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『無能』と追放された魔法使い、実は『力の天秤』を持つSランク級の逸材でした。~スキル禁止されたので『進化魔法』でSランク武具を手に入れます~  作者: さらん
第2章: 王都の『試練』と『Sランク』への道

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第50話:『憤怒』の黒騎士と、Sランクの『初陣』


「……我が名は、『憤怒』のヴォルグ」


漆黒の鎧をまとった魔王軍幹部が、その名を名乗った瞬間。

『北方大要塞』の城壁周辺の空気が、物理的な重さを持って歪んだ。

それは単なる魔力ではない。生物が本能的に抱く「恐怖」と「怒り」を強制的に引きずり出す、精神干渉マインド・クラッシュの波動だった。


「う、あ……ッ!」


城壁の上にいた一般の兵士たちが、泡を吹いて倒れ、あるいは錯乱して叫び声を上げ始める。

Aランク冒険者クラスでさえ、膝が震え、武器を取り落とすほどのプレッシャー。


「……下がれ! 雑兵ぞうひょう共!」


シルヴィア様が、紅蓮の炎壁を展開し、兵士たちを守る。


「奴は、魔王軍『七つの大罪』の一角! 生半可な結界など、息をするだけで砕かれるわ!」

「……ほう」


ヴォルグは、赤い双眸そうぼうを細めた。


「『紅蓮の魔女』か。……だが、我が興味は、其奴そやつだ」


ヴォルグの魔剣が、真っ直ぐに、ガレンさん――いや、その背後にいるアリアを指した。


「貴様だな。我が『影』の軍勢を、忌々しい『光』で浄化したのは」

「……ッ!」

「死ね」


ドォォォォォンッ!!

音速を超えた。

ヴォルグの姿が掻き消え、次の瞬間には、私の目の前に「死」そのものが迫っていた。


「アリア!!」

「させるかよッ!!」


ガキンッ!!!!

私の鼻先数センチで、凄まじい火花が散った。

ガレンさんが、反応速度の限界を超えて割り込み、『アルテミス・ハート・イグニス』で、ヴォルグの魔剣を受け止めていたのだ。


「ぐ……ゥ、オオオオオッ!!」


ガレンさんの足元の石畳が、クモの巣状に砕け散る。


「……重い……ッ! 聖騎士ライオス様の一撃より、重い……!」

「ほう。我が一撃を受け止めるか、人間。……だが、いつまで持つ?」


ヴォルグが、魔剣にどす黒いオーラを込めた。


「『憤怒の波動ラス・ウェイブ』!」


至近距離からの、衝撃波。物理防御を無視して、盾ごと相手を粉砕する技。


「ガレンさん!」

「心配するな!」


ガレンさんは、一歩も引かなかった。


「この盾は……ボルカン師の『最高傑作』だ! お前ごときの『怒り』で、砕けるかァッ!!」


ブォンッ!!

盾の中心にある『ミスリル銀鋼』のコアが青く輝き、同時に『地竜の逆鱗』が赤熱化した。

ガレンさんの生命力が燃料となり、爆発的な『熱』が放出される。

ヴォルグの「闇の衝撃波」が、盾から放たれた「紅蓮の熱波」と衝突し、ジューッ! という音と共に『蒸発』した。


「な……ッ!?」


ヴォルグが、初めて驚愕の声を上げた。


「我が魔力を……『焼き払った』だと!?」

「今だ! レオ! エララさん!」

「「応ッ!!」」


ヴォルグが体勢を崩した一瞬の隙。

左右の死角から、シェイド様の特訓を受けた「二本の剣」が襲いかかった。


「遅い!」


ヴォルグは、見もせずに魔剣を振るい、二人を薙ぎ払おうとする。

だが。


「見えているわ!」


エララさんが、ヴォルグの剣筋を紙一重で見切り、身を低くして回避。

その回避行動が、背後にいたレオの姿を『隠す』ブラインドとなる。


死角そこだァッ!」


レオの双剣が、ヴォルグの鎧の隙間、脇腹へと突き込まれた。

ガギィッ!!


