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『無能』と追放された魔法使い、実は『力の天秤』を持つSランク級の逸材でした。~スキル禁止されたので『進化魔法』でSランク武具を手に入れます~  作者: さらん
第2章: 王都の『試練』と『Sランク』への道

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第48話:白亜の塔とSランクの「通行証」


ボルカン工房を出た私たちは、その足で、王都魔術区の中心にそびえ立つ『王国宮廷魔術師団・本部』――あの白亜の巨塔の前へと戻ってきた。


数日前、ここを訪れた時は、門番の魔導騎士まどうきしに「アポイントメントなき者は帰れ」と、門前払いを受けた場所だ。

だが、今は違う。


「……止まれ」


門を守っていた、同じ魔導騎士が、私たちを見下ろした。

彼は、いつものように、私たちを追い払おうとして、その言葉を飲み込んだ。


彼の視線が、ガレンさんの左腕にある『赤と黒のイグニス』と、私の手にある『白と翠のアイギス』に釘付けになり、目に見えて動揺したからだ。


「……その、魔力は……なんだ……?」


騎士は、Sランクの武具から放たれる、隠しきれないプレッシャーに、無意識に後ずさり、槍を構えそうになった。

Sランクの武具は、それ自体が、一つの「生物」のような存在感を放つ。半端な実力者が見れば、それは「脅威」にしか映らない。


「武器を、収められよ」


塔の中から、凛とした声が響いた。

現れたのは、外交官のサー・レジナルドだった。彼は、私たちを見ると、安堵と、驚嘆きょうたんが入り混じったような表情で駆け寄ってきた。


「……間に合いましたか、『アルテミス』の皆様」


レジナルド卿は、ガレンさんと私を見て、深く頷いた。


「見違えました。……装備だけではない。あなた方のまとう『空気』そのものが、数日前とは別人のようだ」

「ええ」


エララさんが、静かに答えた。


「『試練』は、終わりました。……シルヴィア様との『約束』を果たしに参りました」

「承知しております」


レジナルド卿は、門番の騎士に向き直った。


「道を開けよ。彼らは、シルヴィア様が直々に指名された、Sランク任務の『特使』。……そして、王国の『切り札』だ」

「は、はっ!」


騎士たちが、敬礼し、重厚な正門を開け放つ。

私たちは、ついに、王国魔術の中枢へと足を踏み入れた。

塔の内部は、外の静けさが嘘のように、殺気立っていた。


無数の魔術師たちが、羊皮紙の束を抱えて走り回り、空間には、どこかの戦場から送られてくる『通信魔法』のノイズが飛び交っている。


「……酷い状況ですね」


私が呟くと、レジナルド卿は、険しい顔で頷いた。


「北の『大障壁』の亀裂が、予想以上の速さで広がっています。シルヴィア様率いる『紅蓮の獅子』と、現地駐留軍が必死に食い止めていますが……。瘴気しょうきの濃度が上がりすぎて、通常の兵士や魔術師では、近づくことさえ困難になっているのです」


私たちは、塔の最上階、『転移の間』へと案内された。

そこには、床一面に描かれた巨大な魔法陣と、その中心に浮かぶ、空間の歪み――『転移門ゲート』があった。


ゲートの周囲では、十数名の高位魔術師たちが、魔力を注ぎ込み、維持メンテナンスを行っている。


「……ゲートの状態が、不安定だ!」

「北側の『磁場』が乱れている! これでは、転移座標がズレるぞ!」


魔術師たちが、悲鳴のような声を上げている。

北からの『魔王の瘴気』が強すぎて、空間転移すら妨害しているのだ。


「……レジナルド卿! 無理です!」


ゲート管理官が叫んだ。


「これ以上、空間を安定させられません! 今、転移を行えば、亜空間に放り出されて……」

「どきなさい」


私は、静かに、しかし、よく通る声で言った。


「え……?」


管理官が振り返るより早く、私は、魔術師たちの列を割り、ゲートの目の前に立った。

手には、新しい杖『アルテミス・ロッド・アイギス』。


(……分かる)

杖を握った瞬間、このゲートを乱している『ノイズ(瘴気の影響)』の流れが、手に取るように分かった。

以前の私なら、自分の魔力を制御するだけで精一杯だっただろう。

でも、今の私には、『世界樹』がついている。


「『接続コネクト』」


私が、杖の石突きで、床の魔法陣を、コン、と叩いた。

瞬間、杖の先端の『魔核』から、翠色みどりいろの波紋が広がった。


「な……!?」


波紋は、乱れていたゲートの魔力干渉を、優しく、しかし強制的に『整流』し、荒れ狂っていた空間の歪みを、鏡の水面のように静まらせた。


「……空間ノイズ、消失……。座標、完全固定……」


管理官が、計器を見つめ、呆然と呟いた。


「たった一瞬で……? Sランク魔術師数人がかりでも、抑えきれなかった乱れを……?」

「行けますか?」


私が振り返ると、ガレンさんたちが、ニヤリと笑っていた。


「ああ。さすがは、俺たちの『心臓』だ」

「準備万端よ。いつでも飛び込めるわ」


レジナルド卿が、震える声で告げた。


「……座標、『北方大要塞ノース・フォート』。……ご武運を」


私たちは、安定したゲートの光の中へと、足を踏み入れた。

王都の景色が、光の中に溶けて消える。

転移の浮遊感は、一瞬だった。

次に私たちが感じたのは、肌を刺すような『極寒』の風と、鼻をつく『オゾン』と『腐臭』の混じった匂いだった。


「……ッ!」


私たちは、石造りの広場に転送されていた。

そこは、王都のような青空ではなく、毒々しい紫色と黒が混じり合った、禍々しい雲に覆われた空の下だった。


「……ここが、『最前線』……」


レオが、剣の柄に手をかけ、周囲を見回す。

『北方大要塞』。

かつては、堅牢な石壁に囲まれた、人類の守りのかなめだった場所。

だが今は、その石壁の半分が崩れ、要塞全体が、薄暗い『結界』によって、かろうじて守られている状態だった。


そして、要塞のはるか向こう。

地平線の彼方から、天に向かってそびえ立つ、光の壁――『大障壁』が見えた。

だが、その光の壁の中央には、巨大な、黒い『亀裂』が走り、そこから、私たちが『エルフの森』で見たものとは比較にならない、濃密な『瘴気』が、黒い滝のように溢れ出していた。


「……来たか」


要塞の望楼ぼうろうから、一人の女性が、降りてきた。

紅蓮のローブをまとい、その全身から、周囲の寒気を吹き飛ばすほどの熱気オーラを放つ、Sランク魔術師。


『紅蓮の獅子』リーダー、シルヴィア様だ。

彼女は、以前会った時よりも、少しやつれているように見えた。だが、その瞳の輝きは、少しも衰えていない。

彼女は、私たちの前に歩み寄ると、まず、ガレンさんの『盾』を見て、次に、私の『杖』を見て……。

満足そうに、微笑んだ。


「……ボルカンじいも、良い仕事をしたようね」


シルヴィア様は、アリアを見た。


「ようこそ、地獄ここへ。『アルテミス』」

「待ちくたびれたわ。……さあ、世界を救う『仕事』を、始めましょうか」


私たちの目の前には、崩壊寸前の『世界』が広がっていた。

Aランクパーティー『アルテミス』の、最初のSランク任務。


『大障壁防衛戦』が、幕を開ける。


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