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『無能』と追放された魔法使い、実は『力の天秤』を持つSランク級の逸材でした。~スキル禁止されたので『進化魔法』でSランク武具を手に入れます~  作者: さらん
第2章: 王都の『試練』と『Sランク』への道

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第55話:逆流する『光』と、不沈の『盾』


「『進化魔法』――『聖回帰ホーリー・リバース』!!!!」


私が杖を突き刺した『黒い杭』の中心から、目もくらむような純白の光が噴き出した。

それは、破壊の爆発ではない。

今まで「黒」へと反転させられ、大地を腐らせていた膨大なエネルギーが、私の魔法によって再び「白(聖なる魔力)」へと書き換えられ、逆流を始めたのだ。


ギュオオオオオオオオオオッ!!!!

『黒い杭』が、断末魔のようなきしみ声を上げた。

黒い血管のような紋様が焼き切れ、漆黒の材質が、内側から溢れ出す光に耐えきれず、白くヒビ割れていく。


「な、なんだ、この光は……!?」


Sランク聖騎士ライオス様が、目を覆う。

光は、ドーム全体へと広がった。

足元を流れていた「黒い瘴気の川」が、光に触れた瞬間、清らかな「マナの水」へと変わる。

壁面の腐食した回路が、黄金色に輝きを取り戻す。

そして――。


「グ、ガ……ァ……!?」


ガレンさんの『焦熱地獄』によって足を止められ、そこへ直撃した『純白の波動』を浴びた、五体の『魔王軍親衛隊ロイヤル・ガード』たち。

瘴気と機械で構成された彼らの体にとって、この高純度の『聖なる光』は、最も強力な「劇薬もうどく」だった。


「終わらせろ!! ライオス! シェイド! バルガス!」


シルヴィア様が叫ぶ。


「今、奴らの『再生』は完全に停止している!」

「「「承知ッ!!!」」」


ライオス様の聖剣が、一閃。動けなくなった二体の首を刎ねる。

シェイド様の影の刃が、心臓部を貫く。

バルガス様の浄化魔法が、残骸を灰へと変える。

Sランク級の脅威であったはずの親衛隊は、私の光の中で、ただの脆い「ガラクタ」として、崩れ去った。


光が収束していく。

『黒い杭』があった場所には、今は、天に向かって真っ直ぐに伸びる、美しい『光の柱』が立っていた。

『大障壁』のシステムは正常化し、亀裂は、その光の柱によって内側から塞がれていた。


「……やった……のか……?」


レオが、眩しそうに目を細める。

黒い空が、割れた。

頭上を覆っていた毒々しい雲が消え去り、そこから、『大障壁』本来の、オーロラのような輝きが降り注ぎ始めた。

世界が、息を吹き返したのだ。


「……アリア」


エララさんが、駆け寄ってきた。


「すごい……。本当に、世界を『治して』しまった……」

「……はい、なんとか……」


私は、杖を支えに、膝をついた。魔力は空っぽだったが、心地よい疲労感だった。


「……でも、私だけじゃ、ありません」


私は、目の前に立つ、あの大きな背中を見上げた。


「……ガレンさん?」


ガレンさんは、光の柱の前に、仁王立ちしていた。

その姿は、凄惨だった。

全身の鎧は高熱で溶け落ち、肌は赤黒く焼け焦げ、体からはシューシューと蒸気が上がっている。

左腕の『アルテミス・ハート・イグニス』だけが、冷え固まった溶岩のように、黒く、静かに鎮座していた。


「……ガレンさん!」


私は、慌てて彼に駆け寄り、回復魔法ヒールをかけようとした。


「……よせ、アリア」


ガレンさんが、低く、しかし驚くほど力強い声で、私を制した。


「……え?」

「回復は、いらん。……俺の『盾』が、もう、やってくれた」


ガレンさんが、ゆっくりと振り返った。

その顔はすすだらけだったが、その瞳には、かつてないほどの『生命力』がみなぎっていた。


「……ボルカン師の言った通りだ」


ガレンさんは、自分の盾を叩いた。


「この『ミスリル銀鋼』と『地竜の逆鱗』……。俺が死ぬ寸前で、俺の生命力を吸い上げるのを『止め』やがった。そして、お前が放った『聖回帰』の余剰魔力を吸い取って、俺に『還元』してくれた」