「チッ! 硬ぇ!」


刃は通ったが、浅い。Sランクの鎧は、Aランクの剣では貫通しきれない。


「羽虫が……!」


ヴォルグが激昂し、全方位に魔力を放出しようとする。


「消え失せろ!!」


全員が吹き飛ばされる――その直前。


「させません!」


私は、杖『アルテミス・ロッド・アイギス』を掲げた。


「『聖域展開サンクチュアリ』――『魔力掌握マナ・ドミネーション』!!」


私の杖の『世界樹の魔核』が、翠色みどりいろに閃光した。

ヴォルグが放出しようとした「憤怒の魔力」が、私の周囲の空間フィールドに干渉された瞬間、強制的に『鎮静化』された。


「……な、に……?」


ヴォルグは、自分の力が、霧散していく感覚におののいた。


「我が魔力が……『支配』されている……?」

「ガレンさん! 今です! フルパワーで!」


私は、杖を通して、ガレンさんに私の魔力を送り込んだ。


「『超・身体強化ギガ・フィジカル・ブースト』!!」


私の『Sランクの魔力』が、一滴のロスもなくガレンさんに流れ込み、そしてガレンさんの『Sランクの盾』が、それを爆発的な推進力に変えた。


「うおおおおおおおおっ!!」


ガレンさんの盾が、太陽のように燃え上がった。


「必殺! 『紅蓮・盾衝イグニス・シールド・インパクト』!!!!」


ドゴオオオオオオオオオオッ!!!!

灼熱の盾の一撃が、ヴォルグの腹部にクリーンヒットした。

Sランクの鎧が、熱で飴細工のように歪み、衝撃が内部へと突き抜ける。


「ガ、ハッ……!!」


魔王軍幹部、ヴォルグの口から、黒い血が噴き出した。

その巨体が、砲弾のように吹き飛び、はるか後方の、崩れかけた石壁へと激突した。


ズズーン……!

土煙が舞い上がり、戦場が一瞬、静寂に包まれる。


「……嘘だろ……」


城壁の上で見ていた兵士たちが、震える声で呟いた。


「あいつら……『魔王軍幹部』を……吹き飛ばしたぞ……」


シルヴィア様も、目を見開いていた。


「……信じられない。個々の力はまだSランクに届かない者もいる。……けれど、『連携チーム』としての総戦力は……完全に、Sランクの『個』を凌駕している……!」


土煙の中から、ヴォルグが、ふらふらと立ち上がった。

その鎧の腹部は大きく凹み、焼け焦げている。

彼の顔から、余裕と侮蔑は消え失せ、底知れぬ「殺意」と、戦士としての「認識」が宿っていた。


「……人間風情が」


ヴォルグが、血を拭った。


「認めよう。貴様らは、羽虫ではない。……我があるじの覇道を阻む、『敵』であると」


ヴォルグの全身から、先ほどとは比較にならない、どす黒い魔力が噴き出し始めた。

空の色が、さらに暗く変わっていく。

それは、Sランクモンスターが「本気」になった時の、絶望の合図。


「……来るぞ」


ガレンさんが、盾を構え直す。


「ああ」


レオが、双剣を構える。


「ここからが、本番だ」


私たち『アルテミス』は、一歩も引かなかった。

魔王軍幹部との初戦。

私たちは、確かに通用した。

そして、この激戦を乗り越えた時こそ、私たちが真に『世界を救う英雄』となる瞬間だと、全員が確信していたからだ。


「……第2ラウンドといくか」


ヴォルグが魔剣を構えた、その時。

ヒュンッ!

空から、一筋の『白銀の閃光』が降り注ぎ、ヴォルグと私たちの間に突き刺さった。


「……そこまでだ、ヴォルグ」


現れたのは、白銀の鎧に身を包み、聖剣を携えた男。

Sランクパーティー『紅蓮の獅子』、聖騎士ライオス様だった。

彼は、私たちを振り返り、ニヤリと笑った。


「……よく耐えたな、ルーキーども。……いや、『アルテミス』」

「あとは、俺たち(先輩)と……『共闘』といこうか」


SランクとAランク(Sランク級)。

二つのパーティーが並び立つ、最強の防衛戦が、始まろうとしていた。


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