表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『無能』と追放された魔法使い、実は『力の天秤』を持つSランク級の逸材でした。~スキル禁止されたので『進化魔法』でSランク武具を手に入れます~  作者: さらん
第2章: 王都の『試練』と『Sランク』への道

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/72

第52話:『憤怒』の終焉と、Sランクの証明


「合同大魔法――『トリニティ・バースト』!!!!」


視界を埋め尽くす極光が収束し、世界が白一色に染まった数秒間。

音すらも置き去りにされたその静寂の後、遅れてやってきた衝撃波が、北方大要塞の堅牢な石壁さえも震わせた。


やがて、光が晴れていく。

そこにあったのは、もはや「戦場」ではなかった。

大地が深くえぐり取られ、ガラス状に溶解した巨大なクレーター。

そして、その中心に――。


「……バ、カな……」


魔王軍幹部、『憤怒』のヴォルグ。

体長20メートルの巨獣と化していた彼の体は、その9割が「蒸発」していた。

六本あった腕は全て消し飛び、下半身もなく、ただ、無残に焼け焦げた胴体と頭部だけが、クレーターの底に転がっていた。


「……我が『影』が……再生、しな、い……?」


ヴォルグが、うめく。

本来なら、周囲の瘴気を吸って瞬時に再生するはずの彼の体が、断面からボロボロと崩れ落ちていく。

私の『変換』魔法が、彼を構成する「影」の性質そのものを、「光」へと書き換えてしまったからだ。傷口が「浄化」され続けているため、再生が追いつかないのだ。


「……貴様ら、人間、では……な、い……」


ヴォルグの赤い瞳が、アリアを捉えた。

そこには、もはや怒りすらなく、理解を超えた存在に対する、根源的な「恐怖」が浮かんでいた。


「トドメだ!!」


その声を上げたのは、影から現れたSランク暗殺者、シェイド様だった。


「レオ! エララ! 奴の『コア』は剥き出しだ! やれるな!?」

「「おうッ!!」」


クレーターの縁から、二つの影が飛び出した。

レオくんとエララさん。

二人は、あの大爆発の衝撃波の中を、シェイド様の影に隠れて、無傷で接近していたのだ。


「これで、終わりだァァァッ!!」

「消えなさい、亡霊!!」


二人の呼吸が、完全に重なる。

アリーナでの地獄の特訓で掴んだ、Sランクの絶技。


「「奥義――『竜顎りゅうがく十字架クロス』!!!!」」


レオくんの縦の斬撃と、エララさんの横の斬撃。

二つの剣閃が、ヴォルグの剥き出しになった胸部の『コア』一点で交差し、閃光となって突き抜けた。


パリィィィィィィィンッ!!!!

硬質な音が響き、ヴォルグの赤い瞳から、光が消えた。


「……魔王、様……万、歳……」


ドサッ……。

崩れ落ちた残骸が、黒い霧となって霧散していく。


『憤怒』のヴォルグ。

Sランクパーティー『紅蓮の獅子』を追い詰めた魔王軍幹部は、私たち『アルテミス』との共闘の前に、完膚なきまでに敗れ去った。


「……勝った……のか?」


城壁の上で、兵士たちが、恐る恐る顔を上げた。

無限に湧き続けていた『影』の軍勢も、指揮官を失い、私の『聖域フィールド』の中で次々と消滅していく。


「……勝ったぞォォォォォッ!!!」

「魔王軍幹部を! 倒したぞォォッ!!」


ワァァァァァァァァッ!!!!

要塞全体から、割れんばかりの歓声が上がった。

それは、絶望的な防衛戦が続いていたこの場所で、久しぶりに響いた「希望」の声だった。


「……ふぅ。やれやれ」


Sランク聖騎士ライオス様が、聖剣を収め、肩の力を抜いた。


「まさか、ここまで一方的な戦闘になるとはな。……俺たちの出番、半分もなかったんじゃないか?」

「違いない」


神官バルガス様も、額の汗を拭いながら笑った。


「ワシの結界も、アリア嬢の支援があったおかげで、全盛期より硬かったわい」


そして、シルヴィア様が、私たちの方へと歩いてきた。

私たちは、緊張して背筋を伸ばした。

彼女は、ボロボロになった地面を踏みしめ、私の前で止まると――。


「……見事よ、『アルテミス』」


そのルビー色の瞳を細め、心からの称賛を送ってくれた。


「個々の武力、連携、そして何より……戦場そのものを支配する、その『杖』の力。……あなたたちは、もう『Aランク』の枠には収まらない」


シルヴィア様は、右手を差し出した。


「ようこそ、こちらの世界(Sランク)へ。……これからは、『背中』を預け合う『戦友』として、よろしく頼むわ」

「……はい!」


私がその手を握り返すと、ガレンさん、レオくん、エララさんも、ライオス様たちと握手を交わしていた。

カイトに追放され、泥水をすすったあの日から、ここまで来た。

私たちはついに、名実ともに、王国の最高戦力と肩を並べたのだ。


「……ですが」


シルヴィア様が、表情を引き締め、北の空を見上げた。


「祝杯をあげるには、まだ早いわ」


ヴォルグは倒した。影の軍勢も消えた。

だが、その向こう側。

『大障壁』に走った巨大な『亀裂』は、いまだ黒い瘴気を吐き出し続けている。

ヴォルグは、そこから漏れ出した「尖兵」に過ぎない。

あの亀裂を塞がない限り、第二、第三の幹部が、あるいは『魔王』そのものが、現れるかもしれない。


「行きましょう」


私が、杖『アルテミス・ロッド・アイギス』を掲げた。


「あの亀裂を、塞ぎに」

「ええ」


シルヴィア様が頷く。


「ここからは、『魔王の瘴気』の発生源への、突入作戦ダイブよ。……アリア、あなたの『浄化(変換)』だけが頼りだわ」


ひとつの戦いは終わった。しかし、戦争はまだ終わっていない。

私たちは、Sランクパーティーとの混成部隊として、人類未踏の領域――『大障壁』の内部へと、向かうことになる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