメビウスを睨む。


「お前の雇い主は、お前の命なんて何とも思ってねえようだな」


メビウスは、燃える施設を見て、呆然としていた。


「……私が……捨てられた……? 神の研究が……」

「さあ、帰りましょう」


私は、王都の方角を見据えた。


『枢機卿』。

『聖光教会』。

敵の正体が見えてきた。

Sランクパーティー『アルテミス』。

次なる戦いの舞台は、王国の信仰の中心――『大聖堂』へと移る。


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