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『無能』と追放された魔法使い、実は『力の天秤』を持つSランク級の逸材でした。~スキル禁止されたので『進化魔法』でSランク武具を手に入れます~  作者: さらん
第4章『王国の闇と古(いにしえ)の真実編』

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第56話:凱旋と、黄金のカード


『北方大要塞』での祝宴から一夜明け、私たちは再び『転移門ゲート』の光に包まれた。

一瞬の浮遊感の後、視界に飛び込んできたのは、見慣れた王都の宮廷魔術師団本部の景色と――。


「――おかえりなさいませ!! 英雄『アルテミス』!!」


割れんばかりの拍手と、ラッパの音。

転移の間には、外交官のレジナルド卿をはじめ、王国の重鎮たち、そして魔術師団の団員たちが整列し、私たちを出迎えてくれた。


「……こりゃあ、たまげたな」


ガレンさんが、目を丸くする。

北の灰色の空とは違う、王都の突き抜けるような青空。窓の外からは、市民たちの歓声が地鳴りのように響いてくるのが聞こえる。


「さあ、こちらへ」


レジナルド卿が、満面の笑みで私たちを誘導する。


「国王陛下がお待ちです。……そして、王都中の民が、あなた方の姿を一目見ようと、大通りを埋め尽くしていますよ」


用意されたパレード用の馬車に乗せられ、私たちは王都のメインストリートを進んだ。


「アリア様ー!! ありがとうー!!」

「ガレンー! その盾、すげぇぞー!!」

「『アルテミス』万歳!!」


紙吹雪が舞う中、沿道には溢れんばかりの人だかりができていた。

かつて、カイトにパーティーを追放され、雨の中を一人で歩いたあの道。

「無能」と後ろ指を指され、宿屋に泊まる金すらなかったあの日。


(……景色が、全然違う)

私は、馬車の上から、その光景を眺めていた。

隣には、信頼できる仲間たちがいる。

手には、世界最高の『杖』がある。

そして、人々の視線は、「侮蔑」から「尊敬」と「熱狂」へと変わっていた。


「……へへっ。悪い気分じゃねえな」


レオが、照れくさそうに観衆に手を振る。


「当然よ。私たちは、世界を救ったんだもの」


エララさんも、誇らしげに胸を張る。

その行列の先頭を行くのは、Sランクパーティー『紅蓮の獅子』の面々だ。

シルヴィア様が、馬上で振り返り、私にウィンクをした。


『堂々としていなさい。これが、Sランクの特権ごほうびよ』

その目は、そう語っていた。


王城、『玉座の間』。

きらびやかなシャンデリアの下、赤い絨毯の先には、この国の最高権力者、国王陛下が鎮座していた。


おもてを上げよ」


重厚な声が響く。私たちは、その場で片膝をつき、頭を上げた。

国王陛下の隣には、宰相や将軍たち、そして……以前、私たちを陥れようとして失脚したマルクス伯爵の「空席」が見えた。


「Aランクパーティー『アルテミス』よ」


国王陛下が、羊皮紙を広げた。


其方そなたらの働き、実に見事であった。魔王軍幹部『憤怒』のヴォルグの討伐。そして何より、古代より我が国を守護せし『大障壁』の修復……。これは、建国以来の偉業である」


陛下は、従者に合図を送った。

銀の盆に乗せられて運ばれてきたのは、四枚の『ギルドカード』だった。

だが、それは以前の銀色(Aランク)ではない。

光を吸い込むような、重厚な輝きを放つ、『黄金ゴールド』のカード。


「よって、本日この時をもって、冒険者ギルド規定に基づき……」


国王陛下が高らかに宣言した。


「パーティー『アルテミス』を、国家最高戦力――『Sランク』に認定する!」


おおおおおおおおっ……!

謁見の間に、どよめきと拍手が巻き起こる。

Sランク。

数千、数万の冒険者が目指し、そのほとんどが夢半ばで散っていく、頂の領域。

国内に数チームしか存在しない、生ける伝説。


「……謹んで、拝命いたします」


リーダーであるガレンさんが、震える手で、その『黄金のカード』を受け取った。


「そして、アリア」


不意に、国王陛下が私を名指しした。


「は、はい!」

「そなたの『魔法』……。既存の体系には存在しない、未知の力であると聞く。……余は期待しているぞ。その力が、この国の『闇』を晴らす光となることを」


(……闇?)

陛下の言葉に、一瞬、政治的な「含み」を感じた。

単なる儀礼的な挨拶ではない。何か、切実な響き。

式典が終わり、私たちが退室しようとした時、シルヴィア様がすれ違いざまに、私の耳元でささやいた。


「……今夜、私の屋敷に来なさい」


彼女の声は、パレードの時とは打って変わって、冷たく、張り詰めていた。


「『黒い杭』の解析結果が出たわ。……国王陛下が『闇』と言った意味、教えてあげる」


その夜。

Sランク昇格の祝賀ムードに湧く王都の喧騒をよそに、私たちは、貴族街にあるシルヴィア様の屋敷を訪れた。


通されたのは、地下にある厳重な遮音結界が張られた『秘密会議室』。

そこには、『紅蓮の獅子』のメンバー全員と、険しい顔をしたレジナルド卿が待っていた。

テーブルの上には、北から回収した『黒い杭』の破片が置かれている。


「……単刀直入に言うわ」


シルヴィア様が、氷のような声で切り出した。


「この『黒い杭』……。材質の年代測定の結果、約300年前のものだと判明したわ」

「300年前?」


私が聞き返す。


「それって……」

「ええ。この王国が建国され、初代国王が『勇者召喚』の儀式を確立した時期と、完全に一致するわ」


シルヴィア様は、衝撃の事実を告げた。


「そして、この杭に刻まれていた『魔力回路』のパターンは……魔族のものではない。現在、王城の地下深くに封印されている、『勇者召喚魔法陣』の裏コードと、酷似している」

「な……ッ!?」


ガレンさんが、椅子から立ち上がった。


「おいおい、冗談だろ? じゃあ、大障壁を壊そうとしていたのは、魔王軍じゃなくて……」

「……『人間』よ」


レジナルド卿が、重く頷いた。


「それも、王城の機密に触れることができる、かなり高い地位の人間……あるいは、組織」

「そんな……」


私は、自分の『黄金のカード』を握りしめた。

私たちが命がけで守った『大障壁』。それを壊そうとしていた犯人が、守るべき王国の「中」にいる?


「アリア」


シルヴィア様が、私を見た。


「あなたが『Sランク』になったことで、あなたは政治の及ぶ範囲ゲームボードに乗せられた。……敵は、あなたたちの『力』を、間違いなく利用しようとしてくる。あるいは、消しにかかる」

「私たちは、どうすれば……」

「真実を暴くのよ」


シルヴィア様は、地図の一点を指差した。


「『黒い杭』の魔力反応を追跡した結果、ある場所が浮上したわ。……王国の東、未開の『古代遺跡群』。そこに、この杭を製造した『工場プラント』がある可能性がある」


Sランク最初の任務。

それは、華々しい魔獣討伐ではない。

国家転覆レベルの陰謀に挑む、極秘潜入任務だった。


「……やります」


私は、顔を上げた。


「世界を守るのが、Sランクの仕事ですから」


Aランクから、Sランクへ。

しかし、上がったのはランクだけではない。

敵の「危険度」と「闇の深さ」もまた、Sランクへと跳ね上がっていた。


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