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『無能』と追放された魔法使い、実は『力の天秤』を持つSランク級の逸材でした。~スキル禁止されたので『進化魔法』でSランク武具を手に入れます~  作者: さらん
第1章: 『無能』の烙印と『天秤』の覚醒

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第5話:迷宮の罠と二つの戦線


『ミノタウロスの迷宮』は、その名の通り、B+ランクに相応しい複雑な構造をしていた。


「ガレン、左からの通路、トラップ反応あり」

「うむ。エララ、レオ、右通路から回り込むぞ。アリア、警戒を頼む」

「はい!」


私たちのパーティー『アルテミス』は、完璧な連携で迷宮の浅い階層を突破していた。


ガレンさんがその圧倒的な防御力と注意力で先陣を切り、エララさんとレオが両翼で機動的に敵を排除する。私は最後尾から、支援魔法と罠の感知、そしてパーティー全体の状況を把握する。


「アリアの支援、本当に助かるな」


レオが、一体のミノタウロス・ソルジャーを仕留めながら言った。


「カイトのパーティーにいた頃は、お前の感知能力、宝の持ち腐れだった」

「そんなことないよ。あの頃は、カイトさんの派手な攻撃の邪魔にならないように、索敵する余裕もなかったから……」

「フン」


とエララさんが鼻を鳴らす。


「あの男、魔法使いをただの砲台としか思っていなかったのでしょう。戦術の『眼』を潰していたなんて、滑稽だわ」


ガレンさんも頷く。


「リーダーが優秀な『眼』を持たず、仲間の『眼』さえ信用しないパーティーは、遅かれ早かれ崩壊する。……さて、着いたぞ。ここが最深部だ」


開けた広間の中央には、ひときわ巨大な影がうずくまっていた。

体長は5メートルを超えるだろうか。手には巨大な戦斧バトルアックスを持ち、荒い鼻息を立てている。


B+ランクモンスター、『迷宮のラビリンス・ロード』ミノタウロスだ。


「グオオオオオオッ!!」


ミノタウロスが私たちに気づき、雄叫びを上げる。


「戦闘開始! ガレン、正面!」

「応!」


ガレンさんが盾を構えて突進し、ミノタウロスの戦斧を正面から受け止める。凄まじい金属音が響き渡り、火花が散った。


「ぐっ……! やはり重い!」

「エララさん、レオ、脚を狙って!」

「「おう!」」


エララさんとレオが、左右からミノタウロスの膝裏とアキレス腱を狙う。だが、ミノタウロスは巨体に似合わず素早く、戦斧を振り回して二人を寄せ付けない。


「アリア! スキルを!」

「はい! 『力の天秤アストラル・バランス』!」


私はミノタウロスにスキルを発動。対象はガレンさん。

ミノタウロスの動きがわずかに鈍り、ガレンさんの盾が青白い光を帯びる。


「よし! これなら抑え込める!」


ガレンさんがミノタウロスと拮抗した、その時だった。


「――そこまでよ!」


広間の入り口、私たちが通ってきた唯一の通路から、甲高い声が響いた。

振り返ると、そこにはカイト、ルナ、サラ、ミナの『蒼き流星』のメンバーが立っていた。


「カイトさん!? なぜここに……」

「決まってるだろ、アリア」


カイトの目は、嫉妬と憎悪で濁りきっていた。


「お前たちに『復讐』しに来たんだ」

「何を言ってるの!」

「ねえ、アリア」


ルナが、意地の悪い笑みを浮かべて詠唱を始める。


迷宮ダンジョンでの事故は、日常茶飯事なのよね?」

「まずい!」


私は叫んだ。


「ガレンさん、エララさん、レオ! 罠です!」

「『土砂崩ランドスライド』!!」


ルナの魔法が炸裂し、広間の入り口の天井が轟音と共に崩れ落ちた。土砂が通路を完全に塞ぎ、私たちの退路は断たれた。


「グオオオッ!」


同時に、ミノタウロスがガレンさんの盾を弾き飛ばし、体勢を崩す。


「ガレン!」


エララさんが咄嗟にカバーに入る。


「あははは!」


カイトが高笑いする。