(……すごい)

私は、その盾を見た。

Sランクの盾は、あるじを殺さない。

ギリギリの命のやり取りの中で、主を生かすために、自律して魔力を制御したのだ。


「……ふん。呆れた男だ」


ライオス様が、歩み寄ってきた。彼は、ガレンさんの肩を、強く叩いた。


「Sランクの親衛隊五体を、一人で足止めし、あまつさえ生還するか。……俺でも、聖剣を折る覚悟でなきゃ、無理だったぞ」

「俺一人じゃありません」


ガレンさんは、私を見た。


「後ろに、最高の『心臓』がいましたから」

「……まったく」


シルヴィア様も、苦笑しながら近づいてきた。


「あなたたち『アルテミス』のおかげで、私たちの面目は丸潰れよ。……でも」


彼女は、光を取り戻した『大障壁』を見上げた。


「……美しいわね」


その言葉に、全員が頷いた。

私たちは、成し遂げたのだ。

魔王軍の幹部を倒し、親衛隊を退け、世界を蝕む『杭』を抜き去り、この大陸を守る『壁』を取り戻した。


「……帰ろう」


シルヴィア様が、私たちに微笑んだ。


「要塞へ。……今度こそ、勝利の美酒が待っているわ」


数時間後。

『北方大要塞』は、お祭り騒ぎだった。

空は晴れ渡り、遠くに見える『大障壁』は、神々しい輝きを取り戻している。

兵士たちは、互いに抱き合い、涙を流して喜び、私たち『アルテミス』の姿が見えると、割れんばかりの拍手と歓声で迎えてくれた。


「英雄だ! 『アルテミス』万歳!」

「アリア様ー! ガレン様ー!」


私たちは、Sランクパーティー『紅蓮の獅子』と共に、要塞の司令室で、ささやかな、しかし最高に美味しい祝杯を挙げていた。


「……さて」


宴もたけなわの頃、シルヴィア様が、グラスを置き、真剣な表情で切り出した。


「今回の件で、はっきりしたことがあるわ」


場が静まり返る。


「『黒い杭』。……あれは、魔族の技術じゃない。もっと古くて、異質な……『古代魔法文明ロスト・テクノロジー』の産物よ」

「古代の……?」


私が聞き返す。


「ええ。そして、それを操作していた『何者か』がいる。……魔王軍とは別に、この世界を裏から壊そうとしている『黒幕』が」


シルヴィア様は、アリアをまっすぐに見つめた。


「アリア。あなたの『杖』。……その素材である『世界樹』は、何かを知っているかもしれない」


(……世界樹様……)

私は、自分の杖『アルテミス・ロッド・アイギス』を握りしめた。

エルフの森で聞いた、『声』を思い出す。


『魔王の瘴気は、ほんの兆候にすぎない』

『本物の危機が迫っている』


「私たちは、一度王都に戻り、国王陛下に報告するわ。……そして、その『黒幕』の正体を突き止める」


シルヴィア様は、私たちに言った。


「『アルテミス』。あなたたちも、来なさい。……Sランク昇格の叙勲じょくんと、そして……」

「次の『戦場』が、あなたたちを待っているわ」


Aランクパーティー『アルテミス』の、『大障壁防衛任務』は、完全勝利で幕を閉じた。

だが、それは、世界の命運をかけた、さらなる激闘への「入り口」に過ぎなかった。

新たな謎。新たな敵。

そして、私たち自身の、さらなる「進化」。

物語は、次のステージへと進む。

(第3章・完)


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