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『無能』と追放された魔法使い、実は『力の天秤』を持つSランク級の逸材でした。~スキル禁止されたので『進化魔法』でSランク武具を手に入れます~  作者: さらん
第2章: 王都の『試練』と『Sランク』への道

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第40話:世界樹の「声」と『調整弁』の代償


「……『交渉』の、テーブルに着こう。……我らが『友』よ」


聖域『エルフの森』。その『汚染領域』の中心で、エルフのリーダー、フィンが、私に最大級の敬意を表して、ひざまずいていた。


数分前まで、私たちを「敵意」と「欺瞞」に満ちた侵入者として、殺意の矢を向けていた彼らが、今は、私を「森の癒しフォレスト・ヒーラー」と呼び、その冷たい瞳には、畏敬いけいの色が浮かんでいる。


「アリア!」

「アリア!」


ガレンさんとレオが、魔力を使い果たして倒れ込んだ私に、慌てて駆け寄ろうとする。

だが、フィンは、それを手で制した。


「……触れるな、マンの子らよ」


フィンは、厳かに言った。


「彼女は今、われらの『呪い』を、その身に受け止め、そして『祝福』へと『変換』された。……人の身には、あまりにも、過ぎた御業みわざだ」


フィンは、懐から、緑色に輝く小さな『水晶の小瓶』を取り出すと、私の口元に、そっと、その中身を垂らした。


(……つめたい……)


『エルフの霊薬』。

それは、最高級のマナポーションなどとは比べ物にならない、清らかで、膨大な「生命力」の奔流だった。

魔力切れで焼け付くようだった私の回路が、瞬く間に、その聖なる力で満たされていく。


「……!」


私は、数秒で、魔力が全快するのを感じ、驚いて飛び起きた。


「あ、ありがとうございます……フィン様……」

「礼を言うのは、我らの方だ」


フィンは、立ち上がると、私たちが来た方角(森の入り口)ではなく、さらに奥深く、森の『中心』へと、私たちを促した。


「外交官レジナルド卿。そして『アルテミス』の諸君。……交渉のテーブルは、整った」


フィンが言う『交渉の席』とは、会議室のことではなかった。


「我らが母、『世界樹ユグドラシル』の、御前ごぜんである」


私たちは、エルフの守り人たちに「護衛」されながら、森の最深部へと、歩を進めた。

先ほどの『瘴気』の領域が嘘のように、そこは、黄金色の光に満ちた、神々の庭園のような場所だった。


「……すげえ」


レオが、空を飛ぶ、光るフェアリーの群れを見て、息を呑んでいる。


「これが、聖域……。王都の王城より、よっぽど、格が上だ」

「レオ。武器から手を」


エララさんが、レオの、無意識に双剣の柄に伸びた手を、厳しく制した。


「ここは、もう『戦場』じゃないわ」


やがて、私たちは、森が拓けた、巨大な円形の「湖」のほとりに、たどり着いた。

その湖の中心、水面から、天を突き破るかのように、一本の、巨大な『樹』が生えていた。


それは、私たちが『大森林』で見た、どんな巨木よりも、大きく、古く、そして……神々しかった。

樹の幹は、白く輝き、その枝葉からは、常に、黄金色の魔力が、霧のように、こぼれ落ちている。


あれが、『世界樹ユグドラシル』……。


「母なる樹よ」


フィンが、湖のほとりで、深く、ひざまずいた。


「北の『瘴気』は、この者、『アリア』の『変換』の力により、『癒され』ました」

「……」

「この者たちは、『交渉』を、求めております。ボルカン師の『試練』のため、あなたの『魔核こころ』の一部を、求めております」


森が、静まり返る。

私たちは、息を詰めて、その『樹』の、答えを待った。


(……小さき、人の子らよ)


声が、聞こえた。

それは、耳から聞こえる「音」ではなく、頭の中に、直接、響いてくる、優しく、そして、厳かな「声」だった。

レオも、ガレンさんも、驚いて、周囲を見回している。


『世界樹』が、私たちに、直接、語りかけていた。


(アリア。……『変換』の力を持つ、娘よ)

