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『無能』と追放された魔法使い、実は『力の天秤』を持つSランク級の逸材でした。~スキル禁止されたので『進化魔法』でSランク武具を手に入れます~  作者: さらん
第4章『王国の闇と古(いにしえ)の真実編』

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第57話:東の禁足地と、機械仕掛けの『幽霊』


Sランク昇格の祝宴から数日後。

私たち『アルテミス』の姿は、王都の喧騒から遠く離れた、東の辺境にあった。


今回の任務は『極秘』だ。

表向きは「Sランク昇格に伴う、新強化エリアの視察」ということになっているが、実際は、シルヴィア様が突き止めた『黒い杭』の製造元――『古代遺跡群』への潜入捜査である。


「……ここが、東の禁足地か」


レオが、鬱蒼うっそうとした森の奥を見つめ、低い声で唸った。

そこには、こけに覆われた石柱や、崩れかけた壁が散乱しているのだが……。


「……異質ですね」


私が呟くと、ガレンさんが無言で頷いた。

普通の遺跡ではない。

崩れた石材の間から、錆びついた『鉄パイプ』や、何かの『歯車』、そしてガラスのような『配管』が露出している。


ここは、魔法と科学が融合していたという、古代魔法文明の遺構いこうなのだ。


「気をつけろ」


エララさんが、愛剣に手をかけた。


「鳥の声がしない。……生物いきものが、寄り付かない場所よ」


私たちは、森の深部にある、巨大な金属製の『扉』の前に行き着いた。

高さ10メートルはある、重厚な鋼鉄のゲート。

表面には、『大障壁』で見たのと同じ、複雑な幾何学模様の回路が刻まれている。


「……鍵穴はねえな」


レオが扉を小突く。


「ガレンの盾で、ぶち破るか?」

「よせ。警報が鳴って、中の証拠を隠滅されたら元も子もない」


ガレンさんが首を振る。


「私にお任せを」


私は前に出た。

杖『アルテミス・ロッド・アイギス』の先端を、扉の回路ポートに静かに当てる。


(……解析スキャン。構造理解。……セキュリティ解除)


ピピピッ、キュイーン……。

私の脳内に、膨大な『言語コード』が流れ込んでくる。

それは現代の魔法言語とは全く違う体系だが、世界樹このこが瞬時に翻訳してくれる。


(……パスコード認証。『王家ロイヤル』権限を確認……)


ガコンッ、プシュゥゥゥ……。

数百年もの間、閉ざされていたはずの扉が、油の切れた重い音を立てて、ゆっくりと左右に開いた。


「……マジかよ」


レオが呆れたように笑う。


「アリア、お前、本当に何でもありだな」

「Sランクですから」


私は少し悪戯っぽく微笑んで、暗闇の中へと足を踏み入れた。

内部は、予想以上に保存状態が良かった。

ヒカリゴケのような青白い照明が、長い通路を照らしている。

床は金属製で、足音がコツコツと響く。


「……生きているな」


ガレンさんが、壁に耳を当てた。


「壁の奥から、微かな振動音がする。……この施設は、まだ稼働している」


その時だった。

通路の奥から、カシャン、カシャン……という、規則的な金属音が近づいてきた。


「……来るわよ!」


エララさんが警告する。

暗闇から現れたのは、三体の『人形』だった。

ただし、愛らしい人形ではない。

真鍮しんちゅう色の金属ボディに、無機質なカメラアイ。手には刃物が内蔵された、戦闘用オートマトン(機械人形)。


『――侵入者検知。排除行動ニ移行シマス――』


無感情な合成音声と共に、オートマトンたちが加速した。


「速いッ!」


レオが反応するより早く、先頭の一体が飛びかかってくる。

その動きは、生物の筋肉の限界を無視した、機械特有の挙動。


「『シールド・バッシュ』!」


ガレンさんが割り込み、盾で弾き飛ばす。


ガギンッ!!

硬質な音が響く。


「……硬てぇ! こいつら、ボディにミスリルが混ざってやがる!」

「Sランク(わたしたち)の敵じゃない!」


エララさんが、床を滑るように接近し、関節の隙間――配線の露出部を正確に斬り裂いた。


バチバチッ!

一体がショートして沈黙する。


「レオ! 右!」

「おうよ!」


残る二体も、レオの双剣とガレンさんの盾の連携で、数秒とかからずにスクラップになった。


「……古代の警備ロボットか」


ガレンさんが、動かなくなった残骸を見下ろす。


「300年前の技術にしちゃ、洗練されすぎている気がするが……」


私たちはさらに奥へと進んだ。

最深部にあると思しき『中央制御室』を目指して。

そして、突き当たりの広い部屋に出た瞬間。

私たちは、言葉を失った。


「……なんだ、これは」


そこは、広大な『培養室ラボ』のような場所だった。

部屋の中央には、巨大な円筒形の水槽ポッドが、林のように何十本も立ち並んでいる。

水槽の中は、緑色の液体で満たされ、無数の気泡が上がっているのだが……。


「……おい、アリア。あれ……」


レオが、震える指で、一つの水槽を指差した。

私が近づいて、ガラス越しに中を覗き込むと――。

そこには、『人間』が浮いていた。


管だらけで、意識はないようだが、確かに人間だ。

そして、その顔には、見覚えがあった。


黒髪に、黒い目。

この世界の住人ではない、私たちと同じ『召喚された日本人』のような特徴。

いや、もっと言えば……。


「……カイト?」


私が、思わずその名を呟いた。

水槽の中にいたのは、私を追放した勇者カイト……によく似た、しかし少し若い、少年の姿をした『何か』だった。


『――検体番号 1048。廃棄処分待ち――』


水槽の横にあるモニターに、無機質な文字が表示されている。


「……検体?」


私は、隣の水槽を見た。そこにも、カイトに似た少年。

その隣も。そのまた隣も。

ここにある数十本の水槽の全てに、『勇者カイト』の失敗作コピーのような存在が、浮かんでいたのだ。


「……なんてことだ」


ガレンさんが、拳を握りしめた。


「ここは、古代の遺跡なんかじゃない。……『人造勇者』の、製造工場か……!?」


『黒い杭』が吸い上げていた、膨大なエネルギー。

それが何に使われていたのか、その一端が見えた気がした。

誰かが、この地下で、『勇者』を量産しようとしている。


「……アリア」


エララさんが、部屋の奥を指差した。


「誰か、いるわ」


制御コンソールの前に、一人の男が立っていた。

白衣のようなローブを羽織り、背を向けたまま、淡々とデータを操作している。


「……困りますねぇ」


男が、振り返った。

糸のように細い目をした、青白い肌の男。

その口元には、爬虫類のような、不気味な笑みが張り付いていた。


「せっかくの『Sランク検体』のデータを取っていたのに。……ネズミが入り込んでくるとは」


男の胸元には、王国の宮廷魔術師団の紋章。

しかし、その色は、漆黒に染められていた。


「はじめまして、英雄『アルテミス』の皆様。……そして、『サンプル・アリア』」


男は、私を見て、舌なめずりをした。


「私の可愛い『実験場はこにわ』へ、ようこそ」


王国の闇。

その深淵が、口を開けた。


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