「どうだ、アリア! これでお前たちは袋のネズミだ!」

「カイト、なんてことを……!」


レオがカイトを睨みつける。


「うるさいぞ、裏切り者が!」


カイトが剣を抜き、サラとミナが弓と短剣を構える。


「サラ! ミナ! あの二人エララとレオの足を狙え! ミノタウロスに殺させるんだ!」

「え……で、でも、カイトさん……」


サラとミナは、さすがに躊躇しているようだった。自分たちが、殺人・・の片棒を担がされようとしていることに気づいたのだ。


「いいからやれ! これは命令だ!」

「チッ……!」


私たちは、最悪の状況に陥った。

前門の虎――B+ランクのミノタウロス。

後門の狼――私たちに復讐を企む、カイトのパーティー。


「アリア! どうする!」


レオが叫ぶ。

私は、二つの敵意に挟まれながら、必死で思考を巡らせた。


カイトたちは、私たちがミノタウロスに倒されるのを待っている。だが、もし私たちがミノタウロスを倒せば、疲弊したところをカイトたちが襲うだろう。


(どっちに転んでも、絶体絶命……)


「……いいえ」


私は杖を握りしめた。


(カイトさん。あなたは、まだ分かっていない)

「ガレンさん、エララさん、レオ! ミノタウロスに集中してください!」

「なにを言ってる、アリア! 後ろから!」

「大丈夫です! あの人たちは……私が引き受けます!」

「は?」


カイトが、私を嘲笑う。


「お前が? 無能なお前が、一人で俺たちを止められるってのか?」


私は、カイトたちに向き直った。


「私は、カイトさんのパーティーにいた頃、攻撃魔法を禁じられていました」

「……?」

「あなたが『威力が低い』『チマチマしてる』と馬鹿にした、あの魔法しか使わせてもらえなかった」


でも、と私は続けた。


「『アルテミス』の仲間たちは、私に『お前の判断を信じる』と言ってくれた。だから、私は、私のやり方で戦います」

「アリア……」


ガレンさんが、ミノタウロスの攻撃を防ぎながら、私を信じるように頷いた。


「面白い」


カイトが剣を構える。


「やってみろよ、無能。お前が俺に勝てるものならな!」

「ルナ、援護を!」

「任せて! 『火球ファイアボール』!」


ルナが放った火球が、私に向かって飛んでくる。

私は動かない。


「アリア、避けろ!」


レオが叫ぶ。

火球が私に直撃する寸前。

私は、私とルナの間に、あのスキルを発動させた。


「――『力の天秤アストラル・バランス』!」


対象は、ルナ。そして、私。

ルナが放った火球が、私に触れる直前で、まるで水に吸い込まれるように、私の中に「吸収」された。


「「「なっ!?」」」


カイトも、ルナも、そしてミノタウロスと戦っていた仲間たちさえも、目を疑った。


「そ、そんな馬鹿な! 魔法を、無効化した……?」

「いいえ」


私は、自分の右手に集まっていく膨大な魔力を感じながら、冷たく言い放った。


「無効化じゃありません。『吸収』して、『変換』したんです」


私のスキルは、敵の「力」を奪い、味方に「与える」だけではなかった。

それは、敵の「魔力」さえも奪い、私の「魔力」として上乗せする――。


「これが、私の本当の力。あなたが『無能』と呼んだ、魔法使いの力です!」


私は、ルナから奪った魔力を上乗せした、私自身の魔法をカイトたちに向かって解き放った。


「『氷結牢アイス・プリズン』!!」


カイトたちが立っていた床から、凄まじい勢いで氷の柱が突き出し、彼らを一瞬にして閉じ込めた。


「な……! 氷が、溶けない……!?」

「私の魔力よ! このバカ!」

「アリア、すごい!」

「よそ見をしている暇があるのか!」


ガレンさんの声に、私はハッと振り返る。

カイトたちを一時的に無力化したが、本命のミノタウロスが、仲間たちを押し始めていた。


「今行きます!」


二つの戦線を、同時に捌く。

私たちの本当の戦いが、今、始まった。


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