(あなたが、我らの森を、癒してくれたこと。……感謝します)

(北の『瘴気』は、我らの『浄化』の力では、祓えなかった。……それは、我らの『生命』のことわりとは、対極の『呪い』だったから)


「……!」

「しかし」


レジナルド卿が、外交官として、一歩前に進み出た。


「大いなる『世界樹』よ。我らは、その『癒し』の代償として、あなたの『魔核』を、求めております。……我らの無礼を、承知の上で、どうか、お聞き届けを」


(……知っています)


世界樹の声は、穏やかだった。


(あなたがたが、その『魔核』を、なぜ、必要としているのか)

(鍛冶師ボルカンは、『調整弁レギュレーター』と、言いましたね)

(……アリア。あなたの『力』は、あまりにも『純粋』すぎる)


「……!」


(あなたは、『瘴気』を、『生命力』に『変換』した)

(あなたは、『力』の『均衡バランス』を、破壊し、新たなる『秩序ちから』を、生み出す)

(その『力』は、Sランクの『呪物(黒曜の心臓)』ですら、内側から、破壊する)


世界樹の言葉は、ボルカン師の指摘と、全く同じだった。


(あなたの仲間ガレンは、あなたの『力』を受け止める『器』が、必要)

(そして、あなた(アリア)は、あなたの『力』を、『器』に注ぎ込むための、『制御コントロール』が、必要)

(良いでしょう)


世界樹は、そう、宣言した。


(ボルカン師の『試練』。そして、シルヴィア(Sランク)の『期待』。……何より、森を救った、あなたの『功績』に免じ、私の『魔核』の一部を、授けます)


その瞬間。

世界樹の、天を覆うほどの枝葉えだはから、一本の、細い枝が、ゆっくりと、私たちの前まで、降りてきた。


その枝の先には、湖の水面のように、淡い翠色みどりいろに輝く、『魔石』が、結実していた。


あれが……『世界樹の魔核』……!


「……ありがとうございます……!」


私が、震える手で、それを受け取ろうとした、その時。


(……ただし、アリア)


世界樹の「声」が、初めて、厳しい『警告』の響きを、帯びた。


(その『魔核』は、『調整弁レギュレーター』です。あなたの『力』を、抑え込むものでは、ありません)

(それは、あなたの『力』を、より『効率的』に、『指向性』を持って、解き放つための、『増幅器アンプリファイア』です)


「え……?」

(『力』の『制御』とは、『弱める』ことでは、ありません)

(『力』を、『正しい方向』に、一滴も、無駄にすることなく、『集中』させることです)

(あなたは、この『魔核』を手に入れることで、さらに『強く』なる)

(……アリア。『変換』の力を持つ、娘よ)


世界樹の、最後の言葉が、私の心に、深く、突き刺さった。


(『魔王の瘴気』は、『大障壁』の、ほんの『兆候』にすぎません)

(『紅蓮の獅子』のシルヴィアが、今、戦っているのは、『本物の危機』です)

(あなたの、その『Sランク級の支援』が……いいえ、『世界のことわりを『変換』する力』が、必ず、必要になる)

(その時まで、仲間と共に、『それ』を、磨きなさい)


世界樹の『声』が、消えた。

私の手の中には、膨大な、しかし、驚くほど『静か』で『安定』した魔力を秘めた、『世界樹の魔核』が、握られていた。


ボルカン師の『試練』、二つ目。

そして、シルヴィアさんの『Sランク任務』。

私たちは、その両方を、『戦闘』ではなく、『交渉』と、私の『力』の『証明』によって、クリアした。


「……帰ろう」


エララさんが、私の肩を支えた。


「王都に。……ボルカン師の、工房に」

「……ああ」


ガレンさんが、深く頷く。


「残るは、一つ」

「……『地竜アースドラゴン逆鱗げきりん』」


私たちは、エルフの森の、『友』として、手厚く見送られ、聖域を後にした。

王都での、最後の『試練』へと、挑むために。


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